029 反省会
ディズは「あちゃー」という顔で額に手を当てていた。
あれ、なんか、まずかった?
「だ、め…………だった?」
「えーとねぇ……」
ディズが渋い顔をしている。
「その調子だとなにがダメだったか、それすらもわかっていないみたいね」
「う、ん」
「彼女のこと、どう思った?」
「思い込み…………はげし、い……新人…………かと」
「…………」
ディズは黙り込む。
そして、はぁと大きく溜め息を吐く。
「どうしてそう思ったの?」
「魔力……たいし、た……ことない。……それに…………オークに……びびって……いた、から」
「今の言葉、2つ間違いがあるわ」
「……えっ…………?」
ディズの反応からなにかマズいとは思っていたが、2つもか……。
「まず、最初に。彼女はトップクラス冒険者よ。多分、この街一番の魔法使いね」
「そ、う……なの?」
「ええ。新聞にもよく載る有名人よ。魔力量も冒険者としてはトップクラス。宮廷魔術師でもおかしくないわ」
「そう……だっ、た……のか」
そんなスゴいひとだったのか……。
「それともうひとつ。彼女が恐れていたのはオークじゃないわ」
「……えっ…………?」
じゃあ、なにに怯えていたのか……。
「彼女が恐れていたのはアンタよ」
「俺? ……どう、し……て?」
「きっとロイルの魔力を感じ取ったんじゃないかな」
「うっ……う、ん」
新人だと勘違いしていたけど、優秀な魔法使いらしい。
それなら、気づいてもおかしくはないか。
「俺…………こわ、…………かった……?」
「私には感じられないけど、強い魔法使いほど、相手の魔力を感じ取る力が強いらしいわよ。だから、今まで感じたことがないロイルの強大な魔力にビビっちゃったんじゃないかしら」
「それ、は…………わるい……こと…………し、た」
「まあ、過ぎたことはしょうがないわ。あながち、ロイルが悪いわけでもないし。あまり気にしないことね」
「う、ん」
「それと、なんで彼女は悔しい顔をして去って行ったと思う?」
「……え、…………っと……」
俺が「弟子を取るにはまだ早い」と伝えると、サンディも納得してくれたが、その顔はなぜか悔しそうだった。
「彼女は自分が実力不足で、弟子入りするにはまだまだだって言われたと思ったのよ」
「……えっ…………?」
そんな誤解をしていたのか……。
本当に彼女には悪いことをした。
トップ冒険者に対して、かなり失礼な態度をとってしまった。
今度会ったらちゃんと謝ろう。
「じゃ、あ……サンディ……コスプレ……じゃ、ない?」
「ふふっ。そう思ったの?」
「う、ん」
「あははははっ。やっぱ、ロイル面白いっ! サイコーよっ!」
ディズは腹を抱えて笑っている。
「うっ…………」
「ごめんごめん。知らないとわからないかもねっ。彼女の装備はどれも特級品。私の装備に負けず劣らずよ。決して、コスプレしてるわけじゃないわ」
伯爵資金の半分に値する装備。
俺はそれをわからず、物語の大魔法使いに憧れたコスプレだと思っていた。
恥ずかしい……。
「まあ、今度あったら、ちゃんと話してみましょ。悪い子じゃなさそうだし」
「うっ……う、ん」
いや、それにしても、ディズはよくもここまで人の気持を理解できるものだ。
俺も練習をつめば、ディズみたくなれるんだろうか……。
そうこうしているうちに、エストの森から戻った五人組の冒険者がギルドに駆け込んできた。
先頭の男にギルド職員が話しかける。
「どうしました?」
「そっ、それが…………オークが、消えた」
「はいっ?」
「原因はわからないんだが、突然、オークが消失したんだ」
「どういうことですか?」
第一報を告げた冒険者の切迫した様子とは対照的に、男は困惑した様子だった。
他の四人も同じ表情を浮かべている。
その困惑は職員にも伝わったようだが、職員はあくまでも冷静に聴取を行おうとしている。
「理由はわからない。ただ、いきなり気配がなくなったんだ。探知魔道具で調べても、オークの反応はなかった」
「魔道具の故障では?」
「いや、3台で試したが、どれも同じ結果だった」
「そうですか……」
職員は顎に手を当て、どうしたものかと考え込んでいるみたいだ。
「それと――」
「なんでしょう?」
「森のあちこちで木々が折れ、何箇所も地面が抉られていたんだ」
「どういうことでしょう?」
「わからない……ほんとうになにもわからないんだ…………」
「そうですか。わかりました。後はこちらに任せて下さい」
それからしばらく――今後どうするかで、ギルド職員は大騒ぎだった。
次回――『待望のダンジョン』
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本日『貸した魔力は【リボ払い】で強制徴収』が完結しました。
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