083 森を駆ける
魔動車は木々をなぎ倒しながらも、速度を緩めない――。
街道沿いに比べると圧倒的に少ないが、森の中でも戦闘が行われていた。
オーガ。
ゴブリン。
オーク。
亜人型モンスターばかりだ。
どれも変異種で、肌が黒く変色している。
対する人間側も優秀で、一方的にやられることなく、上手に立ちまわっている。
だが――やはり、劣勢だ。
「チッ。我慢なんねえな。追いつくから、先に行ってろッ!」
一番最初に動いたのはヴォルクだった。
堪え切れずといった様子で魔動車から飛び降り、戦闘中のオーガに向かって、物凄い速さで駆けていく。
「変異種だろうが、オーガ程度じゃあ、相手になんねえよッ!」
冒険者と対峙しているオーガに向かって跳び上がりッ――。
斬ッ――。
オーガの大きな頭が宙を舞う。
首から噴水のようにどす黒い血を噴き出しながら、残された胴体は地に斃れる。
戦っていた冒険者たちは慌てて後ろに飛び退る。
「あれはっ!」
「赤毛のヴォルク!」
「強え……」
ヴォルクは硬く鋭い爪でオーガの太い首を斬り落としたのだ。
皆がそれに気がついた頃には、ヴォルクは次の獲物を求めて駆け出していた。
魔動車よりもはるかに速い走りだ。
これなら、遅れることなく戻れるだろう。
そして、続いたのは――。
「じゃあ、私もひと暴れしてこよっと」
ディズも軽い身のこなしで車外へと躍り出ると、オーク三体に殴りかかる。
「私たちも魔法でフォローです」
「そうね」
「ああ」
サンディ、ルナール、ラカルティの三人も魔法で的確にサポートしていく。
「俺だけ手持ち無沙汰じゃのう」
オルソはその巨体を持て余していた。
彼の移動速度では魔動車に追いつけない。
遠距離攻撃の手段も持ち合わせていない。
だが――。
「おっ!」
十数体のゴブリンの群れが魔動車に飛びかかってきた。
そのほとんどは【絶対不可侵遷移空間】に弾き飛ばされて、ぐちゃぐちゃな肉塊と化した。
しかし、そのうちの一体だけは吹き飛ばされずに、魔動車にしがみついていた。
他のゴブリンよりデカく、牙は鋭く、醜悪だ。
ゴブリンには上位種がいる。
ゴブリンリーダーやゴブリンジェネラルなど。
コイツもそのどれかだろう。
「ほう。ゴブリンキングの変異種か」
オルソはゴブリンキングの脳天めがけてモーニングスターをフルスイング――。
――ぼげらっ。
耳障りな叫び声と汚い血反吐を撒き散らしながら、キングは吹き飛んでいった。
「たわいないのう」
オルソはモーニングスターを軽く振り、キングの血を払う。
「ロイル殿。ここは俺に任せよ。かかってくるヤツら、みな俺がぶちのめしてやるからのう」
「う、ん」
仁王立ちするオルソは頼もしかった。
俺はあらためて【世界を覆う見えざる手】で森の中を精査する。
モンスターと人間が戦っているが、街道ほどの乱戦ではない。
――これなら、イケるッ!
以前の俺だったら、手をこまねいているしかなかった。
だが、修行を終えた俺はひと回り成長した。
今の俺なら、やれることがある――。
次回――『新魔法そのに』




