042 冒険者初日を終えて
墓地を後にした俺たちはギルドに向かって報酬を受け取ってから、拠点に戻った。
それから、交代で風呂に入り、軽く雑談してから、それぞれの部屋に引き上げた。
ベッドに寝転がり、タブレットを起動させる。
俺のタブレットは読書専用だ。
千冊以上の冒険譚が入っている。
実用書や自己啓発本などは一切入っていない。
今までだったら、眠りに落ちるまで冒険譚を読み耽るのだが、今日はそうしない。
というか、しばらくは封印だ。
その代わりに、書籍の購入ページを開いて、目的の書籍を数冊購入する。
一般常識や冒険者として知っておくべきことが書かれたもので、どれもディズに勧められたやつだ。
ディズと出会って、いかに俺が常識知らずか身を以って知った。
今までは現実から目を背け、このような本には近寄らないようにしていた。
だけど、俺はまっとうな冒険者になりたいので、これからはこの手の本も積極的に読んでいこうと思う。
そして、ディズからの提案はもうひとつ。
新聞の定期購読だ。
何種類かあるが、ディズのオススメは『冒険者日報』だ。
冒険者向けの情報を中心的に扱う新聞で、冒険者の中でも一番人気の新聞らしい。
月に3,000ゴルで、毎朝更新される記事が読み放題なのだ。
こちらの定期購読も済ませる。
明日からは、朝に新聞を読む習慣をつけよう。
ディズとは朝7時から朝食をとることになった。
開門に合わせて5時半に起きる生活を15年も続けてきたのだ。
冒険者になってもその習慣は抜けず、その時間に目が覚める。
朝の時間を読書タイムにあてて、有効活用していこう。
その後、眠りに落ちるまで、購入したばかりの本を読むことにした――。
◇◆◇◆◇◆◇
――翌朝。
定時に目が覚めた俺は、着替えてからリビングに向かう。
コーヒーをセットして、タブレットで『冒険者日報』を開く。
コーヒーはそれなりの値段なので、門番時代は飲んだことがなかった。
ディズに勧められて飲んでからハマってしまい、コーヒーを飲まないと一日が始まらないようになってしまった。
できたコーヒーに口をつけながら、記事の一覧に目を通す。
トップ記事はハイランク冒険者たちの活躍について書かれていた。
格好いい装備を身にまとった姿とインタビュー記事だ。
ディズに「有名冒険者の名前くらい覚えておきなさい」と言われたので、しっかりとその名を胸に刻みこむ。
二番目の記事は経済記事だ。
さまざまな品の相場価格が載っていて、最近どういう動きなのか説明されている。
今年は豊作で小麦などの農作物の価格が例年よりも安い。
それに対して、魔石の需要は高まり続けている。
原因は魔道具の普及だ。
魔道具の原動力は魔石を加工してできる『バテリ』と呼ばれるもの。
人間が持つ魔力では動かせない。
それができれば、歴史に残る大革命だが、まだ実現はほど遠いそうだ。
魔石需要の増加に伴って、冒険者の需要も高まっている。
今後、冒険者数はどんどん増えていくとのことだった。
俺も冒険者のひとりなので、魔石価格の上昇はありがたい。
だけど、冒険者が増えて競争が激しくなるのはイヤだな。
魔石に関する記事の最後に、識者の意見として宮廷魔術師の筆頭である大賢者様の意見が載っていた。
――民生品としての魔道具利用については、私も賛成だ。だが、現時点では、高出力魔道具の性能は安定していない。魔道具の実戦配備は慎重に取り扱われるべきである。
へえ。そうなのか。
魔道具推進派の騎士団長と魔道具技師の手で、俺を含め少なくない騎士団員が職を奪われた。
偉い人たちはみな、魔道具賛成派なのだと思っていたが、そうでない人もいるんだな。
しかも、国一番の魔法使いである大賢者様が慎重派なのか……意外だったな。
その後も他の記事も読み進めていく。
興味が湧かないような話題でも、ひと通りは目を通すことにした。
これはディズのアドバイスだ。
どこに大切なことが書かれているか、初心者の俺には判断がつかないからね。
俺は新聞のありがたさを知った。
どれも俺の知らなかったことばかり。
たった一日で、いろんなことを知れたし、世界の広さも感じられた。
これからはちゃんと毎朝読んでいこう。
第2章完結です。
一日お休みして、明後日から第3章『成長の日々』始まります。
次回――『勉強の成果』
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