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Σ23

「ビュオオオオオオオオオオ!!」


 そんな叫びがこの空間にこだまする。私達は草とかに隠れて鋼岩種の捜索から身を隠す。とりあえず最初の目的は装備を取り戻す事だ。鋼岩種はかなりの範囲見えてるみたいだから、気をつけないといけない。まあだけと、向こうの数が多いし、地の利も向こうにある。下手すると、直ぐに捕まってしまう。けどそこで私の魔法だ。撹乱用の分身をいくつも作ってそちらに目を眩ませてる隙に少しずつ移動する。

 

 けど、奴らの一撃一撃がとても派手で、心臓に悪い。自分の分身があいつらの腕に潰される度に地面が大きく波打つんだ。こいつらはそこまで動きは早くない。だからまだどうにか成ってる。少しずつ進んで、朽ちた幹の中に無造作に装備が放置されてたのを見つけた。とりあえず魔力の限り分身を作り出して、時間を稼いで皆が装備する時間をかせぐ。

 

「準備は?」

「完了であります!」


 四肢が無くなった四人を運ぶ為に一人に二人つけてるから、それだけで八人は戦闘には参加出来ない。置いていって欲しいと言われたけど、それを聞く者はいなかった。これで上手くいなかったとしても……いや、皆を無事に帰すのも私の役目。ほんとキツイよ。本当ならもうぶっ倒れておかしくない。かなり魔力使ったからね。けど、ピアスのお陰でどうにかなってる。

 

 自分の愛銃を確かめてると、一人の鋼岩種が迫ってきた。察しのいいやつがいたみたい。私は皆に指示を出して、物陰に隠れさせる。武器は取り戻したけど、実際普通の銃弾では奴らにダメージは入らない。武器があることで得られたのは心の安心感だけだ。やっぱり武器があると心細さが和らぐ。でも無茶は禁物。けど、いつまでも逃げててもここから脱出は出来ない。

 

 ここもあの牢屋と同じだと思うけど、どれがこの空間を維持してる装置なのか……私には分からない。牢屋なんて規模と違うんだ。それなりにデカイのがありそうなんだけどね。でも流れを見てもそれは巧妙に隠されてるみたい。これだけの空間だからね……高度な魔法技術が詰め込まれてる。私なんて他世界の新参者がどうにか出来るレベルじゃない。

 

 それなら……もう方法は一つしかないんじゃん。脱出方法を知ってる奴に聞く。それしかない。私は自身の銃にカードをセットする。それはさっき使ったマナを流し込む奴だ。そして何個か近づいてる奴に向かって打ち込んだ。背中側から打ち込んだから気付いてない。てか気づかれたら不味いからね。見た目では分からないから、あと何発か打ち込む。デカイし、何度も打ち込まないとね。

 

 少し待つと、僅かに奴がふらついた。それだけで、潰されるかと思うほどの恐怖が私達を襲う。けどふらついたと言う事はきっと効いてる。今ならいける! 私は更にカードを入れ替えて、弾丸を打ち込んだ。それは催眠効果があるやつだ。幻覚魔法を見せる事が出来る。それによって奴は仲間たちから離れてく。それを私達は追うよ。そして端っこの方に来た所で更に弾丸をうちこんだ。

 

 もう正気では無いはずだ。私は意を決して奴の前に出る。こっちを見てるようで見てない目。私はそいつに声を掛けるよ。

 

「ねえ、私達、ここから出たいんだけど? 出してくれる?」

「…………」


 奴らは口が声を発するようには出来てない。けど頷いてくれた。多分、私のことも同類の様に見えてるんだろう。

 

「やりましたね亜子殿!」

「けど、これだけじゃまだ足りないよ」

「皆はこいつとここにいて。多分こいつがいれば、こっち側には来ないんじゃないかな?」

「了解です。亜子殿は?」

「私は、もっと同じような奴を増やす。そしてここを混乱に陥れるよ。その時が脱出のタイミング。騒がしくなったらこいつと共に来て」

「はっ!」


 いい返事を貰って私は再び中央方面へと走る。カタヤさん達とは牢屋から出た時点でなんとか連絡取れた。けど、かなりピンチらしい。急がないと行けない。でもその時、視界が揺らめいて足が地面に取られた。盛大にすっ転ぶ私……恥ずかしくなって後ろを見たけど、もう誰も見えなかった。

 

「はあはあ……魔力使い過ぎかな?」


 私はキララじゃない。無尽蔵に供給を受けるなんて無理なんだよね。そもそも普通は多すぎる魔力は毒になるらしいし……ようは無理して供給を受ければそれが身体への負担となるってことだ。それが今の状態なんだろう。

 

「でも……やるしかないのよ!」


 私は気合で立ち上がる。やらないと死ぬだけだ。自分の身体が持ってくれる事を信じて、私は再び走り出す。

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