表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

132/148

132 再始動

 お待たせしました。

 第2部スタートです!


「まずはお疲れさん。みんな無事で安心したぜ」


 メルキの街、冒険者ギルドの支部長室。

 その主であるギルドマスター、ガラップは疲れた顔で告げる。


 魔眼のバロルとの激戦を終え、この街に帰還して数日。

 そろそろ冒険者活動を再開しようとギルドを訪れたところ、俺たちは呼び出された。


 ガラップと向き合い、俺たち三人は座る。

 左から、サンディ、ロイル、ディズの順だ。


 そう、俺が真ん中に座っているのだ。

 なぜかというと――。


 ――昨日のことだ。


「じゃあ、これからはサンディを加えて三人ね」

「はいっ、よろしくお願いしますっ。これからは私も『アルテラ・ヴィタ』の一員として頑張っていきますっ!」


 ――アルテラ・ヴィタ。


 俺とディズで立ち上げたパーティーの名だ。

 新しく人生をやり直すという意味の古代語からとった名前。


「それで、パーティーリーダーだけど……」


 今までは二人きりだったので、どっちがリーダーか決めていなかった。

 まあ、大体はディズが方針を考え、俺はそれに従っていただけだ。


 そういうことだから、まあ、ディズがリーダーを務めるのが妥当だろう――。


「もちろん、ロイルねっ!」

「はいっ、私も師匠がいいと思いますっ!」

「えっ……」

「はーい、多数決で決定で~す。リーダーはロイルで~す」

「ぱちぱちぱちぱち」


 ――といった流れで、俺が意見を述べる隙もなく決まってしまった。


 微妙な顔をしている俺にディズが言う。


「ロイルにとっていい経験になるよ。荒療治かもしれないけど、絶対にやっとくべきだよ」

「…………ああ」


 そう言われて、ディズの意図を理解した。

 俺のためだ。俺のコミュ障を克服するためだ。


「大丈夫よ。私もサンディもサポートするから」

「そうですよっ!」

「う、ん」


 ディズの満面の笑み。

 サンディのキラキラした目。

 俺は頷いた。


 ――というわけで俺はリーダーとして真ん中に座っている。


「おっ、ロイルがリーダーか。よろしく頼むぜ」


 ガラップが差し出してきた手を握る。


「それで、早速だが、例の件についてだ。ペルスと『紅の牙』から大体は聞いているが……」


 ペルスは騎士団を率いていた女性。

 『紅の牙』はヴォルクをリーダーとする四人の獣人パーティー。

 ともにサラクン救援に向かった仲間だ。


「お前たちが倒したんだってな。古き神々のひとり、魔眼のバロルをな」

「うむ」


 やはり、話は伝わっていた。

 ペルスさんやガラップには口止めせず、「訊かれたら正直に伝えていい」と言ってあった。


 こちらをうかがうような視線を向けるガラップ。

 以前の俺だったら、動揺して目をそらしてしまっただろうが、昨日ディズ相手に散々練習した。

 俺はじっとこらえて合わせた目を動かさない。


「ほう」


 ガラップは満足そうに頷く。

 どうやら、練習の成果があったようだ。


「まあ、安心しろ。詳しく詮索したりしねえから」

「うむ」

「それで、どうして欲しいんだ? とくに、そっちのお嬢ちゃんは?」


 ガラップはディズを見る。

 ディズの方を向くと、俺を見ている。

 それを確認して、俺は小さく頷いた。

 リーダーである俺に許可を取ったというポーズだ。

 ディズが口を開く。


「ご想像通り、私は教会関係者よ」


 その言葉を聞いても、ガラップは眉ひとつ動かさない。


「どうする? 隠すか?」

「ううん。どうせ時間の問題よ。ギルド本部にも、教会にも伝えていいよ」

「いいんだな?」

「う、む……構わ、ん」

「そうか、助かる」


 ガラップが俺に最終確認をし、頬を緩めた。


 俺は感心する。

 話の流れがディズの想定通りに進んでいくからだ。

 だから、俺は練習通りに振る舞えばいいだけ。

 これなら、俺のコミュ力でもなんとかなる。


「じゃあ、この話はおしまいだ。それで今回の報酬だが――」


 ガラップはニヤリと口元を歪める。

 いたずらっぽい笑みだ。


「二人とも今日からAランクだ」


 最初の話ではサラクン救援をこなせばBランクに昇格という話だった。

 それが一気に2ランクも昇格。

 通常ではありえないことだが……。


「ほう、驚かないのか?」


 ディズはもちろん、俺も驚いていなかった。

 そのことにガラップは少し残念そうだ。


 驚いていないのには理由がある。

 これもまた、ディズの想定内だったから。


 ともあれ、これで『紅の牙』と同じAランク。

 トップ冒険者の仲間入りだ。

 ちなみに、この街一番の魔法職であるサンディはもとからAランクだ。


「ひとつ……伝え、る……こと……ある」

「ほう?」

「今の……俺たち……弱く……なってる」


 Aランクになると、よっぽどの理由がないとギルドからの指名依頼を断れない。

 ガラップは俺たちに厄介な仕事を押し付けたいのだ。


 だが、その思惑に応えることはできない。

 それをちゃんと伝えておかねばならない。


「それはあの戦いの後遺症か?」

「うむ」


 俺はバロル戦でムチャな魔力の使い方をした。

 そのせいで、今の俺は魔力をまともに使えない。


 それにディズも弱体化している。

 長年溜め込んだ聖気をあの戦いで使い果たした。

 今は聖気を操れず、素の戦闘能力で戦うことしかできない。


 今までと同じように戦えるのはサンディだけだ。


「……そうか」


 ガラップは頭をきむしる。


「まあ、しゃあねえな。それで、どうすんだ? この街に留まってくれるのか? それとも、どっか行くのか?」


 その問いに対する答えはすでに決まっている。

 昨日話し合って、決めたのだ。


「それは――」

 第2部は毎週水曜日19:00更新です。


 次回――『三人での話し合い』

 11月9日更新です。


楽しんでいただけましたら、ブックマーク、評価★★★★★お願いしますm(_ _)m

本作品を一人でも多くの方に読んで頂きたいですので、ご協力いただければ幸いですm(_ _)m


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ