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「なるほど、そう来たか」
私はウサギっ子の言葉にそう返し……いや、独り言のようにつぶやく。するとウサギっ子のその大きな耳にも今の声は届かなかったのか「え? 何?」――と言ってきた。その耳は飾りかな? かわいい。
「ううん、そう来たか――って言ったのよ。ちゃんと防壁張っておいたでしょ?」
「そうね。けど始祖の力の余波だからね」
「私も始祖なんだけど?」
「そこらほら? 年季の違い? まあしょうがないから落ち込まなくていいんじゃない?」
慰め……いや、こ馬鹿にしてるウサギっ子。私が屈辱を感じるのか楽しいのだろう。既にもうウサギっ子は私の眷属から脱却してるからね。まあ私の手下の神……という立場ではあるが、眷属よりも全然自由だ。けど私的には眷属の時だって別にウサギっ子を縛ってた意識はない。
ただちょっといたずらをしてたり、私のプレイにつき合わせてたりしてただけだ。全然そんなのは軽い縛りだと思う。
「ふん、始祖の龍の力は厄介ね。しょうがない。予定が早まったけど、私の現宇宙の星を引っ張るわよ」
「現宇宙が残れば、そんな面倒な事しなくてもいいって言ってなかった?」
「今の情勢で始祖の龍に勝てると思ってるの?」
私は軽い感じてそういった。そして続いて「ないでしょ」――という。そう……「ない」……今のままではこの現宇宙は終りだ。始祖の龍に勝てる要素は今の所0。いや0じゃないかもしれないが、0に限りなく近い。
ウサギっ子が言った通り、まだ可能性を感じれるのなら、現宇宙に残しておいてもよかった。でも実際は今この瞬間にも現宇宙は終りそうだ。流石にかなりの年月をかけて育った宇宙だから始祖の龍が食いつくすにも時間はかかりそうだけど……でも今相手にしてる奴らがやられたら、もう立ち向かうやつらいなくなりそうじゃん? そうなったらもう現宇宙は終わったも同然かもしれない。
ゼーファスの陣営……それに古龍やら神龍改の龍……そんな奴らを巻き込んだとしても……今の所0から1にもなりえないんだよね。だから今のうちに私の宇宙で育ったものを新生宇宙へと引っ越す。それしかない。
本当はもっとゆっくりとやるつもりだったけど、今や前例を私は手に入れた。それが……私は胸元の地球を手で触れる。そうこれが前例。地球を問題なくこっちの宇宙になじませることが出来た。
ならば元から私の星であるものも同じように出来る……いやもっとうまくできるのは道理だろう。




