121 サラクン17:ギガ・ヒダント砲1
おまたせしましたm(_ _)m
今日と明日、4話ずつ投稿して第一部完結です。
最終話の投稿は明日の20時頃を予定しています。
まとめて読みたい方はそれまでお待ちくださいm(_ _)m
――ロイルたちが巨大なバロルと戦っている頃。
街道沿いでは騎士たちが変異オーガと激戦を繰り広げていた。
バロルが放出した魔力波によって一時は浮足立ったサラクン騎士たちだったが、ペルスの鼓舞とディン騎士団の奮闘により戦いは優勢に進んでいった。
オーガ三百。
サラクン騎士八十。
そして、ディン騎士十七。
順調に数を減らすオーガ。
そこに知らせが届いた。
待ちに待った吉報だ。
「来たぞっ! ギガ・ヒダント砲が届いたっ!」
サラクンからやってきたのは百台にも及ぶ馬車の列。
サラクンの最終兵器――ギガ・ヒダント砲が、ようやく到着した。
湧き上がる歓声。
サラクン騎士団の士気は一気に高まった。
「ギガ・ヒダント砲が完成すれば、俺たちの勝ちだッ! それまで死ぬ気で粘れッ」
ギガ・ヒダント砲はサラクンの街、最後の切り札だ。
街が危機に陥った際に、戦局をひっくり返しうる力を持つ兵器。
ヒダント率いる魔技師たちがすべてを注ぎこんだ叡智の結晶。
サラクンの街中央、街で一番の高さを誇る物見塔の最上部に設置された固定砲台。
どんなスタンピードでも一撃で壊滅できる――それが魔技師団首席魔導師であり、生みの親であるヒダントの謳い文句だ。
あまりにも巨大なギガ・ヒダント砲はそのままでは持ち運びはおろか、物見塔から下ろすこともできない。
ここまで運ぶには、一度分解してパーツごとに分けるしかなかった。
昨日、騎士団長フェニルからの要請を受け、ヒダントは魔技師団にギガ・ヒダント砲の移送を命じた――朝までに解体し、移送できるようにせよ。
無茶苦茶な命令だ。
物見塔に設置する前に、何度か解体・組み立てテストが行われたが、その際には三日を要した。
それをひと晩で成し遂げろ――正気とは思えない。
命令を受けた魔技師の顔面は一瞬にして蒼白になった。
ヒダントの無茶振りには慣れている。
それでも、今回のは度を超えている。
だが、命令に従うしかなかった。
どんなデタラメなものであれ、ヒダントが命じた以上、達成するしかない。
さもなくば、首が飛ぶ。
大慌てで街に残っていた魔技師と騎士を総動員。
夜を徹して解体作業が行われた。
そして、なんとかギリギリ間に合った。
「攻め急ぐ必要はないッ! 守りを固めて時間を稼げッ!」
勝ち気になり積極的になった騎士たちを諌める声が戦場に響く。
士気が上がったのはいいが、調子づいた兵はムチャな攻撃に出がちだ。
今はその必要はない。ギガ・ヒダント砲の完成まで持ちこたえればいい場面だ。
騎士たちもそれを悟り、防御態勢に移行する。
対するオーガは攻勢に出た。
本能的になにかを察したのか、死にもの狂いで騎士に襲いかかる。
両者入り乱れての乱戦はいっそう激しくなった。
そんな中、ディン騎士団派遣部隊長のペルスは心動かすこともなく、淡々とオーガの首を斬り落とす。
ふわりと軽やかに着地した後、ちらりと後ろを振り返る。
そこに副官が話しかけてきた。
「隊長。見ましたか、あの列」
「ああ。ご大層なことだ」
「戦局を一発でひっくり返す戦略兵器。そんなものが本当にあるなら、私らはお払い箱ですな」
「思ってもないことを言うな」
サラクンの騎士たちと違って、二人はギガ・ヒダント砲を当てにしていなかった。
「あの馬車に騎士を詰め込んで来たら、楽勝なんですがね」
「アレのために騎士を大量解雇したらしいからな」
「正気なんですかね?」
「知らん」
「それにアレの性能が喧伝通りだとして、この状況で撃てますか?」
「まともな指揮官だったら撃たないな」
そんなことをすればどうなるか――火を見るより明らかだ。
「おしゃべりはここまでだな」
「ええ」
新たにオーガが襲ってきたので、二人は会話を中断する。
ペレスの銀剣が光を浴びて輝いた――。
次回――『サラクン18:ギガ・ヒダント砲2』




