095 サラクン16:最終局面
バロルによって放たれた魔力波は騎士たちの三半規管を襲い、魔導兵器のヒューズを飛ばした。
突然の事態に浮足立ち、優勢だった戦況がひっくり返る。
戸惑う騎士たちに勢いづいたオーガたちが反撃を開始した。
「慌てるなッ。手順通り、ヒューズを交換して、再起動せよッ!!」
北方師団長の声に、我を取り戻した騎士たちが応戦するが、一度変わった流れは急には止まらない。
騎士たちはオーガに押され始めた――。
だが、そんな中、異変からいち早く復活した一団がいた――ペルスたちディン騎士団の者たちだ。
彼らは幾度もの修羅場をくぐり抜けてきた。
それにバロルの姿をその目で見ていたことも大きいだろう。
立ち遅れるサラクンの騎士たちを尻目に、彼らは変わらぬ強さでオーガの戦列に穴を開ける。
「サラクンの騎士よ。そなたらは弱兵か? 否であれば、行いで示してみせよ」
凛としたペルスの声が戦場に響く。
彼女のカリスマ性がサラクン騎士の心に火をつけた。
「誇り高きサラクンの意地、見せつけてやれっ!」
そして、北方師団長が油を注ぐ。
その声に合わせて、喊声が上がる。
騎士たちの心は再度、燃え上がった。
「魔銃掃射!」
「ヒダント砲、充填完了!」
「撃てっ!」
魔導兵器が火を吹く。
「三人一組を作り直せ」
「勝ちを急ぐな。防御優先だ」
「戦列を乱すな」
むせ返る血の匂い。
立ちこめる砂埃。
打ち合う金属音。
厳しい戦いが続く――。
サラクン騎士は、長時間の戦闘で疲労しきっていた。
騎馬も倒され、動けなくなり、ほとんどの騎士が地に足をつけて、戦っていた。
足は重く、フルプレートは重く、手に持つ武器が重かった。
個々の力ではオーガに圧倒的に及ばない。
だが、巧みな連携で、オーガにつけ入る隙を与えない。
そんな中、ペルス率いるディン騎士団がオーガたちを蹂躙していく――。
優勢のまま、しばらく戦闘が続く。
騎士も斃れていくが、オーガどもはそれを上回るペースで数を減らしていった。
オーガ三百。
サラクン騎士八十。
そして、ディン騎士十七。
順調に推移していた戦局に一報が届く。
「ギガ・ヒダント砲が来たぞっ!」
その報に騎士たちは歓声を上げる。
サラクン騎士団、最後の切り札――ギガ・ヒダント砲が今、サラクンの街から到着したのだ。
戦いを終わらせる力を持った最終兵器が、ようやく到着したのだった。
次回――『魔眼のバロル5:立ち上がる』




