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「仕方ないわね」
龍道に一人取り残されたヴァラヴァレレイド。私はその背を押すことにした。本当ならこのままバックレてもいい。だって……ね。信じて……といわれても私はあの白い古龍の事を何も知らないし? 最悪私が見捨てることだって考えてるんじゃない? けどそうなると、確実に古龍を四体も見殺しにすることになる。
この宇宙をもう既に諦めてる……のなら簡単にそれができる。馬鹿な奴ら……とでも鼻で笑ってヴァラヴァレレイドを新生宇宙へと新たに誕生させる準備をするだろう。まあけどここまで頑張ってるのも、ヴァラヴァレレイドがこの現宇宙に未練が有るからで、そこそこの愛着も私にだってあるからだ。
自分の……自分だけの宇宙が得られたからって、だからって故郷を蔑ろにできるか? ということだ。結婚して新たな家族を持った人だって、元の家族。実家は大切にするだろう。そういうことだ。私だって人並みの感情はあるからね。
神になったからって、私の精神性? はそんなに変わってないし? まあけどどうしようもなくなったら、しょうがないとは思う。そこしかない奴ら……よりは私はきっとドライだろう。
白い古龍とかにはそこら変、よく思われてないのかもね。
「気をつけなさいヴァラヴァレレイド。あの白いのにどんな思惑があるかわかったものじゃないわよ」
もしかしたらヴァラヴァレレイドを犠牲にするつもりの可能性だってある。ゼーファスのためならしそうだし?
『わかってます我が女神。ですが、あの方はそんな方ではないですよ』
どうやらあの白い古龍はかなり信頼があるらしい。真龍改32槍の一員であるヴァラヴァレレイドは古龍との関わりも他の龍よりも強いだろう。それならきっと古龍たちの性格とかだって普通の龍よりもわかってると思う。
そんなヴァラヴァレレイドにここまで言わせる……となると本当にちゃんとまともな龍なのかもしれない。でも……そんなやつだって追い詰められたらどんな判断をするかなんてわからない。だってさっきのあの白い古龍の様子から、なにがなんでもゼーファスを取り返す……という気概を感じた。それは決して悪いことじゃないだろう。
だってやる前から――
「もしかしたら無理かもだけど……一応やるだけやってみよう」
――とかいわれてついていけないからね。でもさっきの白い古龍には焦りも見えた。余裕ってやつかな? それがない。それは懸念だよね。あとは執念……ちょっと怖いと思ったし……
でもヴァラヴァレレイドはいく。真龍改32槍として、古龍の言葉にはできる限り答えたいんだろう。律儀なやつだよ。ヴァラヴァレレイドのそういう所、嫌いじゃないけどね。




