094 魔眼のバロル4:合流
迫る爪。
動けないサンディ。
そこに、赤い影が躍り出る――。
「うらあああああぁぁぁぁぁ!」
――ヴォルクだ。
跳び上がったヴォルクが、バロルとは比べ物にならない小さな爪で、大きな爪を弾いた。
「ヴォルク!」
「遅くなってわりぃな」
「待たせたのう」
「私もいるわよ」
「助太刀いたす」
ヴォルクだけではない。
眷族どもを皆殺しにした『紅の牙』の四人が頼もしくそろっていた。
「おう、ロイル。この障壁すげえな」
「驚くほど硬いのう」
「かけ直す?」
眷族との戦い、そして、今の爪弾きでヴォルクにかけていた障壁は損耗している。
それは他の三人も同様だ。
ディズを入れ、五人を対象に――。
『――【絶対不可侵遷移空間】』
『――【絶対不可侵遷移空間】』
『――【絶対不可侵遷移空間】』
『――【絶対不可侵遷移空間】』
『――【絶対不可侵遷移空間】』
これで、また、しばらくは大丈夫だろう。
「サンキューな」
礼を述べたヴォルクは、ディズに尋ねる。
「爪と、踏みつけだな。他には?」
「立ち上がるまでは、それだけのはずだよ」
「そうか。片手だけか?」
「ううん。そろそろ、左手も」
「おっけー、わかった。オルソ、何枚いける?」
「四枚――はちと厳しいかのう」
「じゃあ、三枚だ」
「ルナール、ラカルティ。一枚ずついけるな?」
「ええ」「ああ」
「ディズは二枚か?」
「うん。二枚なら余裕。頑張れば三枚もいけるかな?」
「無理しなくていい。お前さんになにかあったら困るからな」
「よし。俺が三枚受け持つ。ロイルとサンディはぶちかましてくれ」
「う、ん」「はいっ!」
自分の役割が定まったところで、ディズを見る。
目線が合い、ディズは首を横に振る。
まだ、アレの出番じゃないらしい。
「ディズ、どこを狙う?」
「足狙い。ストンピングを止めるのが一番よ」
「だそうだ。いくぞッ!」
バロルは右手だけでなく、左手も前に出し、十枚の爪を飛ばす。
爪攻撃は途切れない。
打ち出される度に爪は生え変わり、絶え間なく降り注ぐ。
その爪は――。
ヴォルクが爪で弾く。
オルソが盾で防ぐ。
ルナールが炎で燃やす。
ラカルティが土の壁で止める。
ディズが殴り飛ばす。
そして、バロルのストンピングによる地揺れは――。
『土の精霊よ、震えよ――アース・シェイク』
ラカルティの精霊魔法が干渉し、弱くなった振動は――。
『――アブソーブ』
地面に先端が突き刺さったオルソの盾が防ぐ。
バロルの攻撃は格段に激しくなったが、『紅の牙』はそれを防ぎ、さらには、攻撃まで加えていく。
その動きは思わず目が奪われるほど――。
まるで、背中に目があるように。
あたかも、無言のやり取りをしてるかのように。
冒険譚の戦闘シーンを読んでいるとき、いやそれ以上の興奮に心が奮い立つ。
このまま、バロルを押し切って倒してしまうんじゃないか――そう思わせるだけの戦いぶりだった。
サンディの詠唱もジャマされず、バロルに雷を落とす。
俺も負けじと魔弾を放っていく。
ダメージが一定量蓄積されると、バロルの金色指輪が光り、傷はすべて消える。
そのたびに、振り出しに戻されるが、心が折れる者はいなかった。
そして、五回目に指輪が光ったとき、傷が癒えるとともに――バロルが座っていた玉座が砕け散った。
「さあ、こっからよ」
次回――『サラクン16:最終局面』




