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私の飼い猫さんはさいきょーでした!  作者: おばた屋
2章 楽団と新たな邂逅
33/37

33話

遅れました(・・;)

「イイですねぇ~。誰もがワタシのサーカスの虜ですよぉ~!」


 道化の仮面で素顔を隠す団長の歓喜の声が響く一室から眼下に広がる楽団(サーカス)道化師(ヨクラートル)たちの(・レ・)遊技場(ルードゥス)』は目覚ましく進歩を遂げた。


「──団長、アンタにゃ感謝しているが……いったいどうやってあれほどの魔獣共を使役しているんだ?」

「あァーん? そ・れ・はァ~ワタシが天才だからですよ! 魔獣使いの(てんっ)(すゎい)!」


 それは(はた)から見れば事実その通りなのだろう。

 上級掃討者が幾人も徒党を組んで漸く討伐出来るかと言える大型の魔獣が、雁首揃えてこの道化師(クラウン)ひとりに使役されているのだから。


 そんな愉悦に浸る下卑た高笑いをする団長を、蔑んだ目で見つめる女性は、開幕の演目で中央にて踊っていたうちのひとりだった。

 蠱惑的で肌の大部分を露出させた衣装は、衆目を集めるためでもあり、七色の羽が揺れるフェザーヘッドバンドに、より扇情的に映すシースルーのフェイスベールに覆われている。


「ホラ。お前もいつまでもそんなとこにいないで、観客に得意の下品な躍りを魅せておいでなさいな」

「わ、私たち一族の伝統ある舞踊を下品だと! いくらアンタと言えど許せる言葉ではない! 取り消せ!!」

「だぁって、そうでしょう? ただ男に媚びを売るだけの売女(ばいた)が。(だぁれ)のオカゲで今があると思っていやがるんてすかネェ~」

「…………っ!?」


 そういった側面かあるのも事実で反論できず、悔しさを滲ませながらも黙る他なかった。


 今でこそ、大規模楽団(サーカス)も、元は北方の地を渡り歩くしがない移動民族(ジプシーキャラバン)の一族だった。

 独特の文化、伝統ある舞踊を見世物に、飼育する畜産を手に町から町を渡り歩き日々の糧を得る。そんな暮らしをしていた遊牧民でもあった彼女たち。


 特有の褐色の肌は妖魔との混血とされ、人の町には馴染めず迫害されてきた歴史を持つ。

 生きるため、一族存続のため、娼婦紛いなことも行ってきたのは一重に男子が生まれないことに起因している。


 現在、この女性が族長となってはいるものの、数年前に起こった魔物の襲撃に壊滅的な打撃を受けた。


 魔物の集団暴走(スタンピード)により命からがら生き延びたものの、牧畜の壊滅による飢饉(ききん)に一族は餓えを強いられた。

 しかし、町はそんな彼女たちを罵る。


──妖魔の血が祟りを起こした──


 そんな根も葉もない噂に石を投げられ、困窮の一途を辿る。


「ああ! そう言えばキミの娘、名前なんだっけ──そう、リコリッタ嬢! 帰ってきたのでしょう」

「それが何だ」

「演目は変更、お題目は『母子の睦まじい秘め事』! なんなら観客の一人も誘惑して娘とヤラせてやれば──」

「失礼する!!」


 女性は怒りを隠そうとせず、苛立ちを叩きつけるように扉を開け放ち出ていく。その後ろ姿に団長は仮面の下で何を思うか。


 そんな滅びを待つだけの一族の絶望を照らす光明を与えたのが、団長だった。

 伝統舞踊と畜産で得られる僅かな蓄えと違い、この男がもたらしたサーカスと言う娯楽に大金が舞い込むまでそう時間は掛からなかった。


 驚異となるはずの魔獣を意図も容易く操り、他者の命令すら聞かせることが可能な魔獣使い。


「……母様」

「──リコリッタか、おかえり」


 団長の部屋から出た先に、不安そうな表情をした娘が立っていた。多分、今の話を聞かれたのだろう。

 お義父上(ちちうえ)のもとへと送り出していたリコリッタが、ここへ戻ってくるのは数年振りだ。

 久しぶりの再開に黙って、少し伸びて高くなった頭を撫でる。


「気にするな。最近はいつもこうだ」


 確かに団長のおかげで我が一族の滅びが免れたことは間違いない。しかし、民を娼婦のように扱われてまで富を得たいわけではない。

 生きるため、一族の存続のために行きずりの男と一夜をともにすることはあっても、安売りをした覚えはない。


 だが、私は族長として民を守る義務がある。未来ある幼子が餓えに苦しむ姿に私は耐えられなかった。

 あの男の得体が知れなくとも他に頼る術がなかったのだ。


「リコリッタ、祖父様との生活は楽しかったか?」

「……おー! 母様によろしくと言ってやがりましたよ!」


 数年振りの娘は相変わらずおかしな口調をしていた。

 私の教養がない粗野な言葉に慣れていたせいか。こんなでも自分の娘となれば可愛く見えてしまう。


「言葉遣い、直せっつったろ?」

「母様だって変わりゃしねーじゃねーですか! リコばっかに言うなですよ!」


 大きくなって小生意気になりやがったな。ふふ。


「母様、リコね、町で友達が出来たですよ?」

「ほう、アムル以外にも友達が出来たのか」

「はい! 一緒にここまで送ってくれたですよ」


 おかしくなりつつあるこのサーカスから逃がすために、お義父上のもとへ預けていたのだが。


「きっと、あれなら力になってくれるです……だから母様」


 ふーん、可愛いうちの子に近づくやつか。

 どんなのか見てみないとねぇ?


「母様に紹介してくれるかい?」

「──うん! こっち、アレのことだから魔獣使いのところでフラついてるはずですから!」


 もし……もしこの子を任せられるようなら、楽団(ここ)から連れ出してもらおうかね。

 ここはもう、安全な我が家ではなくなってしまったから。


 くるりと先を歩く我が子を眺め、私は覚悟を決めることにした。

いつも読んでいただき

ありがとうございますヽ(〃´∀`〃)ノ

のんびり更新していますので

気長にお待ちくださいませ

(*´ー`*)


※5月25日誤字報告、ありがとうございます。

注意して見てるつもりですが

やはりありますね(・・;)


次回投稿 とてつもなくお待たせいたしております。

6月1日10時にきっと……!

( ´-ω-)

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