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「魔眼?」

「知りませんか? それなりに有名……なんですけど……不幸を招く者と……そう呼ばれて忌み嫌われてます。ふふ」


 何故に最後笑うのか……それって笑い事じゃなくない? でもその説明だけでわかった。つまりはこの人も学校にいづらい存在なんだ。だからこんな所に……同類? と思うと、もう少し話してみても良いかな? と思う。

 

「それってどんな……さっき私を覆う力が見えるって言ってましたよね?」

「魔眼は……その名の通り、魔力……つまりマナを直接的に見る事が出来るんです。だから色の違うマナを纏ってたりすると……その人は誰かに操られてるって分かったりしま……す」


 なんと便利な目だ。ようはこの目の前では幻想魔術とか効かないのかな? 魔力を見て隠れた実力を図るとかも出来そう。ワクワクするね。

 

「けど……貴女は操られてる感じ……はしない。色が混ざり合ってる感じ」

「操られてると?」

「元の色が塗りつぶされる」


 なんかそれだけ聞いてもゾッとした。だってマナは命だよ。それを塗りつぶされるってことは……結構怖い。幻想魔術とか、一定時間とかしか効果ないとか言うけど、今のを聞くと術が解けても影響があってもおかしくなさそう。そこで私はハッとして彼女に聞く。

 

「サーテラス様は? さっき影が取り付いてるって言ったよね?」

「彼女は……もう駄目かも」


 あまりも真剣に彼女が言うから、私は一瞬息をするのを忘れた。だって……ダメッて一体……それはつまり……

 

「彼女に取り付いてる影は……とても怖い。だから私はここに……逃げてきたの」

「別にボッチだからって訳じゃないんだ――あっ」


 思わず口に出ちゃったよ。けど彼女は「ふふ」っと笑ってこう言うよ。

 

「その程度で逃げてたら……学校になんか通わない」

「なるほど」


 確かにそうかも知れないと思った。きっとこの人もきつい毎日を送って来たんだろう。いや、私みたいに救われたわけじゃない。今もずっと……この人はその目を持つ限り後ろ指を刺されるんだ。救われる事なんか……

 

「えっと……ごめんなさい」


 私には謝る事しか出来ない。私は救われた側で、彼女は救われてない側……なんかとても申し訳なくなる。そう思うと、今の状況はまだマシと思わないと行けないのかも知れない。彼女を見てると、私は落ち込んでちゃ行けないと……そう思える。

 

「誰かを恨んだって……仕方ない事です……だから……謝らないで」

「強いんですね」

「違う……私はただ、この世界を呪ってるだけ」


 不思議な色の瞳に暗い影が落ちる。彼女はもう願ってなんかいないんだ。だからただこの世界を恨んで呪って……そうしないと生きてけないから。私はその気持がわかる。生体兵器として飼われてた時、同じだったから。命なんて何の為にあるかわからなかった。私には何も出来ない。私はラーゼじゃない。所詮私の力は借り物の力。

 病気も怪我も何とかなったけど……けど彼女には出来る事なんてない。それが私にはわかる。でも……謝るしか出来ない私は何故か彼女の手を取ってた。彼女は不思議そうに私が繋いだ手を見つめてる。

 

「なに……呪われるよ」

「呪われない……貴女は誰かを呪ったりしない!」


 やけになって私はそう返した。私は自身がどうしたいのかも分からない。けど、この手は離しちゃいけない気がした。

 

「なんで……貴女には何もわからないでしょう?」

「そう……だね。私は貴女の事何もしらない。そんな私が何言ってるんだって思って当然。私だってなんでこんな事してるのか……正直わかんない」

「じゃあ、離しましょう」


 そう言って彼女はもう一方の手を使って来ようとする。けどそれも私のもう一方の手で阻む。ほんと……何やってるの私? なんていっていいかなんて全然わかんないのに……私なんかにこの人を変える事なんか出来ないと思ってるの……私は……この人を救わないと行けないとも思ってる。

 

「信じる……から」

「なにを?」


 なにを? 確かに……と思ったけど、それは口には出さなかった。私は何を信じるんだろう? 彼女を信じるの? 何も知らないのに? そんな薄っぺらい言葉でどうするの? そんなのは口だけだ。私が今……信じる事が出来るもの……それは――

 

「私は……この手を取った私を信じる! 私はね、救わないとって思ったの! 出来ないとも思ったけど……私は沢山の人を救って沢山の人に求められたいからこの学園に来たんだって……そう思い出したから! だから! 私は、この手を離さないよ!」

「…………」


 正直……自分が何を言ったのかよくわからなかった。きっと彼女も私が何言ったのか分かってない。だって目を丸くしてるもん。遠くで授業の開始を告げる鐘が鳴る。

 

「あまりにも……身勝手ですね。勝手に私を救いたいだなんて……私は救われたいなんて思ってない」

「それはまだ貴女が知らないだけだよ」

「知らない? 魔眼を持つ私が見えない物なんて無いんですよ」


 彼女はきっとその両目で色んな嫌な事を見てきたんだろう。知らなくて良いことを知ってきたんだろう。だからこそ……自分は救われないって思い込んでる。けど……同じ様な立場にいたから私にはわかる。言える事があった。それも自信を持ってだ。これだけは実体験。滅茶苦茶でも本当で……そして事実。その証拠が私だ。

 

「見えないよ。救いの手は眩しいんだよ。だから来たこともわからない。それに強引。こっちの話なんかきかない。けどね……あるんだよ。救いは……この世界にちゃんとある!」


 私は今日始めて心から笑った。そしたらなんだからやれる気がしてきた。教室にだっていける。逃げてちゃ駄目だ。私はなるんだ。救う立場に。その為にここに来たんだから! 

次回は夜にあげたいです。ここ数日でアクセスが滅茶苦茶増えたんで頑張ります。

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