144 魔道具の正体
「師匠、マジックアイテムには三種類あるのはご存じですか?」
「遺物、魔具、魔道具かな?」
「その通りです。開発された順番も、師匠がおっしゃった通りです」
「遺物は古代文明」
魔法オババからもらった金の腕輪が遺物だ。
何らかの理由で滅んでしまった古代文明時代に作られたもので、今のところ再現に成功した例はない。
「魔具は、遺物を再現しようという試みの中、生まれたマジックアイテムです」
サンディの杖や俺と彼女のお揃い黒ローブなどは魔具だ。
「魔具が安全なのは、魔石や本人の魔力で動くからです。だから、出力が安定しますし、過剰な魔力を流すと壊れるようになってます」
「う、ん。 それは……知ってる」
バロル戦前に森で訓練したときのことを思い出す。
あのとき、強大すぎる魔力の出力を抑えようとして、魔具に頼った。
魔力封じの腕輪という魔具で一定以上の魔力は吸収する機能がある。
だが、魔法を使ってみると、俺の魔力が大きすぎたせいで、腕輪は一発で壊れてしまった。
騎士時代の年収に匹敵する値段が、たったの一回で吹っ飛んでしまったのだ。
「そして、最近開発されたのが――魔道具です」
「ああ」
タブレットなど生活を向上させてくれた反面、至るところでリストラが行われることになった。
「製法は一部の者しか知らされておらず、動力であるバテリの供給はクレメンテ侯爵が独占してます」
クレメンテ侯爵はバテリと魔道具で巨万の富を築いたという。
「魔道具とバテリ、大賢者様を中心にどちらも研究されていますが、いまだその正体は分かっておりません」
大賢者様――サンディの元師匠――は魔道具反対派だ。
仕組みが完全に分かっておらず、危険性を訴えている。
とくに、武器や軍事利用には強い反対声明を発している。
実際、前日のバロル戦でそれは証明されたし、今回も危なかった。
「師匠。驚いてください!」
「ん?」
ワクワクが抑えられない様子でサンディが詰め寄る。
近い。近いよ。
「魔道具が解析できなかった理由が分かりました」
「ホント! 凄い!」
それは間違いなく歴史的な快挙だ。
明らかに弟子の方が師匠より優秀だ。
「これで魔道具を解析し、改造ができるようになりましたっ!」
「さすがは、サンディ」
「いえいえ、スゴいのは師匠ですよ!」
「はっ!?」
「私は思いついただけです。元の制作者以外で実行できるのは、世界で師匠だけですよっ!」
「えっ、いやいや、俺できないよ」
さっき魔銃をいじってみた。
故障した理由は分かったが、それ以上のことはなにも分かっていない。
「大丈夫です。私が教えますから」
「ありがと、……助かるよ」
「でも――」
「うん……」
話に夢中だったが、気づけばダンジョンの出口にたどり着いていた。
「続きは後にしますね」
「うん、お願い」
もどかしい。
早く、その先を聞きたい。
でも、まずは――ギルドに報告だ。
俺たちは少年たちパーティーと一緒に冒険者ギルドに向かう。
「俺とサンディ……報告、する。後……」
「そっちのパーティーからも一人必要ね。誰か?」
ディズの問いかけに、ふたつの手が挙がる。
「はいっ! ここは私がっ!」
「いや、リーダーの俺だろ」
紅一点の女の子とリーダーの少年だ。
「だって、魔銃の話を持ちかけられたのは私だよ?」
「でも、購入を決めたのは俺だ」
どちらも譲る気配はない。
「じゃあ、じゃんけんで」
「いや、他の勝負にしよう」
「あら、逃げるの?」
「ちっ、ちげえよ」
二人は判断を仰ぐように俺を見る。
「じゃあ、じゃんけん、で」
俺の判断に女の子は喜び、少年は顔をしかめる。
じゃんけん苦手なのかな?
「よーし」
「負けないぞ」
「「じゃんけーん、ぽい」」
「グー」「チョキ」
「私の勝ちね」
「くそ~」
悔しがる少年をよそに、女の子は俺に話す。
「リコって言います。ロイルさん、ヨロシクお願いします」
「うん」
ぺこりと頭を下げる。
「じゃあ、キミたちは私と酒場ね」
「えっ!」「いいんですか?」「やった!」
「お姉さんの奢りだよ」
歓声が上がる。
リーダーの子は、さっきのことは忘れ大喜びだ。
むしろ、負けてよかったという表情をしてる。
酒場に向かうディズ一行と別れ、ギルドを目指す。
「こっちも、……いこう」
「はいっ!」
「リコちゃんヨロシクねっ!」
「こっちで、よかったの?」
「はい。どうしてもロイルさんと一緒がよかったんです」
「師匠、モテモテですね」
「うん」
「えへへへ」
カワイイ笑顔だ。
ディズやサンディのように絶世の美少女というわけではないが、素朴なあどけなさでいっぱいだ。
そのまぶしい笑顔はオッサンには、なかなか来るものがある。
だが、それを悟られないようにと――。
「勝てて、よかったね」
毅然とした態度で応える。
「リーダー、いつも最初にチョキ出すんです」
「知って、たんだ」
「はい。みんな知ってます」
「それで……」
勝ちを確信した上で、勝負を挑んだのか。
カワイイ顔して意外とやるな。
「でも、ナイショですよ」
「ああ、もちろん」
それから受付嬢のモカさんに取り次いでもらい、三人でギルマスの執務室に向かった。
俺たちが部屋に入るやいなや、ギルマスであるガラップの第一声は――。
「おいおい、まだ何日もたってないぞ。今度はどんな厄介ごとだ?」
思いっきり渋い顔で出迎えられた。
次回――『ガラップに魔道具報告』
2月8日更新です。




