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Σ71

 真っ赤な月がその滴を垂らす。その瞬間皆が苦しそうに胸を抑えた。勿論私もだ。まるで直接心臓を鷲掴みにでもされたかの様な感覚。そして熱い何かを感じる。するといきなりマントが異様に蠢き出した。

 

「なっ!? なに!?」


 こんな事なかったよ。いままでちゃんと言うこと聞いてくれてたのに、いきなり何かがマントにいるかのように……

 

「ひっ!?」


 思わずそんな声がでた。だってそれも仕方ないよ。なぜなら、マントの蠢いてる部分が私には顔に見えたからだ。そしてその顔があの月に向かって少しでも近づこうとしてるかのよう動いてる。その数は五つくらい? よく見たら、見たことある顔の気がする。それは今まで相手してきた鉄血種の様な……

 

「まさか死なないって――」


 私はそう呟いて縄で縛ってある鉄血種の男を見る。けど、奴はその視線に気づいてない。赤い月を見つめて何やら身体から赤い蒸気を漂わせてるような?

 

(不味い!)


 私は直感でそう思ったよ。アイツは何かしてる。

 

「皆さん! そいつから離れて!!」


 私は鉄血種の周りに居る人達にそう叫ぶ。勿論私だって行こうとしたよ。けどマントが制御できない今、これがとても邪魔だった。これとアトラスのお陰で人を超えた動きが出来るようになった反面。噛み合わなくなると、まともに動くことすらままならないということがわかった。そしてそんな私の声虚しく、鉄血種を縛ってた縄は黒い炎によって焼き尽くされて一瞬にして周囲の兵士が大量の血と共に倒れ伏す。

 

「ああ! 惜しいな。俺にそれがまだあれば黒炎を使えたんだが。まあ貴様ら人種には過ぎた力だがな」


 どこかの臓器か……肝臓? そんな物を一つ一つ口に入れながら鉄血種はそんな事を言う。どうやら奴の好みはアレらしい。アレだけ抜き取られたのなら、まだ死んでない人も……でも大量に吹き出した血を見るにかなり強引に取られただろうし……流れ出る血が多すぎるか。でもまだ急げば……私はとりあえずマントを抑えるためにピアスから多くのマナをマントに流す。

 

 すると次第にマントはおとなしくなっていく。その間にグルダフさんたちが逃げ出した鉄血種の相手をしてる。私は屋根から降りて、回復魔法を皆さんに施す。

 

「え? ちょっと待って!?」

「う――ぁあああああ!? あああああああああああ!!」


 回復魔法を私は掛けた筈だった。けど出たのは回復魔法ではなかった。今しがた見た、黒い炎……それが魔法を掛けたはずの兵士さんを焼き尽くした。

 

「くくく、ふははははははははははは!!」


 グルダフさん達の攻撃をしのいでる鉄血種が盛大に笑う。私はそいつに向かって声を上げるよ。

 

「一体これはどういうこと!?」

「俺たちはそうやすやすと人種になど使われないと言うことだ。そして今こそ俺達は真の力を発揮出来る。貴様もそのままではくわれるぞ」


 食われる? このマントにって事? そう言われると途端に頼もしかったマントが得体の知れない物に見えてきた。いや、確かに元から得体の知れないものだったんだけどさ。便利だったから深く考えずに使ってた。けど今の黒い炎にさっきの顔……こいつの鉄血種は絶対に死なない発言……まさか、身体がなくなっても鉄血種はこの中に……しかもこの空間では鉄血種が真の力を発揮するらしい。

 

 今までは押さえ込めてたこのマント……それがこの空間では出来なくなりつつあるとしたら? 私に今の黒い炎が突然襲い掛かってきたら? 兵士さんは跡形もなく消え去ってる。私もこうなるかも……私はマントをガッと掴む。けど……けど……これが無くなると、私自身の生存率が大幅に低下する。けどこれ自体に殺されるかもしれない……究極の選択だね。

 

 私は……

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