129 SS サンディのお買い物
後書きに発表があります!
――サンディがロイルと出会った日。
ロイルに弟子入りを拒まれたサンディだったが、まったく諦めていなかった。
「絶対に弟子にしてもらいますっ!」
冒険者ギルドを飛び出したサンディはどうしたらいいか考える。
まずは、ロイルに言われた通り「未熟さを克服する」こと。
ロイルとしては「自分が弟子をとるなんてまだ早すぎる」という意図だったのだが、サンディは完全に誤解していた。
そして、次に考えたのは、ロイルへのプレゼントだ。
下心がないといったら嘘になるが、単純にサンディの望みでもあった。
あれだけの魔法の使い手なのに、身につけているのは金属鎧。
世を忍ぶために偽装しているのだろうが、ロイルに相応しいのは魔術師のローブ。それも一級品。
サンディはロイルのローブ姿を見てみたいのだ。
それも、自分とお揃いの……。
その姿を想像して、鼓動が早くなる。
「絶対に師匠には似合いますよ」
こぼれそうになるヨダレを拭い、サンディはとある店に向かった。
表通りではなく、裏通りに構えている店だ。
知る人ぞ知る魔道具店で、一見様はお断り。店主が認めた者でなければ相手にされない。
店のドアを開けると、老婆がカウンターに座り魔道具をいじっていた。
店内は狭く、暗い。
二人だけでもういっぱいだ。
「おや、いらっしゃい」
作業していた老婆が顔を上げ、孫を見るような視線を向ける。
「オババさん、こんにちは」
「今日はなんだい? ポーションかい?」
「ポーションも欲しいんですが、作成依頼です」
「ほう、なんか無茶したのかい?」
サンディの黒ローブも魔法の杖もこの店で作ったものだ。
「いえ、私のじゃないんです」
「こりゃ、驚きだねえ。詳しく聞こうかい?」
「私とお揃いのローブを作ってもらいたいんです」
金色の派手な刺繍が入った漆黒のローブ。
オババ特製の超一級品だ。
「ほうほう、面白そうじゃね。男でもできたのかい?」
その言葉にサンディは顔を赤らめる。
「ありゃ、図星かい。やめときな」
「えっ、なんでですか」
「大切な装備品を女に強請《ねだ》るなんてロクな男じゃないよ」
「ちっ、違いますよ~」
サンディは慌てて否定する。
「私が勝手にやってることです」
「へえ、こりゃまた」
「師匠になってもらいたい人がいるんです」
「お前さんの師匠はあの小僧じゃろう?」
小僧――老婆がそう呼ぶのは大賢者のことだ。
この国一番の魔術師でサンデイの師匠。
だが、老婆にとっては弟子みたいなもので、今でも子供扱いだ。
「師匠を超える人なんですよ」
「ほう」
老婆は考えを巡らす。
サンディが魔法がらみで嘘や冗談を言わないことを知っている。
そこで、老婆は思い至る。
「もしかして、さっきの魔力の主かい?」
「はい。サスの森で起こったスタンピードをこの街から放った魔法一発で全滅させたんです」
「やはりかいな。私の勘違いかと思ったんじゃが、本当じゃったか」
サンディは頷く。
「数日前から不思議な魔力が流れてる気がしてたんじゃよ。巧妙に隠されていたから、わかりづらかったがの」
サンディですら、間近で感じなければ気づかないほどだった。
ロイルの魔力隠蔽はそれほど優秀だった。
というのも、門番時代に魔力を放出させたら散々怒られたので、必死になって魔力を抑える練習をして習得したのだ。
「たしかに、それほどの者なら、お前さんの師匠が務まるかもしれんの」
「はいっ、凄い人なんですっ!」
「でも、それほどの使い手なら、相応の装備を持っているんじゃないかね?」
「いえ、それが……」
サンディは金属鎧のことを説明する。
「ふむ。ますますわからん男じゃのう」
老婆は少し考え込む。
「まあ、よかろう。お前さんの頼みだ。引き受けるよ」
「ありがとうございますっ!」
「それでサイズはどれくらいだい?」
「え~と、身長は私よりもずっと高くて、身体はガッシリしてます」
そう言いながら、サンディは短い詠唱とともに杖を軽く振る。
すると、ぼんやりとした人型が現れる、ロイルの体型を模したものだ。
「なんじゃ、この大男は。鬼族かい?」
「いえ、普通の人族です」
「こんな巨体だったら、武器を持った方がよかろうに。なんでまた魔法使いを選んだのかいな」
老婆もサンディも不思議に思う。
ロイルの武器の扱いが壊滅的なことを知らないのだから、当然の反応だろう。
「まあ、よかろう。面白そうな仕事じゃ、急ぎで仕立てて見せるよ」
「ホントですかっ! ありがとうございますっ!」
サンディは深く頭を下げた――。
――数日後。サラクン救助に向かう前日。
老婆の店を訪れたサンディは、完成品のローブを受け取る。
「間に合ってよかったですっ!」
「なんかあるのかい?」
「それが明日――」
老婆にサラクンの異変を伝える。
「なんか嫌な予感がするよ。ちゃんと無事に帰ってくるんだよ」
「大丈夫ですっ! だって、師匠も一緒ですからっ!」
「お前さんがそこまで信頼を寄せる男。今度連れてくるんだよ」
「はいっ! 必ず連れてきますっ!」
サンディは仕上がったばかりのローブを大切に胸に抱えて、老婆の店を後にした。
「師匠、着てくれるかなあ? ううん、絶対に着てもらうんだっ!」
ロイルのローブ姿を頭に浮かべると、明日への不安は消えていった――。
【ご報告】
この度、本作品が「第3回HJ小説大賞前期小説家になろう部門」で受賞いたしました。
それにともない、書籍化決定です!
ご支援いただきました皆様、ありがとうございましたm(_ _)m
今後とも連載を続けてまいりますので、引き続きお付き合いいただけたら幸いです。
書籍化に関して情報公開できるようになりました、活動報告(小説家になろう)、近況ノート(カクヨム)、twitterでお伝えします。
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【今後について】
この後、第1部キャラ紹介、第1部あらすじをはさんでから、第2部は11月2日からスタートです。
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