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まがまがしい力……開かれた翼に赤と金の血管ようなものが浮かんだ。そしてそれは……翼にだけにとどまらない。それは宇宙に広がって。今の巨大な始祖の龍のさらに倍のような範囲に広がった。
『ぬう!?』
『これは……』
ルドルヴルヴもヴァラヴァレレイドもうろたえてる。だってその範囲……これは回避不可能だ。どうやらそろそろ私たちのことが始祖の龍はうざくなってしまったようだ。一網打尽しようとしてる。それがわかる。宇宙にまで広まった始祖の龍の血管のような模様。その赤と金の血管のような模様がひろがった宇宙もそれはきっと始祖の龍の一部になってる。アクトパラスとゼンマイ……二人の宇宙を超えてさらにその周囲の宇宙までも自分のものにして、始祖の龍は突っ込んできた。回転しつつ……宇宙が壊れようと関係ない。すべてを巻き込んで始祖の龍は移動する。
移動するといったのは別にこっちに向かってくる必要がないからだ。だって始祖の龍の攻撃は宇宙規模だ。そして私たちは宇宙にいるのだ。宇宙内にいるのに宇宙規模……というか宇宙を飲み込む攻撃をしてる。うん……逃げ場がない。だからこそ、どこに向かおうと関係ない。極論を言うと私の反対を向いて全力で走って行っても、それでも問題なく敵を蹂躙できるのが今の始祖の龍の攻撃……ということ。アホみたいでしょ?
私はなんとか幻覚とか見せてアーミュラを誘拐するための隙を……とか思ってたけど、そんなのどうやら始祖の龍は笑い飛ばしたみたいだ。
「そんなの関係ねえ!!」
そんな声が聞こえるようだった。一つ二つ……いや三つ? 見えてる範囲以上の宇宙を身にまとい、攻撃に転用した始祖の龍。そのすさまじいエネルギーがさらに周囲の宇宙も巻き込む。そして宇宙がなくなって、無に残った辺境の最後の宇宙……それは私の現宇宙の宇宙だけだった。そして私たちはみんなでそこに避難してた。
「あぶなかった……」
「ちょちょちょ!? 何あれ!? なんなのあれ!?」
「ふむ……そのサイズではいつものお茶では満足できないですね」
いきなり現れた私たち……私プラス四体にびっくりしてるのはウサギっ子である。ドラグは私のためにお茶を用意してくれようとしたけど、私が龍になってることで、いつものティーカップは使えないだろうとおもったみたいだ。ありがたい心遣いだけど、今はそんなことをやってる場合ではない。とりあえず今言うことは……
「あれが始祖の龍よ」
それである。それですべてわかるでしょ。




