088 サラクン15:激戦
ディン騎士団16名を率いるペルスは、戦うサラクンの騎士たちを鼓舞するため、大きな声で名乗りを上げる。
「我らディン騎士団、いざ助勢いたす――」
遠く澄んだ声は、張りがあり、力強かった。
そこに部下たちの鬨の声が唱和する。
ペルスを先頭に騎士たちは戦場を駆け、防衛戦の一番脆弱な場所へ向かう。
その途中――道を塞ぐオーガに対し、ひらりと宙を舞ったペルスは瞬速の一閃で、その首を斬り落とす。
新たな助っ人。
魂を高揚させる声。
そして、華麗な剣技。
「援軍だッ!」
「サラクンの意地を見せろッ!」
「ディンのヤツらに負けるなッ!」
やや劣勢であってサラクン騎士団の士気は高まり、オーガどもを押し返す。
いきなりの反撃にオーガは戸惑ったようで、騎士たちはその隙につけ込み、一気に優勢に立った。
数人がかかりで斬りかかり。
魔銃は火を吹き。
ヒダント砲が巨体を貫く。
そして、ペルスたちは駆ける勢いのまま、激戦区に飛び込んだ――。
三人一組が五つ。
巧みなコンビネーションでオーガを翻弄し、その実力を発揮させないで、確実に倒していく。
ディン領はサラクンよりモンスターが多く、高ランクだ。
騎士もサラクンに比べ実戦経験が豊富で、連携に長け、そして、強い。
中でも、ペルス率いる騎士たちは精鋭中の精鋭。
圧倒的な速さで、余裕を持った安定感で――オーガを討っていく。
そして、ペルスと副官のペアは――。
「四時に一体」
副官の指示に合わせ、オーガを斬り捨てたばかりのペルスは走る。
その先には、オーガに押されているサラクンの騎士数名。
オーガに押され、及び腰だ。
そこにオーガが大剣を振り上げる。
「下がれっ!!」
ペルスの声にサラクン騎士は、転げるように後退した。
空いたスペースにペルスが踊り込む。
振り下ろされたオーガの重い剣を最小限の動きで受け流し、そのまま飛び上がる――。
ペルスが着地し――オーガの首も一拍遅れて地に落ちる。
その光景を見て、サラクン騎士は立ち尽くす。
「ぼやぼやするな、敵はいくらでもいるぞッ」
ペルスに叱咤され、サラクン騎士は動きを取り戻す。
その顔から怯えは消え去っていた。
「三時、今度は二体」
副官の声に、ペルスは休むことなく、駆け出す――。
副官は自身の身を守る程度にしか参加しない。
彼の役目は戦うことではない。
戦場を把握し、的確な指示を出すことだ。
「第2小隊、六時よりオーガ接近。挟撃に注意」
「第5小隊、三時のサラクン騎士を支援」
「第1小隊。下がれ。第4小隊は第1小隊を側面から支持」
副官のコントロールでディン騎士たちは、その実力を十全に発揮する。
彼らの参入で、戦局はひっくり返った。
今度は人間側のターンだ。
――しばらく戦闘が続き、時間経過とともに、オーガたちは劣勢になっていく。
このまま、押しきれる――。
騎士たちの心に余裕が生まれ始めた頃、異変が起こった。
魔力に長けた者はそれを察知した。察知させられた。
今まで体験したことがない、信じられないほど強力な魔力の波だった。
魔力波は騎士たちの三半規管を襲い、平衡感覚に失調をきたした。
耐性のある者はふらつく程度だったが、そうでない者は膝をついてしばらく立ち上がれない。
そして――。
「魔銃、作動しませんッ!」
「ヒダント砲も動作停止ッ!」
魔力波は人間よりも、魔道具に大きな被害をもたらした。
ヒューズが飛び、動かなくなったのだ。
「慌てるなッ。手順通り、ヒューズを交換して、再起動せよッ!!」
北方師団長は事前に報告を受けていたので、すぐに指示を飛ばす。
魔道兵器は再起動され、座り込んでいた騎士たちも立ち上がる。
だが――。
いっときの空白。
調子を落とした騎士たち。
オーガたちも魔力波の被害を受けていたようだが、騎士側よりもそれは軽微だった。
一足先に騎士たちに襲いかかり、騎士たちは浮足立つ。
優勢だった戦況が、またひっくり返された――。
次回――『バロルの眷族(上)』




