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216/2464

Σ51

息を殺してその時を待つ。街はもぬけの殻の様に静まりかえってまるでゴーストタウンと化してる。領主は最後までこの街自体を戦闘エリアにするのは批判してたけど、最終的には折れた。正面からやりあうなんて無謀過ぎる事だと説得してたし、被害は上の方から工面させるって事で納得した。


 確かに私だってできれば街中を戦闘エリアにしたくはなかった。けどこの街の周りは結構見晴らしいいんだよね。隠れられる所もそうないし、高い木々もない。鉄血種は飛んでるらしい。人とはそう変わらない見た目らしいけど、奴らは飛べるのだ。上と下、どちらが戦闘するうえで有利かなんて明白だ。そりゃあ、こっちも基本遠距離主体で戦うけど……地面を這う虫のごとくわらわらいたんじゃいい的だ。

 

 誰だって的となって死にたい奴なんていない。勝ちたいんだ。それも生き残って……しかも今回は首都の方の本隊が出張って来てくれるらしい。つまりはそれまで辛抱すれば何とかなるかもしれないということだ。

 

 私たちは地の利を生かす。その為の街中までおびき寄せての戦闘だ。街なら高い建物も結構あるし、何よりも周囲よりも圧倒的に障害物がおおい。それはそれだけ身を隠せる場所が多いということだ。端っこの方の領なのに、実はここは大分ファイラルとは違ってた。だってファイラル領ではさっきの村規模が領の中心だったからね。

 本当にあそこは無毛地帯だったんだなってここを知って思ったよ。まあだけどそれも昔の事だけど。とりあえず私は何度も地図を確認してる。そしてあちこちにバツ印がつけてある。まあ地図といっても物理的な物じゃないけどね。腕のデバイスに表示されてる奴だ。デバイスから青い光が出て、数センチ上に立体的な地図が浮かんでる。そのバツは無数の罠を示してる。

 

 鉄血種の数は三十前後……昔からそのくらいの数であまり変動はしないらしい。それに対してこちらは三百はいる。大よそ十倍。向こうの世界では数は力だった。それは争う物が人同士だったからだ。それなら単純に数が多い方が勝つのは自然なこと。まあ現代戦なら、大量破壊兵器とかをためらいもなく使ったりすれば、ひっくり返せたりもするのかもだけど……ここにはそんなものはない。

 

 いや、正確にはまだない……みたいな? こっちの世界の化学は魔法と融合してる。マナという世界に満ちる力がある。きっとそのうち、とてつもない物ができちゃったりするんじゃないだろうか? まあそれまで人種が生き残る保証はどこにもないけどね。この世界では人種にとっての大量破壊兵器その物が命をもって生きてるようなものだ。

 

 そしてそれを相手に戦ってる。かなりの無茶やってるよ。十倍? 百倍? そんな数の差はほとんど意味なんてなさない。他の種にとっては面倒くさいなーで片付けられる問題だ。だから安心なんてない。たかが十倍だ。今の私たちの数は鉄血種のたかが十倍。そう思わないといけない。

 

『来ました。大きな力の反応を感じます』


 通信越しの声がそんな事実をつたえてくる。戦場の状況や、兵士たちの状態、そんな諸々はゼウスのオペレーター陣が統括的にまとめる様になった。ここの部隊と私たちの部隊とで分けてもメリットなんてなくてデメリットしかないからだ。それにゼウスは常にアップグレードを施されてる船だ。その索敵能力もすごい。だから状況を把握するのはゼウスが一番。

 

 そしてそこから情報を一括して送った方が混乱もなくていい事づくめなのた。まあそこまで多くないオペレーター人で対応するのは正直大変だろうけど、きっと大丈夫。みんな優秀だもん。

 

 私は……いや、私だけじゃないけど、皆が空に目を凝らしてる。

 

『大きな力の塊がそちらに到達します。場所は正門上空です』


 正門ね……やっぱりだけど、人種なんて微塵も怖がっちゃいないってのかすでにわかる。奴らにとって人種はただの餌。だから自分たちが隠れたり遠慮したりする思考は微塵もない。私はようやくその姿を確認する。私が来てた門とは違う方向だけど、単眼鏡でその姿をとらえた。黒い布をまとった金と銀の髪色した奴らだ。白いってメモには書かれてたけど、銀がそう見えたってことだろうか? 

 

 見た感じ、金が男、銀が女って感じに見える。あそこはベールさんがいた方だ。流石というべきか、因縁深い相手だけあってその勘がさえわたってたようだ。けど大丈夫だろうか? 不安だ。でも信じるしかない。私たちは誰もが自身の役目を遂行するしかない。すでに作戦は始まってるのだから。

 

「ゼロ」

『マナリフレクターの散布率は三十五%です』


 やっぱりプロト・ゼロと違って効率が悪い。でもまだ気づかれてないはず。私たちが奴らに勝つにはこれしかない。すると街の中央付近まできた鉄血種はばらばらに散りだした。これを待ってた。私たちは周囲の兵士達と目くばせしながら行動を開始した。

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