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β5

 運動場に来た。着替える時に皆にパンツないの見られたけど、豚の様に絡んでくる子はいなかった。どうやらあの豚がとびきり性格悪いらしい。やっぱりその心の汚さが外にまで出ちゃってるんじゃないかな? てか更衣室にはアイツいなかったから、やっぱり運動する気はないんだろう。

 

 青い空の下、若人達がワイワイキャイキャイと集う様は中々に賑やかだ。教室とかよりも、全然人が多い。やっぱり魔法実技は人気なんだろう。とりあえず魔法実技と体術とか武器演習は誰もが講義を受ける人気な授業らしい。ここには一学年の大半が集まってるんじゃない? って感じ。皆お揃いの白い半袖の服に、紺色の半ズボンで揃ってる。

 ズボンは良いね……安心する。

 

(ズボンなのに何だが視線を感じるよ)


 それはやっぱり男子が多い気もする。これだけ居るのに……なんで私に? やっぱり転入生だからだろうか? でも一緒の部屋で着替えた女子たちも周囲の子達と何やら話しながら私を見てる様な……

 

(まさか、私がノーパンだって事を広めてる訳じゃないよね?)


 そうなると、皆の評価が一気に変わっちゃうよ。せめて女子だけにしてほしい。男子にも広まったら、なにやら良からぬことを企む奴等が出てきそうだしね。てか既に広まってないよね? この視線は私の下半身に集中してる訳じゃないよね? とても気になる。けどそんな事を気にしてると、何人かの先生方がやってきた。どうやら数が多いから、複数人で講義をするようだ。

 

 先生方は基本のスーツで変わりはない。先生方にとっては簡単なことなのだろう。そしてそんな先生方が集まると、騒がしかったグランドが静まりかえる。流石は貴族の子女や、上流階級の子供たちなだけはある。そして先生方はこういった。

 

「皆さん今日は浮遊系魔法の実技を始めますよ。予習は済んでる物とみなして、まずは私が見本を見せてみよう」


 そういって先生の一人、熱血そうな二十後半位のもう既に皺が深く入り始めてる人がゴトッとその手から大きな石を地面に落とした。そしてその石に手を翳して、言葉を紡ぐ。

 

「マナよ我が語りに応え、事象を具現せよ。時に風にそよぐ花の種のように、時に強風に吹かされた服の様に浮かせ」


 すると地面に落ちてた石がフワッブルブルブバッ!? と変なうごきして空に上っていった。それに皆が「おおー!」と歓声を上げている。なるほどアレがちゃんとした魔法なのね。それから私達はグランドいっぱいに何列かで適当に並ばされて、まずはゴムボールを配られた。そして列毎に実戦してく形になった。皆が一斉にその目を閉じて『マナよ我が語りに応え、事象を具現せよ』と紡ぐ。

 けどその後はどうやらバラバラなようだ。もしかして魔法を使う為の決まりごとはそこだけなのかも知れない。授業は既に進んでるから、わざわざ基礎みたいな事は教えてくれないんだよね。そもそもこの学校のスタンスが勝手に学びたい物を学べみたいな感じだもんね。劣等生には厳しい感じ……けど、やる気さえアレば、これ以上の学び舎がないのもなんとなくわかる。

 

 私は手の中にあるゴムボールをみつめる。今、凄くドキドキしてる。私に出来るかな? とりあえず前につけるあの言葉を言って、このボールが浮く感じの言葉を適当に言えば良いんだろう。もう既に私の前の列まで来てる。さっきから見てると、浮かせる事は出来ても、高く飛ばすとかは難しいっぽい。けどこれって浮遊系魔法の実技だよね? 別に高く上げる必要性も無いような気がする。

 とりあえず浮かせる事に集中してみよう。

 

「それでは次はお前たちだ。始め!」


 そんな声と共に、私も呪文を唱える。


「マナよ我が語りに応え、事象を具現せよ! う、う……その……なんかかっこいい感じで浮け!」


 ごめんなさい、言葉が出てきませんでした。けどそんな適当過ぎる呪文のせいなのかわかんないが、ゴムボールが光り輝き空に上った。そして派手に爆発する。

 

「…………あれ?」


 皆さんが固まってる。それは生徒だけじゃない。先生方も信じられない物をみたかの様な顔。そして引いて居た波が戻ってきたかの様に、次の瞬間皆が沸き立った。どうやら私……相当凄い事をしてしまったらしい。

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