141 第7階層攻略
予約投稿忘れてましたm(_ _)m
サンディとの楽しい休日を過ごした翌日。
今日からまた3人でダンジョンに潜る日々――が向かうのは第7階層。
Bランク向けと言われるだけあって、第6階層までとは比較にならない強モンスターが現れる。
とはいえ、俺たち3人戦力なら、まだまだ余裕の相手だ。
とくに、サンディが強い魔法を放てば、単発で一網打尽だ。
だけど、俺たちは焦らないことにした。
力押しで進むのではなく、個々の戦闘スキルと連携を高めるために、ここで修行するつもりだ。
「来ます。ブラッディウルフです」
サンディの魔力探知網にモンスターが引っかかる。
ブラッディウルフは体長1メートルの狼型モンスター。
赤黒い体毛が特徴的だ。
ブラッディウルフはそこまで強いモンスターではない。
脅威なのはその数と連携攻撃だ。
しかし――逆に言えば、練習相手にはちょうどいい。
十数体の群れ。
その後ろにはひと回り大きく、深紅の毛並みの狼。
群れを率いるリーダーブラッディウルフだ。
奴らも俺たちに気がつき、リーダーの指揮のもと、距離をとったまま俺たちを取り囲む。
奴らは包囲を保ったまま、波状攻撃を仕掛けてくる。
どこから来るか分からず、360度、警戒しなければならない。
「プランU」
「おっけー」
「わかりました!」
第6階層ボスのヴォイド・ナイト戦では、二人が牽制役を務め、猪に獣化した俺の高火力スキルで倒した。
だが、そのやり方は多数の相手には向かない。
俺の少ない魔力がすぐに尽きてしまうからだ。
だから、別の戦闘スタイルが必要。
それがプランUだ――。
リーダーがひと声うなると、それを合図に奴らの攻撃が始まった。
それに合わせて、俺も魔法を発動させる。
『――【獣化:熊】』
獣化魔法を唱えると、俺は熊へと姿を変える。
それと同時に、着ていた漆黒のローブが毛皮へと変化し、俺の身体を包み込む。
熊への獣化は『紅の牙』のオルソの姿を見ていたおかげで、猪のときよりもやりやすかった。
猪よりも大きな身体の熊に変身したのには理由がある。
俺は両手を広げ、サンディの身体を抱きしめ、包み込む。
「きゃっ」とサンディが可愛い声を上げる。
前回の猪がプランAならば、このプランUは熊だ。
猪が攻撃特化なら、熊は守備特化。
堅く強靱な身体は俺だけでなく、抱きしめたサンディも守ることが可能だ。
ディズが俺の前に立ち、腰を落として備える。
続く俺の魔法は――。
『――【地獄の咆哮】』
腹の底から響く絶叫――挑発スキルだ。
ブラッディウルフの怒りを呼び起こし、奴らは俺を攻撃対象と見なす。
頭に血が上った獣の動きは単調だ。
本来の戦略である波状攻撃を忘れ、一斉に飛びかかってくる。
だが、俺の鉄壁の守りでノーダメージだ。
一度、敵の攻勢が収まったところで――。
『――聖気供給』
残り少ない魔力を聖気に変換し、ディズに供給する。
「ありがと、いくよっ」
聖気に包まれ、ディズの動きが格段に良くなる。
次々とブラッディウルフを殴り倒し、包囲網を抜け、リーダーめがけて走り出す。
『――【爆裂拳打】』
リーダーの頭を重い拳で殴りつける。
――ギャアア。
たった一撃でリーダーは絶命した。
リーダーは群れを指揮するだけでなく、他のウルフを強化するバフ効果を持っている。
その効果が切れ、弱体化したブラッディウルフはもう怖くない。
『――ファイア・アロー』
『――ファイア・アロー』
『――ファイア・アロー』
『――ファイア・アロー』
『――ファイア・アロー』
『――ファイア・アロー』
サンディは炎の矢を連打。
『――聖華乱舞』
ディズは聖気をまとった身体で縦横無尽に暴れる。
――あっという間に全滅させた。
完璧な戦闘結果に満足し、勝利の余韻に浸っていると――
「しっ、師匠、そろそろ……」
「あっ、ごめん」
慌てて獣化を解除し、サンディを解放する。
戦いに必要だとはいえ、俺はサンディを抱きしめていた。
しかも、ちょっと身体に力が入っていたので、彼女は苦しかったかもしれない。
「だいじょ、ぶ? 顔が赤い、よ」
「へっ、平気ですぅ……これは、その……」
「ん?」
サンディは顔を赤らめたまま、うつむいてしまった。
悪いことしたかな?
次はもっと加減しないとな……。
それはともあれ――。
「おっけー。楽勝!」
「プランU、大成功でしたね」
「うん、俺たち、強い」
戦闘終了を確認して、俺は魔力回復ポーションを飲み干す。
今はまだ、これくらいで魔力が空っぽになる。
バッチリだ――。
単体の強いモンスターならプランA。
多数のモンスター相手ならプランU。
この使い分けは相当強い。
とはいえ、まだまだ、改善の余地はあるし、他の戦術も試してみたい。
俺たちはもっともっと強くなる!
「じゃ、あ……次も」
「うん」とディズが拳をぶつけて、やる気アピール。
「はいですっ!」とサンディも手を挙げる。
さあ、次の相手はどいつだ?
そんな感じで一日中、狩りを続け――。
「じゃあ、帰ろう」
「そだね。お疲れー」
「お疲れ様でした」
二人とも全然疲れていないが、俺は疲れ切っていた。
体力にはまだ余裕がある。
だけど、頭を使う戦闘を繰り返したので、精神疲労が限界だ。
俺たちは街へと帰還する。
その途中――問題が起こったのは第五層だった。




