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084 新魔法そのに

 以前の俺だったら、手をこまねいているしかなかった。

 だが、修行を終えた俺はひと回り成長した。

 今の俺なら、やれることがある――。


 動きまわるモンスターのうち、狙いやすそうな一体を標的に定める。

 そして、両腕を前に突き出し、慎重に狙いをつけて新魔法を発動させる。

 この魔法にはひと晩かけてカッコいい詠唱を考えたのだが、今は時間が惜しいので泣く泣く省略だ。


『――【精確な死をアクラゥテ・モルトェム】』


 手のひらから飛び出した魔力弾は、狙い違わずオーガの頭部に吸い込まれ――。


 ――パァン。


 オーガの頭は水風船のようにはじけ飛ぶ。

 それと同じくして、役目を終えた魔力弾も消失する。

 周囲への被害は皆無だ。


 ふぅ。まだ実践回数が少ないので、失敗しないか心配だったが、なんとか上手くいって一安心。


 これぞ、魔法修行の最大成果である新魔法【精確な死をアクラゥテ・モルトェム】だ。

 その名の通り、精密な魔力調整によって、ちょうど相手を殺しきるだけの威力を持った魔力弾を飛ばす魔法。


 この魔法であれば、変異種オーガだろうと、スライムだろうと、余剰ダメージなしで倒せる。

 死体を魔石ごと吹き飛ばすこともないし、ダンジョン壁に穴をあけることもない。

 これで俺もダンジョンに潜れるようになったのだっ!


 手応え感じた俺は、続けざまに魔力弾を飛ばす。


『――【精確な死をアクラゥテ・モルトェム】』

『――【精確な死をアクラゥテ・モルトェム】』

『――【精確な死をアクラゥテ・モルトェム】』


 オーガも、ゴブリンも、オークも。

 どれも一撃で命を散らしていく。


 スライムを自力で倒すために生み出した魔法だったが、思いの外、使い勝手のいい魔法に仕上がったな。


「すごいっ、無駄がないです。さすがは、師匠!」

「きれいな魔法」

「とてつもないレベルで洗練されておる」

「私も負けてられないですっ!」

「私もよ!」

「吾輩も!」


 俺の魔法に触発されたようで、三人も今まで以上にやる気を見せる。

 俺たちは今まで以上のスピードでモンスターの数を減らしていった。


 この魔法を生み出すのには、散々苦労した。

 最初は【すべてを穿つ(オムニス・カウウス)】の威力を弱める方向性で練習したのだが、どうしても一定以下に威力を下げられなかったのだ。

 そこで、俺は違う方法を試してみることにした。


 ――複数の魔法を混ぜればいいんじゃね?


 安易な思いつきだが、それ以外の方法は思いつかなかった。

 問題はどの魔法と混ぜるかだ。


 そこで最初に浮かんだのが、鉄壁の魔法障壁を生み出す【絶対不可侵オムニノ・ノモレスト・隔絶空間セパラティオ・ロゥクス】だ。


 ――魔法障壁の内側から撃てば、弱くなるんじゃね?


 思い立った俺は、【絶対不可侵オムニノ・ノモレスト・隔絶空間セパラティオ・ロゥクス】を張り、その内側から【すべてを穿つ(オムニス・カウウス)】を撃ってみた。


 その結果――魔力弾は明らかに弱体化されたのだ!


 そして、【絶対不可侵オムニノ・ノモレスト・隔絶空間セパラティオ・ロゥクス】は【すべてを穿つ(オムニス・カウウス)】よりも、威力調整が簡単だ。

 何度か試し撃ちするを続けて、思い通りの威力で魔力弾を撃てるようになった。


 俺はかつてない喜びに打ち震えた。

 これで――ダンジョンに潜れる。


 だが、俺は慢心しなかった。

 この魔法はまだ、洗練できると。


 【精確な死をアクラゥテ・モルトェム】は【すべてを穿つ(オムニス・カウウス)】と【絶対不可侵オムニノ・ノモレスト・隔絶空間セパラティオ・ロゥクス】を組み合わせただけの魔法ではない。


 このふたつだけでも、望みの威力で魔力弾を撃てる。

 だが、相手に合わせていちいち威力を調整しなければならないという欠点がある。

 それは面倒くさいし、激しい戦闘中には調整する時間が惜しい。

 この問題を解決するために、俺はもうひとつの魔法を組み合わせたのだ。


 その魔法は――【世界を覆う見えざる手ムンドゥス・コゥヴェ・インヴィジ・マヌス】だ。


 【世界を覆う見えざる手ムンドゥス・コゥヴェ・インヴィジ・マヌス】で標的の生命力を精確に読み取り、魔力弾の威力を自動調整する機能を追加したのだ。


 こうして完成したのが【精確な死をアクラゥテ・モルトェム】だ。

 その効果は、このとおり、実戦で証明された。

 俺の努力は無駄ではなかった。

次回――『森の奥へ』


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