092 魔眼のバロル2:反撃
バロルの手首から先が消失した――。
「やったですっ!」
「う、ん」
また、すぐに復活するかもしれないが、とりあえず一発かましてやった。
すぐにバロル左手の金色指輪が光る。
その光で右手が復活した。
だが、その指に銀の輝きは失われている。
バロルは右手を不思議そうな顔で見つめていた。
「召喚の指輪は壊したよ。もう、眷族は現れない」
「おう、よくやったっ! じゃあ、こっちももうひと踏ん張りだ。コイツらを倒して合流するぞ」
それにしても、『紅の牙』は優秀だ。
数で負けているのに、しっかりと眷族を喰い止めている。
そのおかげで、こちらはバロル戦に集中できる。
そして、バロルの顔が醜悪に歪む。
今、初めて俺たちを敵と認識したかのように。
だが、それも一瞬。すぐに元の邪悪な笑みが戻る。
「攻撃来るよっ。備えてっ」
ディズは俺とサンディの前に立ち、腰を落として迎撃体勢を取る。
バロルが指輪のなくなった右手を俺たちに向ける。
他の指を握り、人差し指だけが突き出されていた。
――ドンッ。
指先から飛び出されたのは――爪だッ。
先端が鋭く尖った爪。
だが、その大きさが尋常ではない。
小柄なディズを包めそうな大きさだ。
それが高速で迫ってくる――。
「破ッ――」
ディズは完璧なタイミングで、爪の横を殴り、軌道をそらした。
爪は地面に刺さり、大穴を作り出した。
今の一発でディズにかけていた【絶対不可侵遷移空間】はかなり削られた。
ディズの技量があったから、この程度で済んだのだ。
もし、直撃していたら、一発で障壁は吹き飛んでいたかもしれない。
それでも、受けられるのはあと数発。
今のうちに張り直した方がいい。
そう思ったが――。
「まだ大丈夫。ギリギリまで耐えるから、魔力は温存しといて」
「う、ん」
バロルは人差し指を曲げ、今度は中指を伸ばす。
――ドンッ。
「破ッ――」
ディズは同じ動きを再現した。
「ひとつなら、問題ないね。でも、複数同時だと厳しいな」
余裕そうな口調だけど、実際はギリギリそうだ。
「ロイルは防御優先で様子見。いけそうだった魔弾よろしく」
「う、ん」
「サンディは、さっきの魔法をもう一回」
「でっ、でも……」
「大丈夫。信じて。私とロイルを」
「はいっ!」
サンディが詠唱に入る。
俺はサンディの前で仁王立ち。
絶対に後ろには通さない。
――ドンッ。
――ドンッ。
今度は、薬指と小指だ。
一発はディズが弾く。
もう一発にもディズは拳を当てたが、弾くほどの威力は与えられなかった。
その一発が俺に迫るッ――。
『――【すべてを穿つ】』
至近距離からの一発は爪と衝突し――相殺した。
――うん、バッチリ把握できている。
今の魔弾は威力を調整したヤツだ。
俺は戦闘前から【世界を覆う見えざる手】でできる限りの情報を収集している。
先ほどの二発を見て、その威力を計算し、ちょうど相殺できるよう威力を調整したのだ。
今は魔力の無駄遣いができないからな。
「ないすっ! 修行の成果だねっ!」
ディズから声が飛んで来る。
サンディは詠唱に全神経を集中している。
――信じてくれてるんだ。
嬉しくなる。
是非とも、期待に応えなければ。
弟子にカッコ悪いところは見せられないからな。
――ドンッ。
次は親指の爪。
ディズはそれを無視してバロルに迫る。
俺に任せてくれた。
『――【すべてを穿つ】』
俺の魔弾が親指の爪と相殺し、ディズはバロルの右足の小指を思いっきり殴るッ――。
次回――『魔眼のバロル3:爪』




