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037 魔力測定(下)

「どうしたの?」


 ディズは俺の顔を無邪気に覗きこむ。

 彼女は気にならないのだろうか?


「あっ、もしかして……」

「う、ん」

「へへへっ。大丈夫よっ。私は気にしていないからっ」


 間接キスという行為を気にしていないのか。

 それとも、相手が俺だから気にしていないのか。

 屈託のない笑顔から読み取れるほどの経験値は俺にはない。


「ほらっ、パクっといっちゃいなよっ」

「う、ん」


 催促されて、測定具を口に含む。

 甘い味が口の中に広がった。

 顔が赤くなる。


 ディズはそんな俺を「ふふふっ」と笑って見る。


 やがて――。


 永遠にも思える長い時間が終わる。

 実際には一、二分だろう。

 俺にはとてつもなく長く感じられた。


 測定具を取り出し、恐る恐る数値を見る。

 横からディズも覗き込んでくる。


 騎士団に入団したときも、魔力を測定した。

 そのときはディズと似たりよったりの数字だった。

 あれからずっと魔力をこね回してきたから、多少は伸びているはず。

 さすがに、ふた桁ってことはないだろうが……。


「どれどれ?」

「9……9……9……9……」

「ええええっ!!!!」

「……どう、だっ……た?」


 すごい勢いで驚いているディズに尋ねる。


「規格外だとは思っていたけど、ここまでだったとはね……」

「そ、う?」


 ディズは若干呆れ顔だ。


「どんぐらいバカげているか、ちゃんと説明してあげるね」

「う、ん」

「200〜300もあれば冒険者として優秀な方。宮廷魔術師や教会の聖女は500〜1,000くらい。1,000以上は歴史に名を残すレベル。当代の大賢者様でも3,000に届かないくらいなんだよ」

「え……っ?」

「弟子入り志願してきたサンディは500くらいだと思うな。あなたから見たら50も500も大して違わないかもしれないけど、彼女が凄腕だってわかったでしょ?」

「そう……だっ、た……のか」


 世界で一番の魔術師と言われる大賢者様。

 俺はその3倍もの魔力量を持っているのか……。

 たしかに、今まで魔力に困ったことはなかったが……。


「自分がどれだけ非常識な存在かわかった?」

「う、ん」


 今まで自分はそこそこ魔法が使える部類だと思っていたけど、考えをあらためないといけない。

 ディズの言う通り、俺には常識が欠け落ちていたようだ。


「いい、絶対に誰にもバラしちゃだめだからねっ」

「う、ん」


 この結果を知られたら大変だ。

 格調高い宮廷魔術師なんて俺には務められない。

 それどころか、下手したら、実験台にされてしまうかもしれない。


 以前、物語で読んだ。

 人並み外れた能力を持つがゆえに、狭い地下牢に幽閉され、人体実験の素材として扱われた者の末路。

 そんなのは、まっぴらゴメンだ。


「これは私とロイルの秘密だねっ」

「う、ん」

「それにしても、魔力がこれだけなんだもの。武器がサッパリなのも納得よね」

「……どう、……いう……こと?」

「ほとんどの人はどちらも、武器を扱う才も魔法を使う才も持ち合わせていないの」

「う、ん」


 冒険者としてやっていける人は、ごくひと握り。

 それ以外の大部分は、農民だったり、商人だったり。

 荒事とは無縁な生活を送る。


「才能がある人でも、普通、武具を扱う能力と魔力は反比例するのよ。たしかに、中には、両方使える魔法剣士のような人もいるわ。だけど、基本的にはどちらかが強ければ、反対の力は弱くなるのよ」

「そ、う……なの」

「例えば、私。殴り合いなら誰にも負けない自信があるんだけど、その分魔法はからっきし」

「う、ん」


 話にも聞いていたし、実際に、12という魔力値も確認したばかりだ。


「ロイルの場合は、魔力が規格外な分、武器の扱いも規格外に下手くそなのよ」

「あっ、……ああ」


 今までの謎が解けた。

 どうして、子どもに負けるレベルで武器を使えなかったのか。

 まさか、規格外の魔法の才能ゆえだったとは……。


「いい、アンタが置かれている状況をちゃんと理解できた?」

「うっ……う、ん」


 ディズに念を押される。

 俺も気をつけないといけないと、心に刻みこむ。


「それにしても、入れ物と素質がまったく合っていないね」

「ん……?」

「このガタイで魔力極振りとか、サギもいいところだよ。こんなの誰も信じないよ……」


 今まで散々見掛け倒しだと罵られてきた。

 だけど、俺は木偶でくの坊じゃなかったんだ。

 俺には人並み外れた魔法の才能があったんだ。


 よしっ、これからは魔法を極めていくぞっ!

 そう決意したところで――。


「いい? ロイルの魔法は人外レベルなの」

「う、ん」

「だから、それを忘れないでね。アンタにとっては当たり前のことでも、他の人から見たら非常識なんだからねっ」

「う、ん」

「それを肝に銘じてね。決して『なんかやっちゃいました?』とか、『俺の魔法がおかしい? 弱すぎるって意味か?』とか、『これくらい普通だよね?』とか、『誰でもできるよね?』とか、絶対に言ったらダメだよっ!」

「そ、う……なの?」


 ディズには珍しく、キツい口調で言われてしまった。


 どれも聞き覚えのあるセリフばかり。

 物語の中で主人公が言ってて、カッコいいなと思ったセリフ。

 妄想の中でよく使っていたセリフ。

 いつか言ってみたいセリフランキングの上位ばかりだ。


 それが禁止されるなんて…………。


「これからちゃんと常識を身に着けさせるからねっ! ビシバシ仕込んでいくよっ!」

「う、ん」


 厳しい態度のディズだけど、それは俺のことを思ってくれてるからだと伝わってくる。

 本当にディズには頭が上がらない。


「まあ、お説教はこれくらいにしとこっか」

「うっ……う、ん」

「じゃあ、遅くなったけど、食事してから墓場に向かいましょ」

「う、ん!」

 次回――『ゴースト退治(上)』


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔力を増やした方法(トレーニング?)を発表したら話題になりそう。ただそれが世に出るかは微妙だが。
[一言] ディズちゃん優しいな~(´▽`) 今回も面白かったです✨
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