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『ラーゼ様、待ってください!』
そんな声が届く。それはドラグだ。そういえばあの倒れてる中にドラグのやつはいなかった。回避した……とは思えないんだけど……だってヴァラヴレレイドやルドルヴルヴは明確にドラグよりも格上の龍だ。
そいつらがあれだけボロボロになってたのに明確に劣ってる筈のドラグがなんともない……なんてことはないだろう。けど案外元気そうな声である。ちょっと安心。実は霧散してしまったんじゃない? とかちょっと心配だったんだ。そもそもドラグの本当の姿は曖昧だし? 龍とかいってるが、その姿はまったくもって龍じゃないし? いや、わかってるよ。わたしたちがイメージしてる龍はそれこそ創作物のものだってね。
黒光りする鱗とか大きな翼、凶悪な爪、精悍な顔つき。巨大な体……それらはきっと私の場合は前世の影響だ。だから私は常々ドラグって本当に龍・竜? と思う。けどこの宇宙の定義的には龍とは姿形に決まったものがあるわけじゃない。宇宙で生きうる生命体……そしてその生命体の中でも特大に力をもった存在が龍なんだ。それよりも劣ってるのが竜となる。
だから形は関係ない。まあけど……ドラグほどに曖昧な龍もいないけど……
『ドラグ? どうしたの? てかどこにいるの? いや、それよりも待てないよ。だって猶予はない』
そうだ。こんな話してる場合でもない。だってこのままだとうさぎっ子含め、ヴァラヴレレイドたちも皆死ぬ。いや、始祖の龍へと還る……と行ったほうが正しいだろう。そしてそれには一刻の猶予もない。ここから彼等を救うには私の宇宙……本当の私オリジナル宇宙である新生宇宙へと持ってくる他ない。
まぁ新生宇宙に対応してない皆には辛いだろうが、仕方ない。そこは我慢してもらうしかないよね。だってこれが唯一の方法なんだからさ。
『猶予なら作れます。この宇宙は貴方の宇宙。そして周囲にはもう何もない』
『え? まさかそれって……』
『始祖の龍がくらい尽くそうとするのなら、それ以上に広げればいいのです!』
『はああああ!?』
どうしたドラグ? 狂っちゃった? それをしてなんの意味が有るというのか? 確かに今や辺境の宇宙は私の宇宙だけだ。誰に気兼ねなく広げる事ができるだろう。それにそれだけの力だって有る。一応まだ私には向こうのエネルギーがあるし? でもすでに有限だよ? だって聖杯はもうないし? ドラグだってそうだろう。聖杯はゼンマイと共に消えた。
確かに少しの間はそれで稼げる可能性はあるが……それでも数十秒くらいじゃない? そんな事しても……ね。意味があるとは思えないんだけど……私がそんな風に思ってるのは伝わるんだろう、頭に直接なんか送られきた。
言葉では時間が足りないらしいけどこれは……マジ?




