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148 ロイルの身体の謎

一日遅れてしまいましたm(_ _)m


「ただいまー」

「ただいまですっ!」


 夕方、二人が帰ってきた。


「お帰り」

「魔銃、分かりました?」

「うっ、うん」


 二人には今日一日、魔銃の解析をすると伝えてあった

 サンディは期待の視線を向けてくるが、俺はお茶を濁すことしかできない。

 実は、ファンレターの返事を考えていただけで一日が過ぎてしまった……とはとても言えない。

 だって、生まれて初めてのことだったんだから、しょうがないじゃないか!

 三十過ぎのオッサンがそんなことをするなんて恥ずかしすぎて、とても人には言えない。

 だけど、ファンレターをくれた彼女たちの真っ直ぐな気持ちに応えようと頑張って、一文書いては消し、それを繰り返していたら、いつの間にか日が傾いていた。


「ま、まあね、魔銃は……もう、ちょっと……かかる」

「じゃあ、私も協力しますね」

「う、うん。それより……二人は?」


 俺の問いかけに二人は顔を見合わせ、


「ナイショだよ」「ナイショです!」


 なにか考えがありそうな笑顔を返す。

 とても気になるが、それ以上は追求できなかった。

 少し、寂しい……。


「ロイルもお腹空いたでしょ。ご飯にしよ?」

「う、ん」


 ――夕食も終わり、三人で作戦会議だ。


 これまではリハビリも兼ねて、のんびりダンジョンにトライしていたが、明日からはいよいよ本格的に攻略する。

 まずは第7階層から再開しようとなったのだが――。


「ねえ、ロイルが動けないっての思い違いじゃない?」


 ディズが質問してきた。


「どういうこと?」

「今、ロイルの魔力はほとんどないよね?」

「うん」

「以前みたいに大量の魔力を貯められなくなったんだよね?」

「はい、師匠の魔力はオババさんから貰った腕輪に吸収されてます」


 先日、オババから聞いた話を思い出す。

 なんでも、バロル戦の後遺症で俺の体内にある魔力を溜める器官が壊れたらしい。

 それで、大量の魔力は垂れ流し状態で身体に吸収されている。

 この状況は非常に危険で、このままでは死んでしまう。

 そこで、魔力を吸収してくれる遺物アーティファクトの腕輪を装着することで、とりあえずは危機を脱したわけだ。


「だったら、今は身体能力は上がってるんじゃない?」

「ええ、一般的に魔力と身体能力の間には負の相関があると言われてますね。例外はありますが」

「負の相関?」

「はい。一方が高ければもう一方は低くなるってことです」

「ああ、前、ディズが言ってた」


 以前、魔力測定をしたときにディズから聞いた。

 例外もあるが、魔力に秀でるか、身体能力が優れている――といったように、どちらかに傾いているのが普通だそうだ。


「うん。ロイルは規格外の魔力を持っていたせいで、身体能力はからっきしだったんだよね」


 武器の扱いがてんでダメだったのは、規格外の魔力のせいだ。

 教えてもらうまでは、自分の無能さに劣等感があったが、規格外の魔力の代償だと知って、その気持ちはなくなった。

 そのことを思い出し――


「うん。あっ……そういう、こと」


 ディズの言いたいことが理解できた。


「たしかに、今の師匠なら身体能力は飛躍的に向上しててもおかしくないです」

「でも……」


 三人でダンジョンに潜るようになっても、残念ながら俺の身体はポンコツのままだった。

 あいかわらず、思い通りに身体が動かない。

 そこで、まとも動けない俺でも戦える作戦を考え、獣化する戦術が生まれたのだ。


 プランA――猪に化しての突進攻撃。

 プランU――熊に化しての鉄壁防御。


 それが今の俺にできる精一杯のこと――だと思っていた。


「そう。そこが思い違いなんだよ」

「どういうことですか?」

「ロイルはなんか気づかない? バロル戦以前と以後の違い?」

「言われてみれば……なんか……違う、かも」


 今までは意識していなかったが、ディズに言われて、どこか違いがあるような気もしてきた。

 上手く言葉にできないけど……。


「もし、ロイルの身体能力が上がっていたとしても、上手く身体を動かせなくても当然なんだよね」

「あっ……」


 もしかして……俺はひとつの可能性に思い至った!


「ロイルは気づいたかな? サンディは?」

「えーと……私も身体能力はからっきしで。よく分からないです」


 サンディは首をかしげる。

 彼女も俺ほどではないが、魔力特化で身体能力は低い。

 それゆえに、気づけないのだろう。

 そんな彼女に向かって、ディズが説明する。


「じゃあ、サンディにも分かりやすいように例えてみよう。たとえば、駆け出しの魔法使いが急に膨大な魔力を得たとして、いきなり強力な魔法が打てる?」

「打てないです……あっ!」

「そう、そういうこと」


 サンディは両手をパンと合わせ、目を見開く。

 俺と同じ結論にたどり着いたようだ。


「力が強ければ……強いほど……それをコントロールする、のは……難しい」

「ロイルの言う通り」


 魔力が下がり、身体能力が向上した。

 その変化に俺が対応できていないだけだ。


「しかも、ロイルは十五年間ずっとフルプレートアーマーをつけた上、ほとんど身体を動かさなかった」

「だったら、上手くいかないのも当然ですね」


 サンディはうんうんと頷く。


「きっと、身体能力がないんじゃなくて、身体能力を使いこなせてないだけよ」

「そう、かも……」

「まあ、ダメ元で試してみようよ」

「師匠なら絶対に大丈夫ですよっ!」

「うん、やって、みる」

「師匠の規格外魔法もカッコイイですけど、きっと物理戦闘もカッコイイです!」


 ひょっとすると、俺は規格外の身体能力を手に入れたのかも……。

 漆黒のローブで物理無双する俺……うん、かっこいい!


 ああ、早く明日にならないかな。

 楽しみで、その晩はなかなか寝つけなかった。


書籍化作業や年度の変わり目で忙しく、しばらく投稿できません。

次回まで間が空きますが、お待ちいただければ幸いですm(_ _)m


ちなみに、書籍版ですが、リメイクと言っていいほど、web版とは別作品になってます。そして、2巻からは別ストーリーになります。

web版をお読みになっている皆様にも、楽しんでいただけるよう仕上げている最中です。

書籍発売はもうしばらく先の話になりますが、こちらもお待ちいただければ嬉しいですm(_ _)m



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