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私の飼い猫さんはさいきょーでした!  作者: おばた屋
2章 楽団と新たな邂逅
30/37

30話

 本来なら魔物や盗賊の襲撃に備えて、見張りを立てるのが常識の野営は化猫となったコマメと水虎が警戒を行い、ふかふかな毛皮に包まれた私と暴走に付き合わされへとへとのリコリッタ、アムルの二人は朝まですやすやと寝入ってしまった。


「聞ーてるですか?」

「聞いてるよー。ちょっとダマになっちゃってるね……んしょんしょ」

「んぅ、ありがとう……てい」

「本来ならありえねーんですよ、こんなド真ん中で全員が寝こけてるなんて」

()ぐるぅ(そこ)がうがう(少し右)

「襲ってくださいと言ってるようなもんだわ……」


 朝日を受けて目覚めた時、こんこんと二人から説教をされるハメになった。

 襲撃に備えることもなく疲れから爆睡したことも、そもそも何も出来ないほど疲れるような強行軍だったことも危険な行為だと、もう少し余裕を持たないと何かあったときに

 アンタもおかしなこと言わないで……!!」


 うふ、尊い。


「コマさん。はい、あー……ん」

「あー……はむ……むぐむぐ……」


 ふぅふぅと充分に冷ましたリコぱんを、膝でコロコロしているコマメのお口へと運ぶ。

 行儀が悪い? でも猫さんだし。


「美味しい?」

「ちょっと濃い」

「やかましいですよ。お前らの方が濃いです」

「ふっ、羨ましいか」

「アホか、行儀が悪いですよ」

「羨ましい……」

「ケモコ? 何か言ったですか?」

「何でもないわ」


 少し多めに水を消費しながら食べ終えたコマメのお口を拭い、おでこと眉間辺りをさわさわ撫でる。

 猫さんのときは好きだったけど、ヒトの姿をしている今もここら辺は好きなのかな?

 耳がぴくんぴくんと跳ねるから気持ちいいのかもしれない。


「さぁ、もう半分。行くですか」

「アンタたち、今度は加減して走んなさいよね」

「ふむ──」


 膝で寝転んだままのコマメがどろりと化猫へと変化する。

 大きくなっても顎先が膝に乗ってるところが可愛い。


「うわお、でかコマさんだぁー!」

「おまっ、いきなりでっかくなるんじゃねーですよ!」

「さ、すがに目の前だと迫力があるわね……」

がうぅ(つよい)


 チラッとリコリッタたちを一瞥(いちべつ)すると、ゆったりとした動作で立ち上がり、更に身体を変化させて昨日と同じ姿になる。


『面倒だ、載れ』

「──は?」

『足の遅いモノに会わせて走るなぞ面倒だ、と言っている。ボクが全員載せて走った方が(はや)い』


 確かにこの化猫タイプになったコマメの背には全員が乗れるだろうけど。


「大丈夫? あまり休めてないでしょ?」

『てい、キミのためならボクはどこまでも走るよ』

「……まぁ、置いていかれるよりマシですかね」

「何か釈然としないけれど、ね……」

『くたくたしゃべってないで早くしろ』


 焚き火やキャンプ跡の後片付けをし、昨日に続いてコマメ号へと乗り込む私たち。

 ふかふかの毛皮の座席に座り、疾走するコマメに感嘆符をあげるリコリッタ。アムルも水虎(リク)と共に怖がることもなく楽しんでいるようで安心した。


「コマさん、無理しないでね」

『てい、楽しいかい?』

「──うん!」

『良かった』




 夕日が傾く頃、徐々に街道沿いにもポツポツと人が増え始めてきた。さすがに化猫サイズでは、道行く人も馬も怯えてしまうのでヒトの姿に戻り四人と一匹で歩く。


 もう眼前には楽団(サーカス)のテントが見えてきていた。


「ふぁ──……」

「ほう、これはなかなか」

「どうですか、ここがリコたちの本拠地!」

「ようこそ、道化師(ヨクラートル)たちの(・レ・)遊技場(ルードゥス)へ」


 湖上に浮かぶサーカステントは、魔石灯によりライトアップがなされ湖上に反射し、より幻想的な雰囲気を醸し出している。

 ほんのりとしか観られないのは残念だけれど、きらびやかなことはよく伝わってきた。


 ガヤガヤと湖上のテントを眺めて話している周囲の人た

ちも、私たちのようにサーカスを観に来たのだろう。かなりの人数が湖の周辺へと集まってきている。

 しかし、どこから入るのかな?


「ここにはリコの母様(ははさま)やダンチョーや仲間たちが」

「ここには皆さまの目を虜にする魔獣や妖魔たちが」

「「ひとときの神秘を送る幻想世界」」


 急に走り出したリコリッタとアムルの二人は、大きく周囲の人たちの注目を集めながら揃った左右対象の動きで魅了していく。


 水虎が咆哮をあげると、湖上に水路が生まれた。


「すごいねぇ、コマさん」

「……随分と物々しい芝居がかかってるじゃないか」

「「ここにおわす貴女様方は選ばれたのです」」

「──聞く耳持たず、か」

「ね、ねぇ二人とも……リコリッタ? アムル? どうしちゃったの?」

「「この道化師(ヨクラートル)たちの(・レ・)遊技場(ルードゥス)は幽玄の狭間。誰もが観られるわけではありません。しかし観劇の応否は貴女様方に委ねられております」」

「観るも観ないもボクたち次第、か──」


 カーテシーの動作を取り、一言一句ズレることなく二人の声が重なり合う。

 演出? ここに来るまでの二人とはまったくの別人のようだ。


 無邪気なリコリッタや天真爛漫なアムルではなく、凛とした佇まいや所作、演じる様はまさしくプロのようで堂に()る姿に少し気圧された。


 周りにもリコリッタたちに似た子たちが各々連れてきた人たちを誘う。貴族然とした家族、私たちのような少年少女、老夫婦たちがひとり、またひとりと湖上に浮かぶ水路に足を踏み入れテントへと向かっていく。


 気が付けばもう私たちで最後だ。


 サーカスって観るのにこんな決断力が必要だったかな?!

 すごいドキドキしてきた。


 夕闇(ゆうやみ)逢魔ヶ刻(おうまがどき)誰そ彼(たそかれ)、様々な呼び名がされるこの昼と夜の狭間の湖上に浮かぶ楽団(サーカス)


「せっかくのお誘いだ。観て行こう、てい」

「うん、コマさん」


 私たちもお互いに伸ばした手を繋ぎ、リコリッタたちに続いて水路を渡る。


 見た目は溢れる湧水のような(みち)

 一歩ごとに四つの波紋が拡がっていく。


 はぁ……水の上を歩くなんてこれだけでも不思議だよ。

 ちょっとした水溜まりを歩く感覚だけど、これも水虎の力なのかな。


 ふと振り返ると、水路が消えていた。


「あ、あの、リコリッタ?」


 呼ばれて振り返るリコリッタはニタリと笑むと、何事もなかったように先へと歩を進めた。

 ……演出にしてもちょっと怖かった。

 ニコニコしてたリコリッタが本当に別人のようだ。


 水路を造る水虎を操るアムルも表情を失くし、臆することなく先を進んでいる。


 サーカスってもっとワクワクするものじゃ? 何でこんなにハラハラするのかな? ホラー演出と言えばいいのか、そっちに片寄りすぎてる気がするよ?


 目の前にして感じる、かなり巨大なテントだ。

 どうやって湖上に建てたのかとか、気になる部分はあるけれどここは魔法がある世界。物理法則を超えた超常現象も可能とする異世界だ。


 ドキドキ、ワクワク、そしてハラハラ。


 期待と不安の織り交ぜられた夜の闇が支配する頃、私たちはついに門を潜る。

名称はそれっぽく付けているだけです

(・・;)

─────────────────

いつもお読みくださり

ありがとうございます( ≧∀≦)ノ


のんびりと更新していきますので

きながにおまちくださいφ(..)


次回投稿5月15日10時予定

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