表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/148

060 俺なんかやっちゃいました?

 突如発生した「俺なんかやっちゃいました?」空間。

 旅立ったばかりの俺だったら、自信満々のドヤ顔で「俺なんかやっちゃいました?」だったろう。


 だけど、今の俺は違う。


 皆が驚きの視線を投げかけてくる中、ディズだけが平常運転だった。

 視線がぶつかる。

 ディズはたしなめるように小さく頷く。


 以前、彼女にキツく戒められた。

 そのセリフは厳禁だと。


 なので、奥歯の間で暴発しそうになっている言葉をグッと飲み込む。

 その代わりに強キャラムーブを発動させる。


「これが…………魔力、こねこね……だ」


 魔法の深淵の一端をつまびらかにした伝説の賢者のごとく。

 重厚で謹厳、そして、知謀をにじませた語り口で。


 俺の声は低く、言葉も途切れ途切れだ。

 普段だったら、ただのコミュ障なだけ。

 だが、この場合はそれが上手く作用した。


 他人には到底理解できないことを、いとも簡単にやってのける――これぞ、強キャラのあるべき姿だっ!


 自分の見事な強キャラぶりに満足しながら、一堂を見回す。

 みな、神秘に触れたように感じ入っている。

 必死で笑いを噛み殺しているディズを除いて。


「なんかわかんねえけど、背筋がひりつくぜ。とんでもねえな」


 最初に口を開いたのはヴォルクだった。

 赤毛を逆立たせている。


「Sランクモンスターかと思ったわい」


 オルソもその巨体をこわばらせる。


「「「…………」」」


 ルナール、ラカルティ、サンディ。

 三人の魔法職は無言のままだ。


「魔力こねこね……」


 しばらくしてサンディの口からこぼれた言葉は、様々な感情がごちゃまぜになっているように感じられた。

 どのような感情なのかまでは、俺は理解できない。

 ただ、熱量だけは伝わってきた。


 サンディは唇をキツく噛みしめたまま、深く頭を下げた。


「師匠、どうかその御技を伝授していただけないでしょうか?」


 彼女だけではなかった。


「ねえ、ロイルくん、いえ、ロイル様。なんでも言うことを聞きます。だから、どうか私にも教えてください」

「吾輩にも教えていただけないだろうか」


 狐人のルナールも、リザードマンのラカルティも深々とこうべを垂れる。


 なんか、とんでもないことになった……。

 ルナールは口調まで変わっているし……。

 ラカルティもすごい食いつきだった……。


 えっ? まじ?


 メルキ一番の魔法使いであるサンディだけでなく、Aランクパーティーの二人までの弟子入り志願してきたぞ。


「おいおい、どういうことだよ」


 ヴォルクがぽつんと漏らすが、俺こそ「どういうことだ?」と問いたい気分だ。

 たしかに、ちょっと悪ノリして強キャラムーブをしてしまったが、ここまでの効果があるとは思っていなかった……。


「まあ、弟子にするかどうかは別として、今の教えてあげれば?」

「ディズちゃん!」

「ディズさん!」

「ディズ殿!」


 横からの援軍。

 三者三様に目を輝かす。


 そんな目で見られたら、断ることもできない。

 まあ、別に出し惜しみするものでもないしな。


 他人に試すのは始めてだが、大丈夫だろうか?

 まあ、もし失敗しても、「うむ。そなたにはまだ早かったようだな」とでも誤魔化せばいいだけだ。


「う、ん……いい……だ、ろう」


 俺の言葉に三人は歓喜に包まれる。


「まずは…………サンディ」

「はいっ!」

「手……出して…………」

「はいっ!」

「そう、じゃ……ない…………てのひら……うえ」

「はいっ!」


 言われた通り、サンディは手のひらを上に向けて、右手を俺の方へ差し出した。

 その手が僅かに震えているのは緊張か、それとも、興奮か。


「じゃ、あ……やって……み、る」

「はいっ!」

「失敗……して、も…………気に……するな」

「はいっ!」

 次回――『こねこね講座(上)』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ