036 魔力測定(上)
「依頼だけど、今夜でいいかな?」
「でっ、でも…………だいじょ、ぶ?」
依頼票によると、期日は三日後。
その間に一晩、19時から翌5時まで墓場に留まって現れたゴーストを退治する仕事だ。
どうしても今晩やらなければいけないわけではない。
今日は朝からスタンピードがあったり、ダンジョンに潜ったりとせわしなく過ごした。
この上、徹夜するとなると――。
俺は大丈夫だ。
戦闘力はともかく、体力には自信がある。
徹夜にも慣れている。
ついつい、冒険譚に熱中してしまい、気づいたら朝になっており、一睡もせずに北門に向かったことも数知れず。
だから、俺は徹夜でも構わないのだが、ディズには大丈夫なのかな?
「心配してくれるのねっ。ありがと。でも、大丈夫よっ。どうせ、すぐ終わるからっ」
「そ、う……なの?」
「ええ、ロイルの除霊魔法は強力だもの。一発でカタがついちゃうわよっ」
先日、拠点に棲みつくレイスを即興で作り上げた【我が名、それは――邪を滅ぼす者】で退治した。
だから、ゴーストを退治できる自信はある。
でも、あのときは1体だけだった。
墓場となれば、たくさんのゴーストが出現するだろう。
そんなに簡単に行くだろうか?
そう思ったところで、今朝のディズの言葉を思い出した。
――スタンピードを一瞬で全滅させるなんて、宮廷魔術師でもなきゃできないことよ。
――ロイルは当たり前に思っているようだけど、アンタの魔法はどれも規格外よ。Aランク、いや、Sランク並みよ。
俺にとっては普通のことでも、俺の魔法は規格外なのだ。
だったら、きっとディズの言う通り、平気なんだろう。
変に謙遜するなって、ディズに言われた。
彼女に嫌われたくないので、気をつけないと。
「わか……った」
「うんっ。まだ、仕事まで時間があるわ。せっかくだから、この機会にロイルの魔力を測っちゃおっ」
「う、ん」
それから、魔道具屋で魔力測定の魔道具を購入。
ディズの「人目につかない場所の方がいいわね」との言葉に従って、拠点に戻ることにした。
「さあ、じゃあ、まずは私がやってみるねっ」
「う、ん」
ディズは棒状の魔道具をぱくっと口に加える。
ディズの話では、これが一番スタンダードなタイプらしい。
もっと安いので脇に挟むタイプもあったが、お金に余裕があるから、性能がいいこっちを選んだのだ。
他にも、お尻の穴に挿れて測るタイプもあったが、もちろん、遠慮しておいた。
そっちの方がより正確に測れるらしいが、無理なものは無理だ。
ちなみに最新のヤツは非接触のタイプで、額に向けるだけとか、手のひらをかざすだけで、一瞬で測れるそうだ。
ただ、まだ開発中の段階で、市場に出回るのはまだまだ先の上、販売されても桁ふたつみっつ違う高級品だとか。
なんで、ディズはそんなことまで知っているのか尋ねてみたら、「それくらい新聞に載ってるよ」とのこと。
今まではあまり世間のことに興味がなく、冒険譚ばかり読んでいた。
これからは新聞とかも読んで、常識を身につけないとな。
そんなことを考えていると……。
――ピピピピ。
機械的な音がなり、ディズが魔道具を口から離す。
「ほら、ここに数字があるでしょ?」
「う、ん」
「12。これが私の魔力量。ちなみに冒険者に成り立ての魔法職が50〜100くらいね。素質ゼロなんだ」
ディズはあっけらかんと言い放つ。
「なんで、こんなミソッカスが聖女候補に選ばれたんだろ。神様のお告げも当てにならないね」
「…………」
「あら、気にしないで。私も気にしてないから。礼拝堂で膝をついてお祈りしてるよりも、ロイルと冒険者やってる方が百倍楽しいもん」
「う、ん」
「それより、ロイルのも測っちゃお。どんな非常識な値がでるか楽しみだな〜」
「う、ん」
ディズがタオルでぬぐった測定具を差し出す。
それを受け取ってから気がつく。
タオルで拭きとったとはいえ――。
――これ、さっきまでディズの口に入っていた。
それを俺が咥えるってことは……。
俺は三十過ぎのおっさんだが、その半分は突っ立っていただけだ。
女性経験はおろか、まともな対人経験もない。
もちろん、キスも間接キスも未体験。
本の中の冒険譚よりも縁遠い存在だ。
……………………。
「どうしたの?」
次回――『魔力測定(下)』
魔力測定の結果が明らかに!
タイトルでネタバレしてるけどね!




