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&368

 始祖の龍はどうやら辺境で暴れてるらしい。アーミュラの宇宙を取り込んで、そこから離脱するために我は我が女神の力を借りて脱出を図った。それはうまく言ったわけだが、それから始祖の龍は近くの宇宙に襲いかかったようだ。辺境の神なんて正直、神の中でも下のほうだ。


 そんな奴らが始祖の龍に勝てる道理はない。だが、今辺境は戦いで染まってた。それの原因も我が女神だが……まさかこれが狙いだった? 戦う準備が出来てた……ということだ。

 竜たちは一斉に逃げようとした。だが逃げる事は出来なかったみたいだ。それは始祖の龍が戦いを望んでたからだ。奴はいった。


「戦え」


 ――と。それは言葉ではなかっただろう。なにせ始祖の龍は言葉を介するだけの頭はない。でも本能がそれを伝えたんだろう。絶対に勝てないとわかってても、竜たちは逃げる事は出来なかった。辺境を埋め尽くすほどの様々な竜。

 そしてそこに交じる辺境の神たち。それに対する始祖の龍。数は圧倒的に辺境軍が多いだろう。でも……そんなのはものの数でしかなかった。その圧倒的な力で辺境の奴らを消滅させる……とかはどうやら始祖の龍はしないらしい。

 それが出来ないわけはない。たったの一撃……それで辺境を無に帰することだって始祖の龍にはできるだろう。でも、それを奴はやってない。泥臭く体をぶつけながら始祖の龍は戦ってる。噛みつき、ぶつかり、それによって竜達を追い込んでいってるんだ。


『遊んでる……』


 思わずそんな言葉がこぼれた。我らはゼーファスによって用意された装置によって始祖の龍の動向を探ってる。そして大きく映し出された戦闘の光景。圧倒的な数の相手に対して、嬉々として戦ってるように我にはみえた。

 そしてそれはゼーファスも感じたようだ。


「始祖とは……そういうものなのでしょう」


 その力のわずかでも使ってない始祖の龍。だがお陰で、こちらは準備ができる。見殺しにするんじゃない。ただ僅かな時間、始祖の龍のあそび相手になっててもらうだけだ。


「ゆくぞ皆。力を合わせるのだ!!」


 覚悟……というか腹を決めたらしいゼーファスは手を掲げた。だがその腕はちょっと震えてる。本当はおそれを克服したわけじゃないんだろう。だが、やってくれるのなら我は何も言わない。

 なにせ我だけでも、始祖の龍には勝てる道理なんてないからだ。全てを使わなければ……この宇宙の全てを……


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