056 派遣隊出発
――翌朝。
南門に予定の時刻に全員が集合した。
サラクンに向かうのは――。
俺とディズとサンディ。
『紅の牙』の4人。
そして、ペルス率いる騎士が17人。
計24人だ。
見送り側は、ガラップら冒険者ギルド職員に、伯爵とフローラ嬢。
それだけでなく、どこから聞きつけてきたのか、見送りのために結構な人が集まっている。
普通の町人が大半だが、見覚えのある冒険者の姿もちらほらと。
定刻になった。
ガラップと伯爵から激励の言葉があり、いよいよ、出発だ。
「では、分乗してくれ。先頭2台は騎士。冒険者たちは最後尾だ」
移動に使うのは――魔動車だ。
人馬の力ではなく、魔力によって動く、大型の魔道具。
話には聞いていたが、お目にかかるのは始めてだ。
蓋のない巨大な鉄箱。
8つの車輪がついている。
黒く、圧倒的に黒く、朝の光をはね返す。
それが3台、「俺たちが主役だ」と門前に並んでいる。
鈍重そうな見た目に反して、馬車の何倍も速く、馬と違って疲れない。
魔力が続く限り、いつまでも走り続けるのだ。
そのぶん、動力源としてバテリを大量消費するので、よほどの資金がないと運用できない。
サラクンの騎士団は持っていなかったし、寂れた北門を通ることもなかった。
他領の応援に持ち出すとはずいぶんと太っ腹だ。
いや、魔動車でないと間に合わないほど、状況が切迫しているのだろうか。
いずれにしろ、伯爵はサラクンに貸しを作ろうという魂胆に違いない。
俺としては、伯爵の思惑はどうでもよく、魔動車への期待でソワソワしていた。
確かに、魔道具には恨みがある。
だが、コイツは別物だ。
この格好良さは反則だ。
黒は正義だ。
デカいも正義だ。
ゴテゴテとしておらず、無骨なところがイイ。
歴戦の強者といった風情で黙しているのがサイコーだ。
道具ではない。
移動手段でもない。
武器だ。兵器だ。戦力だ。
いや――。
ともに戦地に赴く仲間。
命を預けられる相棒だ。
「おうっ、乗り込むぞっ」
ヴォルクの言葉で、一気に現実へと引き戻される。
今回、冒険者のまとめ役は彼。
その言葉に従い、浮かれ足で近づいたところで――群衆の中からひとりの男が抜け出してきた。
ミゲルだ。
冒険者になって以来、なにかと世話になっている。
彼は切羽詰まった様子で俺とディズに話しかける。
「なあ、ロイル、ディズ。頼む、サラクンを守ってくれッ。あの街には妹がいるんだッ」
いつもの余裕はまったくない。
本当なら、自分の足で駆けつけたいだろう。
だが、今回は魔動車の定員上、派遣隊に選ばれなかった。
彼の切実さが突き刺さる。
もうひとつ、頑張る理由が――増えた。
「まか、せて」
「どーんと、大船に乗った気持ちで待っててねっ!」
ミゲルに誓い、魔動車に乗り込む。
俺とディズが最後尾だ。
空いたスペースに並んで腰を下ろす。
「出発っ!」
ペルスの合図で、3人の漆黒の戦士が動き出した――。
次回――『派遣隊』




