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WIP 27/? 王都(買い物)

 変装をして王都内部に入った。

 ……とはいえ、服装を変えたのはオデットだけだ。真っ白いフード付きのローブで頭から足元まですっぽりと覆っている。


 首からフライパンを提げているネージュも、民族色の強い服装のヤイヌも注目を集める格好だったが、この2人は服装を変更していない。

 シャルロットに着せ替えられるのを嫌がったためだ。


 もちろん〝あまり目立ちたくない〟という大義名分を女王陛下直々に与えられたシャルロットはねばった。

 しかし最終的には〝ネージュやヤイヌが注目を集めれば、そのぶんオデットが注目されない〟という強弁に遮られて着せ替えをあきらめた次第だ。

 そんなわけで、5人は王都南側にある道具屋に来ていた。


 道具屋の外観は石造りの四角い建物だ。

 ……というよりも、王都にあるだいたいの建物が石造りで四角い。


 道具屋の入口は大きく開け放たれており、中の様子がよく見える。

 見た目は乾物屋(干物や干し草など乾燥させて保存期間を長くしたものを売っている店)であり、店の天井からは紐で草などがぶらさげられていた。

 用途は薬局といったところか。健康、滋養強壮などがキャッチコピーとしてつけられた商品が数多く取り扱われていた。


 シャルロットがタスさんにたずねた。


「ここが目的地なのね?

 入ったことはある?

 地方ではあまり見ないお店のはずだけれど……

 ああ、商品自体は地方から輸入されてくるのよね。

 だからあなたのいた村で生産されていた物もあるかもしれないわ。

 素人目には役目のわからない商品が数多くあるから――

 店員に目的を説明して、品物を用意してもらわなきゃ。

 ふふ、あなたは無口だものね。

 私が代わりに注文を――

 ――あら?」


 言葉を無視して、タスさんはスタスタと店に入って行く。

 店の奥にいた老婆が気付いて、シワの刻まれた優しそうな顔を向けた。


「おやお嬢ちゃん、何か用かい?

 貴族様のお使いかね?

 どんなものが必要か言ってごらん。

 アタシが用意して――」


 タスさんが動いた。


 尋常ならざる動作だった。

 言ってしまえば、ただ棚から商品を持ち出し、カウンターに置くだけ。

 だというのにその速度が尋常ではない。まったくの静止状態から一瞬で最高速に達する挙動は残像を生む。

 動作には伴って旋風が巻き起こり、店の中の商品を揺らした。

 だというのに棚を倒したりすることはない。棚を倒せば直すためのタイムロスが発生する。TASにとってそのような無駄な時間を過ごすことは拷問にも等しかった。


 周囲の人にはいきなりタスさんが変なことをし始めたように映るだろう。

 だが、TAS的に買い物というのは〝目にも止まらぬもの〟である。


 ゲームなどで〝買い物をする〟というのは、どういうことか。

 たいていの場合は、店員に話しかけ、望む商品のところまでカーソルを移動させ、決定ボタンを押して購入を確定させることである。


 実機で〝買い物〟を行なう場合、かなりの時間をようする。

 なにせ望む商品を見て探し、そこまでカーソルを動かし、購入決定のためにボタンを押す必要がある。場合によっては所持金と相談し本当に必要かどうか悩むこともあるだろう。


 カーソル移動1つだって最低30(フレーム)(1秒の半分)はかかるはずだ。

 ならば、カーソル移動を1Fでできるとすると、どうなるか。


 カーソルが分身する。

 しかもTASは悩まない。買い物をするタイミングも買う物もチャートに記されているのだ。おまけに金銭の用意だって万全である。


 余人からすれば〝なにを買ったかも見えないような一瞬のできごと〟――

 それが、TASによる〝買い物〟なのだった。


 ダン! と必要分の金銭をカウンターの上に置く。

 そして商品を持って店に背を向けた。

 外ではシャルロットたちがぽかんとした顔で出迎えてくれる。


「……タスさん。

 店員のおばあさん、口を開けたままずっとこっちを見てるわよ。

 それにしてもすごい買い物だったわね。

〝嵐みたいな〟って形容したらいいのかしら。

 ……あの、1つ言わせてもらいたいのだけれど――

 一応、隠密行動中なのよね。

 できたらもう少し大人しく動いてくれるとありがたいのだけれど」


 聞けない注文だった。

 シャルロットの危惧もわかる。だが、タスさんの予定では今後、イベント以外の戦闘は一切ないことになっていた。

 目立っても目立たなくてもクリアタイムには関係がないのだ。

 だったら可能な限り早く動くのがTASというものである。


 タスさんはシャルロットに耳打ちした。


「……」


「『用事は終わったから早く王宮に』?

 あ、あの、タスさん、情報集めとかはしないの?

 ほら、王宮内での宰相派が、今はどの程度の勢力だとか……

 ……しないのね。

 あなたが珍しく安全優先の選択をしたから、どうしたのかと思っていたけれど……

 やっぱり安全に配慮してゆっくり行く気はないのね。

 え? 『必要がないことはしない』?

 それはあなたの占いで王宮内に味方が多いと出ている、という意味?

 …………だからなぜ面倒くさそうな顔をするのよ。

 とにかく、あなたの中ではもう王宮に向かってもいい状況なのね?」


 タスさんはうなずく。

 それを確認して、シャルロットはオデットたちを見た。


「……という風に言っていますけど、どうしましょう?

 王宮はおそらく、安全ではないでしょう。

 オデットも、ネージュも、ヤイヌも、やりたいことがあるなら今のうちよ」


 その確認に、まずはオデットが答えた。


「わたくしは特になにも。

 必要な情報も手に入れていますし――

 あとは家に帰るだけですわ」


 ネージュもうなずく。


「ここまで来たらさっさとやっちまおうぜ。

 王都はどうもお上品すぎて落ち着かねーしな」


 ヤイヌが唇をとがらせた。


「……黄金の都も、宝石が散りばめられた建物もなかった。

 ヤイヌは知る。理想と現実の差異。

 望みは王宮にたくされた。

 早く見たい」


 シャルロットが苦笑した。


「えっと……

 ようするに、誰も異論はないということね。

 あと、ヤイヌは妙な期待をしない方がいいわよ?

 ま、まあ、とにかく異論がないなら行きましょうか。

 ……敵の本拠地に乗りこむのだから、もう少し緊張していてもいいはずなのだけれど。

 みんなけっこう気楽な感じね。

 ……いいことなのか、悪いことなのか。

 とにかく――

 ここからは後戻りできない戦いが始まるわ。

 覚悟を決めて、乗りこみましょう」

10日から忙しくなるので感想のチェックなどなかなかできない状況になります。ご了承ください。

……という旨の連絡を10日投稿文の後書きに添えたと思いこんでいたら反映されていなかったので、こちらで追記させていただきます。


また、10日ぐらいまでに読ませていただいた感想を加味し、タイトル、キーワードを1部変更いたしました。

新しくいただいた感想のチェックなどはまだできませんが、手が空き次第読んでいきますのでどうぞよろしくお願いいたします。

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