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『これは!?』
ヴァラヴァレレイドが距離を取った。急いで龍道に逃げ込むくらいには焦ってた。さっきまでゼーファスと共に始祖の龍に私の力を乗せたブレスを放ってたけど、それも今のこの濃い始祖の龍の力に飲まれてしまった。
薄々は気づいてたけど、どうやら間接的に力を預けて攻撃する程度では始祖の龍には通じてなかったみたいだ。実際、そこそこ痛痒を与えてる……とか思ってたけど、そんな事はなかった。
これが……この深さが始祖の龍の力。いや、これも絶対に深遠じゃない。こんなのは表層。とてつもなく、深い力が辺境の宇宙に広がってる。どうやら私達は全然始祖の龍の力をわかってなかったみたいだ。
「ゼーファスは諦めるしかないか……」
本当は救ってあげたかった。私ならそれができる……と思ってた。思い上がりだったのかもしれない。私だって始祖だ。だから私しか始祖の龍には対抗できないってさ。でもちょっと考えを改めた方がいいかもしれない。
この根源たる恐怖を沸き立たせるような力。それはとてもとても深くて、ある意味で好奇心で覗いてみたい……とも思えないほどに深い。一度覗けば、その深淵の深みに引きずりこまれるような……そんな気がする。
深すぎる始祖の龍の力に影響を受けたのはなくなったゼーファスだけじゃない。対象は勿論ゼーファスなんだろうけど、そのとてつもない力は当然周囲にも影響を与えるわけで……その深き力に、実はその場にいたゼーファスといっしょにきてた神たちは飲み込まれてる。
それの恐ろしいところは、これってもしかしたら始祖の龍は別に想定なんてしてなくて、全く持ってそんなことを意識すらしてないかもしれない……ということだ。ただその力を使ったら、いつの間にかそこらにいた雑魚が巻き込まれた……みたいなさ?
それこそ言うならば風を起こしてみたら、その空気の流れのせいで、周囲もその風邪に巻き込まれた……みたいなそんな感じの可能性がある。
『ヴァラヴァレレイド』
龍道に逃げ込んだヴァラヴァレレイド。でもそこには真っ白い美しい龍がいた。そしてその龍はこういうよ。
『逃げることは許しません。そしてヴァラヴァレレイドを操ってる者よ。私にも力を貸しなさい。聞いてるのでしょう?』
真っ白い美しい龍はそんなふうに私まで脅してきた。




