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「亜子……お兄ちゃん」


 再びそういう目の前のサーテラス様の姿をした魔王。魔王は二人をしってる? しかも待ってた様な……待ちわびてた様な……そんな感じがする。

 

「どういうことだ? 貴様が魔王なのか? だとしたら……俺にそんな知り合いはいない!」

「……」


 気丈に振る舞うカタヤさん。けど、その腕は震えてる。亜子は何も言わない。けどそんな二人に魔王は近づいてく。

 

「そう……だね。魔王なんて存在はしらないよね。けど……『ミリア』ならどう?」

「な……に?」

「やっぱり……そうなのミリア?」


 ミリアってのは確か、カタヤさんの真の妹だったような? けど確か行方不明で……それが魔王? どどどういうこと? 急展開過ぎるよ。

 

「亜子は流石に私の魂、感じてくれてるみたいだね」

「なんとなく……けど……どうして? 魔王って一体?」


 そんな亜子の言葉にミリアは語りだす。こうなった経緯を。

 

「亜子と離れた私はこの世界を漂ってた。多分幽霊みたいなものだったよ。いきなり引き剥がされて、一人ぼっちで、誰からも見えなくて……私はもうだめなんだろう成って思った。仕方ないよね。私の肉体はもうこの世界にはないだもん。魂が帰る場所なんてもうない」


 ミリアの肉体はアンティカのプロト・ゼロとともに消えたと聞いてる。いや、破壊されたプロト・ゼロ事態はライザップに有ったのかな? そこらへん詳しくきいてない。けどやっぱりパイロットの身体はなかったはずだ。

 死体として回収されてたのなら、ライザップが人の国に落ちた今、それをカタヤさんが知らないはずはない。ラーゼのせいで彼は妹を失った。アイツがプロト・ゼロを破壊した張本人。けどあの時は敵同士だったからね。下手にラーゼを責める事は出来ないよ。戦争だったんだから。でもその後、プロト・ゼロは亜子とともに戻ってきた。

 

 けどミリアという子はいなかった……戻ってきたのはプロト・ゼロだけで、ミリアという子の肉体は何処にもなかったんだ。確かに彼女を受け入れる器はもうこの世界にはない。代わりにこの世界には亜子がやってきた。

 

「けどそんな時、私は強い力に引かれた。ううん、元々がその力が私を亜子から引き剥がしたんだと思う。それこそが魔王。魔王の種みたいなもの。それに私という意思が組み込まれて、魔王はこうして復活してしまったの」

「そんなことって……」


 亜子は悲しそうだ。それもそうだよね。だって友達……だったはず。そんな友達が、いきなり魔王と成ってしまったんだ。私だって混乱してる。けど亜子はきっとその非じゃない筈。それはきっとカタヤさんも……

 

「良かった……」

「「「え?」」」


 そんなカタヤさんの言葉に私達は驚愕する。良かったって……この状況が? 貴方の妹、魔王とかいう存在に成ってますが……

 

「お兄ちゃん……こんな私でも……そう言ってくれるの?」

「当たり前だ! ミリアが生きててくれて嬉しい。魔王とかそんなのはどうでも良いんだミリアが生きてさえいてくれたのなら……それで十分だ」

「お兄ちゃん……じゃあ私が世界を破壊するって言っても、許してくれるよね」


 再び衝撃発言。この兄妹、とんでも無いことばっかりいうね。

 

「ミリア……一体何を? 戻って来れば良いんだ! そしてまた二人で一緒に暮らそう。一生お兄ちゃんが守ってやる!」


 うわああ……シスコンここに極まれり――だよ。けどそんなお兄ちゃんの愛の告白にもミリアは首を横に振るう。

 

「ごめんお兄ちゃん。それは無理なの。私は魔王だから……私はミリアだけど、存在は魔王なんだよ。私の中には魔王としての衝動がある。世界を破壊したいって衝動が。それはね……いつまでも抑えきれる物じゃない。だから私は……最後に二人の顔を見たかった。そして、言いたかったの」


 月明かりがミリアから離れてく。再び暗い闇の只中に入る直前、彼女は涙を流してこういった。

 

「私を殺して」


 それはとても切なくて、悲しい言葉だった。

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