02-04.帰還と接続
「エリク!」
「ユーシャ!」
「「会いたかったぁ!!」」
「ごめんね~。
先週来れなくて」
「大丈夫だ、パティ。わかっておる。
先週末はまだ移動中だったものな。
あれだけ囲まれておれば、姿を晦ますのも難しかろう」
もしやすると、あの兵士達の多さは護衛目的ではなく、パティを逃がすまいとするものだったのかもな。お父上に秘密にしている事も多いが、どうせ色々と気付いた上で黙認してくれているだけなのだろうし。
「あはは~♪
困ったものよね~♪」
困っとるのはお父上の方だ。
お転婆娘ばかりで気が気ではあるまいよ。
「ユーシャはどうだった?
しっかりやれていたのか?
虐められたりはしておらんか?
学園は怖くないか?
このままここに残っても良いのだぞ?」
「大丈夫。パティいるから」
「本当か?
無理はしていないか?」
「うん。本当。信じてエリク」
「ああ。うむ。もちろんだ。
私がお前の言葉を疑うわけがなかろう。
良かった。安心したぞ。
何せ十日以上も離れ離れだったのだ。
こんな事は初めてだったからな。
そうだ。試してみたい事があるのだ。
早速始めよう。ユーシャよ。私を受け入れておくれ」
「うん。なにするの?」
「パスを繋ぐのだ。
これで私達はいつでも一緒だ。
大変だったのだぞ。この技術を編み出すのは。
だが私はやり遂げた。どうか喜んでおくれ」
凄いのだぞ!断線の問題も克服したのだ!
これで私が意識を途切れさせても繋がっていられるのだ!
「スノウで試したの?」
「え?
ああ。うむ。
実験台になってもらった。
スノウにも感謝すると良い。
スノウの協力なくして、実現する事は無かったであろう」
「……スノウとはもう繋がってるの?」
「うむ。そうだが……」
「私より先に」
「……すまん。だがこれは」
「いい。やって。今すぐ」
「うっうむ!」
私はユーシャに魔力を流し、奥の奥に眠る魂を探り出す。
「む?」
「どうしたの?」
「なんだこれは……」
どういう事だ?
スノウのものとはまるで別物だ。
むしろスノウがおかしいのか?
人形と融合した影響か?
それとも私が魂と仮定したこれは、元より人によって千差万別なのか?
まだ確かめたのはユーシャで二人目だ。
結論着けるには早すぎる。
そうは思うのだが、妙な違和感を拭いきれない。
まるでユーシャのこれは……。
いや、余計な事は考えるまい。
為すべき事は変わらない。とにかく繋いでしまおう。研究は何時でも出来る。これからはどれだけ離れていても一緒にいられるのだから。
「よし。これで問題ない。
どうだ、ユーシャ。
何か違いはわかるか?」
「う~ん?
よくわかんない」
そうか。
そこはスノウと変わらんのか。
そういうものなのかもしれんな。
既に眷属となっている者ならば。
ディアナやパティで試すのは時期尚早だ。
そちらは先にミカゲで試すとしよう。本人も実験に協力的だしな。まあ本音としては、スノウにあまり妙な事をしてほしくないとかそんな所だろうがな。
ああでも。次は気をつけねばな。
ユーシャのように嫉妬されるやもしれん。
順番は変えられんが、せめて言葉にしない程度の気遣いは忘れんようにせねばな。
「今のは何をしたの?」
パティが興味津々だ。
新技術だものな。当然だよな。
「お主との話は後だ。どうせ長くなるからな。
心配せずとも、ちゃんと説明してやるさ。
だが先に就寝準備だ。既に夜も遅いのだ。
ディアナを起こさぬよう、静かに布団に入るがいい」
「おっけ~♪
すっかり遅くなっちゃったものね。
ディアナ、起きて待ってるって聞かなかったでしょ?
ディアナには悪いことしちゃったわね」
学園が終わってから真っ直ぐ飛んできたのだろうが、馬車で数日かかる距離は流石に時間がかかるのだろうか?
いや、それにしても遅すぎだな。
そもそも予定ではもっと早かったはずなのだ。
何かトラブルでもあったのだろうか。
「その辺りの事情もゆっくり聞かせてもらうとしよう」
「大したことじゃないわよ。
ちょっと腹ごしらえしてから出てきただけよ。
こっちで大ぴらに食事を貰うわけにもいかないからね」
一応、お父上には内緒だからな。
休みの間、ユーシャとパティは部屋を出る事も出来んのだ。
食事は一応、メアリが用意してくれる算段だが、今晩の分はもう残ってはおるまい。
まあ、これも別にバレたからと言ってそう大きな問題にはならんから、ぶっちゃけ作戦も随分と緩いものでしかないのだが。
「そうか。
ならば良い。
トラブルでなくて何よりだ」
次からは事前に連絡も出来るしな。
今のところは私から繋ぐことしか出来ないが、私が覗いている限りは、ユーシャ達の呼びかけに応える事も出来るのだ。
ふふふ♪
頑張った甲斐があったわね♪
スノウにはまたご褒美あげなきゃだわ♪
お陰でユーシャとも無事に繋げられたし♪
またミカゲと二人で町で遊んできてもらおうかしら?
いっそ二日くらい休みをあげて、泊りがけで羽根を伸ばしてもらうのも良いかもしれない。逆にスノウは嫌がるかな?
ちょっと後で相談してみよう。ミカゲも休みが多すぎるって反対するかもだし。なんかそんな姿がありありと浮かんでくるな。これじゃあご褒美にならないか。
まあ、何にせよそれも後だ後。
先ずはユーシャとパティをたっぷり抱きしめよう。
久しぶりに三人で寝床に……ああ。そっちの問題もあった。
スノウ、何時も私を抱き枕にしてるからな。
ミカゲは流石に遠慮してくれるけど。
どうしよう。先に言い聞かせておけばよかった。
今から言ってもミカゲのベットで寝てくれるのだろうか。
むむむ。準備不足だな。
ユーシャと繋がる事にばかり意識を割きすぎたな。
まあ良いか。
放っておけばしれっと足元にでも潜り込むだろう。
流石にそれ以上割り込んでくる事はないはずだ。
今も大人しく少し離れてくれているし。私がユーシャとの再会を待ち望んでいたのを知っているからなのだろう。スノウも何だかんだ空気は読んでくれるのだ。なんなら、ミカゲよりその手の察しは良いくらいだ。そう不安がる事もなかろう。うむうむ。
「おい。
何故今日に限ってミカゲまで入ってくるのだ」
何でスノウと二人して私の足にしがみついてるの?
「そうよ、なんでエルミラがここにいるのかしら?」
ああ、そう言えば説明してなかったのかぁ……。
パティ達が出てからだもんなぁ。ミカゲを奴隷にしたの。
「それにミカゲって呼んでた。
なんか仲良さそうだし」
「つまりはスノウと同じってわけね」
「うむ。その通りだ。
同じく押し付けられたのだ」
「そういう事にして娶ったと」
「エリク?」
「ちがわい!
娶っとらんわ!
奴隷にしたの!
メアリから押し付けられたの!」
「そんな……主様……やはり私は……」
「あ」
「ちょっとエリク。
今のは酷いんじゃないかしら?」
「最低だよ」
「ミカゲ虐めるのダメ。エリクさん」
何でスノウまで混ざってるの!?
「違うの!最初だけなの!
ミカゲがいてくれて助かってるから!
今は有り難いと思ってるから!」
「主~!」
「あ!ちょ!こら!
上ってくるな!
ちょっと!何処触ってるのよ!?」
「「エリク!!」」
「エリクさ~ん♪」
「待って!おい!ダメだって!
ディアナ起きちゃうから!」
「私がなんですって?」
「ディアナ!?
そうだ!ディアナ!助けて!説明して!
パティとユーシャに!ミカゲのこと!」
「それより、この状況を説明してほしいわね。
私だけ除け者にして何を楽しんでいるのかしら?」
「違うから!
襲われてるだけだから!」
「ふふふ」
「何!?何で笑ってるの!?
ちょっと!ダメだって!ディアナは!
こら!ユーシャ!パティ!スノウ!ミカゲ!
いい加減落ち着け!ディアナが興奮しちゃうから!
洒落になんないから!メアリ!助けて!メアリ~!」




