104 魔眼のバロル13:聖女、舞う
102話に間違って103話分を投稿していたので修正しました。
混乱させてしまって申し訳ないですm(_ _)m
「さあ、滅びなさい――」
ディズはバロルに向かって高らかに宣言した。
『――聖槍アンティオキア』
ディズが唱えると、その手に銀の槍が顕現する。
長い槍だ。俺の背丈を超えている。
穂先は鋭く二つに尖っている。
その神々しい輝きは崇高である。
ディズは調子を確かめるように、アンティオキアをくるりと一回転させ、握り直す。
「古キ異物ヨ、滅スルッ――」
アンティオキアを突きつけられたバロルの顔が歪む。
「異神ヲ奉ズル者カ」
「あなたたちの時代は終わったわ。おとなしく眠りにつきなさい」
「調和ヲ乱シ、世界ヲ汚ス、小サキ者タチ――排除スル」
途端、赤い眼から光線が発射される。
ディズはその翼で急上昇して回避。
そのままバロルの目線の高さまで上昇した。
「さあ、こっちよ。当てられるかしら?」
「小賢シイ」
ディズに向かって、何度も光線が発射される。
ディズは翼をはためかせ、ひらりひらりと宙を舞い、光線をかいくぐる。
「遅いね」
光線をかわしながら、バロルの顔に接近。
額の眼を突き刺さんとアンティオキアを振るうが、バロルの掌に遮られた。
アンティオキアは掌に深々と刺さる。
「悪シキ者ドモ、許サヌ――滅ビヨ」
反対の手が振り払われるが、ディズはアンティオキアを引き抜き、飛び上がって回避する。
そこに光線が放たれるが、届く前にディズは移動していた。
バロルを相手に、華麗に踊るディズの姿。
その動きに瞳が吸い込まれる。
いつまでも見ていたいところだが――俺には俺の仕事がある。
多分、大丈夫だと確信はあるが、100パーセントではない。
上手く行ってくれよ――。
『――【世界を覆う見えざる手】』
バロルの邪気は異質だ。
初めて感じるおぞましい力。
それでも――俺ならなんとかできるはず。
いや、なんとかしてみせるッ!
俺は全神経を集中させ、バロルの邪気を分析する。
今攻撃されたら、死ぬかもしれない。
それでも、ディズを信じて、自分の仕事に全力を尽くす。
昨日の『紅の牙』との模擬戦。
それに、魔動車での移動中のこねこね講座。
俺は初めて他人の魔力をちゃんと分析する機会を得た。
そこで俺は学んだ。
魔力とは各人固有のものであり、微妙に違うものだと。
それゆえ、そのままでは他人と魔力のやり取りはできない。
相手の魔力に合わせて調整する必要があるのだ。
実際、極大魔法を撃ったときも、俺は自分の魔力をサンディが扱える魔力に変換してから供給した。
人間同士なら、多少は違うとはいえ、魔力の変換は容易だった。
バロルの邪気は我々人間の魔力とは大きな隔たりがある。
だが、それでも、まったく無関係だと感じなかった。
見知らぬ言語で書かれた書物を繙くように、バロルの邪気の流れに身を任せる。
戦いの音が遠ざかっていく――。
邪気は常人には毒となる。
俺は持ち前の魔力の高さで防げた。
しかし、自発的にそれを取り込むとなると――。
禍々しい力だ。
精神をヤスリにかけられて削られていく感覚。
脳のあちこちを絶え間なく針で突き刺される痛み。
自我がバラバラになってしまいそうだ。
目の前が暗くなり、膝を突く――。
暗黒の中で、暴流にさらされる剥きだしの魂。
抵抗できずに深淵へと引きずり込まれる。
意識が散り散りになり、暗闇にとらわれそうになったそのとき、一条の光が輝いた。
――聖気だ。ディズが発する神々しい聖気だ。
「ロイル、ロイル、ロイル――」
繰り返し呼びかけられるディズの声。
その声が俺に届き、俺は留まった。
バラバラだった意識がひとつに収束し――ひとつになる。
危なかった。
あと少し遅かったら、死んでいたかもしれない。
だが、間に合った。
ディズが救ってくれた。
「破ッ――」
俺も負けじと魔力を放ち、俺をとり込もうとしていた邪力を振り払う。
視界が晴れる。
宙を舞うディズの姿。
そして、遅れて聞こえる槍の音。
バロルの邪気。その全容が明らかとなった。
「よしっ、できた」
次回――『魔眼のバロル14:魔力変換』




