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「一つ? 一つってなに?」
私はどういうことかと蝶にきく。私は始祖だよ? そこらの神なんかよりも索敵能力は高いはずだ。自分の宇宙、新生宇宙なら全てのことがわかるし、自分の宇宙じゃなくても、その索敵範囲は銀河一つまるまる覆い尽くすくらいはできる。
そんな私でも足りないの? 私で足りないのなら、ほぼほかは無理じゃん?
『うーん、そうですね。これが一つです』
なにやら悩んだ声をだした蝶はふらふらとまっすぐに進んでちょっと距離を開ける? 私はコテンと首を傾げる。だってただちょっと先にいっただけだ。それを一つと言われても。
顔に出てたのかな? すぐに『これが2つ』といって蝶は消えた。
「それが2つ?」
消えた蝶は上の方にいた。ちょっとだけ更に進んだ時、きっとこの無のなにかのせいで距離も位置も変わったんだろう。でもそれが2つ? 更に移動した蝶はまた消えた。そして私の肩にいつの間にか止まってた。
『それでこれが3つです』
何を言いたいのかはわかった。つまりは私の索敵方法はこの無には全く持って適してないと言うことだろう。ただ私を中心に力を広げたとしても、複雑怪奇なこの無では私の力は今の蝶の動きのように色んな所にいってるのだ。
だからさっき行ったはずの現宇宙も探し当てる事ができてないってことなんだろう。
「でも貴方はこんな場所でも迷わず行けるんだよね?」
『私は慣れてるから』
慣れで済まされても困る。だってこの蝶の案内なくして、この無を進むことは不可能ってことになるじゃん。一応現宇宙のそばにおいてきた残滓はわかるから……それを沢山おけばそのうちこの無の構造が少しは見えてくるのでは?
「色んな所に私の力をおいておくのはどうなのかな? 自分の力なら繋がりが強いから感じるよ。それが沢山あったら、目印になると思う」
『うーんそれは、いくら貴方でも無駄な力の使い方だと思うな。だってそれは意味がない……なんて言わないけど、いくらおいてもきり無いから』
「うぐ……」
たしかにそう言われるとそうかも……と思えるんだよね。だってここは無だよ? しかも残滓なんて永遠に持つものでもないし……定期的に補充するの? 片手で数えるくらいならいいよ。でもさ……絶対にそれじゃあ足りないよここ。だって数歩進んだだけでおかしな方向、次元、時空に進むのである。
それににちゃんと対応しようとしたら……確かにいくら残滓をおいたとしても意味はないかも……




