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Σ33

 なにやら難しいことは博士達に任せて、私たちはここの施設で体の検査とか、実験の手伝いとかをすることになった。今、私たちは三人は大きな球体が三つ台に設置された部屋に立ってる。その台の前に私と、カタヤさんにベールさんがいつもの並びで立ってる。いつもの並びってのはカタヤさんを中央に、左が私、右にベールさんって位置。

 これが基本なんだよね。フォーメーションタイプAという奴だ。

 

『では手を置いてくれ』


 研究者然とした、中年の男性にそういわれて私たちはその球体に手を置く。ほんのり暖かい? そんな気がする。それに何やら、奥がわずかに光ってるような? 

 

『うむ、いい反応だ』


 なにやら満足気な声が聞こえてきた。これでいいのかな? 心なしか、体が満たされてくような高揚感がある。ダルさがなくなってく感じ。なんだろう、ピアスから魔力を受け取ってる感じがとても大きくなったみたいな? これはもしかして……そういうことなのかな? 

 

『ふむ、ベール様の反応だけ悪いな』


 そんな事をマイク入れたまま言っちゃうその人。あの人、私たちにも普通に砕けた話方で接してくる。別にいやとかじゃないけどさ、珍しい。さすがに名前を呼ぶときは様付けしてるけどさ、それがとても慣れてないのが語感でわかる。私たちは軍のなかでも異質で、フェアリー部隊は人種の希望。だから大抵の人は遜って接してくる。

 

 それは私たちと全然関係人たちだってそうだった。そういう人たちからは期待を感じるんだけど、別に嫌な気はしない。その言葉の裏に何があってもね。けど貴族とかの人達とかは不遜な態度、高圧的な物言いの人達もいた。あの人たちは貴族こそが国を支えてると思ってるから、私たちのような軍人は消耗品とみてる色がつよい。貴族も今や、志願して軍属になってる人もいるのにね。

 

 まあああいう傲慢な貴族の人達は自身の子息子女はコネとか使って立場だけは立派で安全な部署とかに就かせてるんだよね。そしてそいつらが害悪だったりする。無茶な事を言ったりね。だから基本、言葉遣いにはその人の性格がでちゃうよねって私は思ってる。なのでこの人もそういう感じの人なのかな? ってちょっと身構えた。けどどうやら違うようだ。

 

 この人はただ単に、人付き合いとかしてこなかった感じの人みたい。そしてネジマキ博士と同じで、研究となると我を忘れるタイプ。ただネジマキ博士と違うのは、この人は成功できなくて、ネジマキ博士は成功できたってこと。ネジマキ博士だってこんな風に認められてなければ、ただの変なお爺さんとして、周囲に人なんていなかっただろう。

 

 それがあの人である。だからこうやって離れた場所で指示を飛ばすとかならいいけど、あの人対面ではまともにしゃべれないのだ。あんな言葉遣いも極端に他人に慣れてないからで、自身の殻にこもってきたからその弊害のようなもの。なのでこの人の悪い印象はすでに払拭されてる。

 

 彼に指摘されたベールさんの方を見る。こちらからでは正直よくわからない。だってあんまり見た目的に反応ないし。そう思ってたら、彼はこういった。

 

『出力をあげてみよう。その様な意思を伝えてくれ』


 指示が大雑把なんですけど!? うう……とりあえず私たちは手を置いた球体に出力アップを願う。すると大量のマナがあふれ出してくる。

 

『負担とかはないか?』

「いえ……むしろすごく調子が良くなってきてます」

『よし、流石は俺だ。これなら……ん?」


 不穏な声、彼は『ベール様』と口にした。私達はベールさんの方を見る。すると彼の球体に変化はなかった。それは明らかだった。だって今は私とカタヤさんの球体からは目に見えるほどのマナが放出されてる。その色はきれいな白。何物にも染まってない純なマナが溢れてるんだ。それなのにベールさんの球体だけ、何の反応もない。これはいったいどういうことなのだろうか? 私達と彼……一体なにが違うのか。

 

『ベール様は、ラーゼ嬢の魔力供給効率が二人よりも劣っていることは聞いてるよな?』

「それは……確かに言われたことはある。関係があるのか?」


 むむ、初めて聞いたよそんな事。魔力供給効率なるものがあったんだね。けどそれもそうか。だって跳びぬけてキララはラーゼから魔力を受け取ることができる。それはつまり、その効率が半端じゃないからだよね。キララだけ異常だから、その他大勢に私たちはなっちゃってるけど、細かく見れば、たぶん私達にも違いがある。そういうことなんだと思う。

 

『その球体は実は、皆さんがラーゼ嬢から授かってるピアスの巨大版と思ってくれていい。それを私なりに改造して、改良を施してる。キララ様のことも参考にしてな。理論上は彼女と同じだけの供給量が得られすはずだ』


 なるほどね。だからなんだか感じたことある感覚だとおもった。これは私たちが耳につけてるピアスの巨大なバージョンってことなんだ。しかもキララ並みの供給量とかすごい。まあ一番すごいのはそれだけ無造作にマナを分け与えても平気なラーゼだけどね。ふつうは死ぬ。絶対に。あいつ……やっぱり人種ではないんじゃないのかな? 

 

 約束の地から来たとか言ってたし、その地に居た羽の生えた人たちの生き残りでは? って思う。ラーゼに羽はないけど……だって人種では説明できない程の力を持ってるからね。

 

 けど今はラーゼの正体のことではない。何故にベールさんにこの巨大ピアス……もうピアスとは呼べない代物が反応しないのか……それが問題だ。てかなんか部屋がマナで満たされすぎて眩しすぎるんですけど。これ、垂れ流したままでいいの? 


「ん?」


 あれ? 今何かいなかった? マナで満たされた部屋の中には私達三人しかいないはず。だけど……なんだろう、なにか動いてない? ペタペタと足音が聞こえるような? ちょっ、ホラーだよこれ! だって確実に聞こえるし。

 

『安心してくれ。それはおそらくマナ生命体だ。マナが狭い空間に満ちたから、その存在が現れたんだろう』


 マナ生命体……それはラーゼの奴が死なない兵器として酷使ししてる彼らね。でもアナハイムにいる彼らはもっと実体的だ。こんないるかいないかわからない感じじゃない。

 

「なんでこんなに曖昧なんですか?」

『それはマナの濃度が足りないからだろう。彼らは一体でかなりのマナをため込むからな』


 これで? どれだけマナ必要なのよ。ラーゼはそれを一晩で滅茶苦茶実体化してましたが……やっぱりあいつはおかしい。それにメルさんとか明らかに他のマナ生命体とは格が違いそうなのまで出てるんだよ。そしてクリスタルウッド……あれも多分、おかしい産物なんだろう。こうやってラーゼから離れてみると、あいつの異常差がよくわかる。

 

 あいつといると、こういう世界なんだなーって思ってたもん。けど、実際は違うんだ。あいつが世界に変化をもたらしてる。

 

「俺のが反応してたら、こいつらも実体化できかかれしれないな」


 なにか落ち込んでそうな事を言うベールさん。さすがに気にしちゃうんだ。けどこれは仕方ないね。多分これがアンティカのパワーアップに使われるんだと思うし。パイロットである彼に反応しないのは困るよね。

 

「どうしたらベールにも反応するようになるんですか?」

『それは……正直わからない。これが先天的なものなのか、それともラーゼ嬢との何かで変わるのかは定かではないんだよ。なにせ、一番付き合いが長いらしい、アンサンブルバルン様でもキララ様に供給量では劣ってるからな』


 なるほど……確かにキララはぽっと出なのに誰よりもラーゼの力を受けとってる。ラーゼとの心のつながりとかが関係あるのなら、アンサンブルバルン様とかがその位置にいていいのにね。けどそこにはキララがいる。生まれ持った特性なのだろうか? でもそれなら、ベールさんに望みがなくなる。

 

「俺はアンティカから降りた方がいいいうことか」

「バカなこというなベール。そもそもタイプ・ツーはお前にしか動かせないだろうが!」


 気弱な事をいうベールさんをカタヤさんが叱咤する。たしかに降りるとかは極端だよ。

 

「だがどうする? タイプ・ツーだけ旧式のままでは戦っていけないぞ。それに本当に俺だけが動かせるのかはわからない。ミリアの代わりに亜子がプロト・ゼロに乗ってるようにな」

「私は……なんだかミリアと繋がりあるようだし、特別なような気もするけど……」

「世界には同じ顔の奴が三人はいるというぞ」


 それはなんか違くない? てかなんか今日のベールさんはネガティブだね。まあ、カタヤさんがポジティブでベールさんはネガティブキャラって感じではあったけど、ここまでひどくはなかったけどね。どうしたんだろうか一体? 鋼岩種とのバトルでなにかあった? 私は二人と離れて行動してたからね。外で頑張ってた二人に何があったのかはしらない。とりあえずみんな無事でよかったって感じだからね。

 

『先天的な事と決まったわけではない。それに今からタイプ・ツーを動かせて、ラーゼ嬢からの供給量も満たす人材を一から探すなど、現実的ではない』


 確かに。その通りだと思う。それにいるかなんてわからないしね。私は探したんじゃなく、強制的に連れてこれらた感じだし。しかも異世界から。つまりはこの世界では適応者なんて見つからない可能性があるって証拠じゃないこれ? 

 

「ではどうしろと?」

『事実として、ラーゼ嬢の傍にいる方々は僅かだか供給量は多い。だからベール様もそれを実践してみるのがいい。つまりはもっとラーゼ嬢との距離を縮めるのだ!』

「なっな……なにをいう!?」

『だがこれが一番確実な方法だよ。なあに、手配は任せたまえ。二人でラブラブデートを楽しんできたまえ』

「「ラブラ……」」


 なぜかベールさんだけじゃなく、カタヤさんまで反応してるよ。この人、自分がしたいなーって思ってるんじゃないの? てかこの人も人付きあいないから、デートってものをあんまり重大な事としてとらえてないよね? ラーゼは受けてくれるのだろうか? あいつも割と忙しいはずだ。

 

 まあ私はどうでもいいけど、なかなかに楽しそうなイベントではある。どうせアンティカが治るまでは出動はないだろうし、このイベントは見過ごせないよね! そう思う私は気づいた。一体のマナ生命体がベールさんの隣に寄り添うようにいることを。

 

(あれは……なに?)

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