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077 接近、ウルドの森

 ――魔動車がウルドの森に近づく。


 俺を含め、みんながバロルの恐怖を心の片隅に追いやった。

 いざ覚悟を決めれば、悩まない。

 後は全力を尽くすだけ。

 死んだら死んだで、それまで。


 Aランクパーティー『紅の牙』とサンディの決意が伝わってきて、俺やディズも同じ高揚感に包まれる。


 ――不思議と、怖くはなかった。


 彼らと一緒なら、なんでもできる気がしてくる。

 待ってろよ、バロル。

 絶対に倒してやるからな!


 森はもうすぐそこまで迫っている。

 街道は惨状を極めていた。

 まぎれもなく、そこは戦場だった。


 舞い上がる砂埃。

 風に乗って運ばれる血の匂い。


 剣や鎧がたてる金属音。

 騎士の怒声。

 オーガのうなり声。

 そして――断末魔。


 森から街道にあふれ出た数えきれないほどの黒いオーガ。

 立ち向かう騎士と冒険者。

 なんとか防衛線は維持できているが、両者が入り乱れ、戦況がわからないほど。

 これだけの乱戦だと、巻き込んでしまうので、俺の魔法は使えない。

 歯がゆい思いをしながら、見送ることしかできなかった。


 だが、サンディとルナール――二人の魔法使いは、俺とは違った。


「――フローズン・スピア」

「――フレイム・アロー」


 サンディは氷の槍を、ルナールは炎の矢を、巧みに操って、黒いオーガに命中させていく。


 そして、リザードマンのラカルティも――。


「――ヒール」


 騎士に向けて、回復魔法を的確に放つ。


 4メートル近くあるオーガは馬に乗った騎士たちよりも、頭ひとつ飛び出ている。

 だから、射線は確保できるのだが……これだけ目まぐるしく両者が動き回っている状況では、誤射が怖くて攻撃魔法は撃てなかった。


 回復魔法も――試してみたがダメだった。

 素早い騎士の動きに合わせられない。

 数発試してみたが、上手くいかなかった。


 これが経験の差だ……。


 魔法の威力は規格外でも、その運用に関しては俺はまだまだ、三人の足元にも及ばない。

 弟子に見捨てられないように、精進しないとな……。


 そこまで考えたところで、俺はその思いを振り払おうと首を大きく振る。


 今は気にしたらダメだ。

 俺のやるべきは、魔眼のバロル討伐。

 できないことはしょうがない。

 いくら悩んでも、急にできるようになったりしない。

 自分のできることに、全力を尽くすだけだ。


 そこにペルスから通信が入る――。


「我々は街道の戦いに参加する。貴方たちは森に入ってくれ」

「ああ、任せろッ!」

「武運を祈るッ!」

「お前たちもなッ!」


 魔動車が二手に分かれる。

 騎士たちは街道へ。

 俺たちは森の入り口へ。


「そろそろだ。手前で降りるぞっ!」

「い、や…………おり、なくて……いい」

「なんだって?」

「魔法で……なんと、か……する」

「本気か?」


 さっそく、俺にできることがあった。

 俺が役立てる場面が。


 ヴォルクは半信半疑、いや、疑い八割の視線を向けてくる。

 そこに重なる二人のフォロー。


「ロイルがそう言うなら大丈夫よっ」

「師匠なら平気ですっ!」


 ヴォルクは、ディズ、サンディと順番に見て、最後に俺の目をじっと凝視する。


「わかった。ロイル、頼んだぞっ!」

「う、ん……任せて」

「なあ、騎士さん」


 ヴォルクは御者を努める騎士に話しかける。

 騎士は前方への警戒を怠らないまま、ヴォルクに顔を向けた。


「アンタは俺たちと心中する気があるか?」

「ペルス隊長は貴方たちを信じた。私もそれに従うだけだ」

「ほう。アンタ、騎士にしとくのはもったいないな、これが終わったら冒険者になれよ」

「我が命は主のためにある」


 ヴォルクの軽口にも、騎士は生真面目な返答だ。


「だが――生きて帰れたら、酒を呑み交わすのも悪くない」

「ははっ。だな。冒険者の呑み方はエグいぞ。お上品な騎士サマがついて来られるかい?」

「酒に潰れたことは一度もない」

「そりゃあ、いい。楽しみにしてるぜ」

「ああ」


 後ろで聞いている俺も興奮する、カッコいい会話だった。

 これは、みんな生きて帰らないとな。

 思わず、手に力が入る。


 だが、まずは――。


「よしっ、ロイル、やっちゃえ」

「う、ん」


 ヴォルクの立てた親指に、俺はうなずいた――。

次回――『新魔法そのいち』


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