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044 サスの森

「すごいじゃないっ!」

「そ、う?」


 俺としては、噛み噛みで満足できる結果ではなかった。

 だけど、ディズは手放しで褒めてくれる。


「ええ、昨日に比べたら、大きな進歩よっ! この調子で頑張っていこっ!」

「うっ……う、ん」


 俺の不満気な顔を見て、ディズがさらにフォローしてくれる。


「どんなことでも、最初は緊張するものよっ。気にすることないわっ」

「ディズも……そう、……だった?」

「ええ。私も慣れないうちは、いろいろ失敗したからねっ。だから、大丈夫よっ」

「そう……だ……ね」


 その言葉に励まされ、気持ちが軽くなる。


 俺の知る限り、ディズは何事にも物怖じしない。

 受付嬢や他の冒険者とも臆することなく、積極的にコミュニケーションを取っている。

 伯爵家で歓待されたときも、堂々とした態度だった。


 俺にとっては初めての体験ばかりだったが、ディズにとっては慣れていることなのだろう。

 元聖女らしいし、今までどういった人生を歩んできたんだろうか……。


「じゃあ、行こっ」

「う、ん」


 サスの森を目指すため、俺たちはギルドを出て街の南門へ向かう。

 今日は朝から日差しが強く、プレートメイルを容赦なく照らしつける。

 だが、夏の酷暑も、冬の極寒も耐えてきた俺にとっては、さほどでもない。


 街道を進んでいき、ディズの額に薄っすらと汗がにじんできた頃、後ろから声をかけられた。


「おう、ロイル!」


 声をかけてきたのは、冒険者の洗礼でお世話になったミゲルさんだ。

 彼のパーティーメンバーらしき人たちと一緒だった。


「お前たちもエストの森か?」

「ちがっ……サス、森」

「あの森は危険だからあんまり深く入るなよ……って言いたいところだが、オマエたちなら問題ないな。でも、無理するなよ」

「は、いっ」


 ミゲルさんたちとぎこちない会話を交わしながら進んでいく。

 南門から伸びる街道はしばらく南東に向かい、やがて、二手に分かれる。

 エストの森がある東方面に向かう街道と、俺たちが向かうサスの森がある南方面に向かう街道だ。

 分岐路で俺たちはミゲルさんたちと分かれた。


 Bランクパーティーであるミゲルさんたちはエストの森の奥深くに踏み入り、オークの調査をしながら、モンスター狩りを行うそうだ。


「頑張れよっ!」

「は、いっ」


 街道を南に進んで行く。

 それからしばらく歩くと、サスの森が見えてきた。


 サスの森は南に向かう街道の西側に位置している。

 比較的安全なエストの森は街道がその中を突っ切っている。

 だが、サスの森は危険度が高く、街道は森を迂回するかたちで通っている。


 森の中は危険だ。

 ダンジョン内は出現するモンスターが固定されているので、力量に見合った場所を選べば、それほど危険ではない。

 しかし、森の中ではそうはいかない。


 いきなり、想定外のモンスターと遭遇することもある。

 しかも、サスの森には強く凶暴なモンスターが生息している。

 普段は中心部にいるソイツらが、気まぐれに入り口付近まで出てくることもある――。


 昨日購入した『冒険者ガイド:メルキ編』にそう書いてあった。


 外縁部は比較的安全で、Eランク向けの依頼もあることはあるが、その危険度ゆえ、人気がない。

 この森に入っていくのはそれなりの実力を備えたCランク以上の冒険者たちだ。

 そして、今日、彼らのほとんどはサスの森ではなくエストの森の調査に向かっている。


 【世界を覆う見えざる手ムンドゥス・コゥヴェ・インヴィジ・マヌス】で調べてみても、森の中に冒険者はいない。

 これなら、誰にも見つかることなく、安心して魔力トレーニングができるな。


「ちょっと、地図見せてっ」

「う、ん」


 タブレットから『冒険者ガイド:メルキ編』を開き、サスの森の地図を表示させる。


「このあたりにしよっか?」

「う、ん」


 ディズが示したのは、かなり奥まで踏み入ったところにある開けた場所だった。

 ガイドによるとCランク相当のモンスターが出る可能性もあると書かれていたが、俺とディズならなんの問題もないだろう。

 タブレットの地図を片手に、森に入って目的地を目指す。


「一応、依頼もこなしておかないとねっ。対象モンスターがいたら教えてねっ」

「う、ん」


 Eランク依頼をこなすためにサスの森に入る――それは建前だ。

 俺たちの本当の目的は2つ。

 そのひとつは、人目につかない場所で俺の魔力トレーニングを行うこと。


 そして、もうひとつは――。

 次回――『魔力トレーニング(上)』


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