20話
続けてもう1話ですσ)゜Д゜)
「はふ、はふ……んぅ~~~っ」
「あちち、ボクはもう少し冷ましてからにする……」
たこ焼きのようなものを見つけ、つい匂いに釣られ買ってしまった。中身がタコではなく、お肉だったのでひとくちお好み焼きみたいなものになってるけど、濃厚なソースと絡まって美味しい。
コマメはあんなに燃えてたのに猫舌だなんて。かわいそうだけど少し笑っちゃった、ごめんね。
「くじ引きかー、こうしてると何だか異世界って忘れそう」
「世界は違っても人の考えることは同じってことかもね」
「うん。そうだといいな」
食べ物しかり、娯楽しかり。
日本と似通ったところも多く、もちろん細かな差異はあるけどそれは生活圏が違えばあって当たり前だし。
目の前のくじ引き屋さんもよくある宙を舞う紙を掴むタイプと、紐を引くタイプとある。
「くじ引き一回お願いしまーす!」
「は~い、準備しますね~」
あ、ちょうどくじ引きをする子供がいるみたい。子供は紐タイプを選んだようだ。
迷って迷ってようやく決めた紐を引く。するすると紐に括られ持ち上げられた紙には文字が書かれているのだろう。
子供と同じようにドキドキとしながら見守った。
「おめでと~、三等の当たり~」
「わーい!」
子供が手にしたのは子供と同じくらいの巨大なぬいぐるみだ。コケたり落としたりしないかハラハラしたけど、満面の笑顔で子供は去っていく。
「はぁぁ……、ドキドキしたぁ」
「運要素が強いね。てい、挑戦してみたら? さっきくじ引き券をもらったでしょ」
「え、でもコマさんのもらった券だよ?」
それ以上は何も言わずに、私に券を握らせたままくじ引き屋さんまで手を引かれた。
「お姉さん、一回お願いするよ」
「はーい、あらかわいいお嬢さんたちね」
「よ、よろしくお願いします……!」
透明の球体の中に無数の三角に折られた紙が入っている。パッと見で何が書かれているか分からないようにしてあるね。紐の方も持ち手と景品側を辿れないように、中央で一度まとめられている。
くじ引き券を引き換えて、球体の前へ立つ。
お姉さんが詠唱すると、球体の中の紙が風の魔法によって縦横無尽に撒き散らされた。
「はい、準備完了~。この穴から手を入れて、風に舞う紙を掴んでね~」
あー、日本でもこういうタイプのくじ引きよく見たなー。なんて懐かしく思って何とはなしに手を入れると、紙が自ら手中に収まるように飛んでくる。
「はい」
「はーい、お嬢さんのくじは~……」
ドキドキ、ワクワク……!
「いっと~しょ~! おめでと~一等で~す!」
「わ、わ、わ……コマさん! いっとーだって!」
「おめでとう、てい」
からんからん、とお姉さんはハンドベルを精一杯に振り、大きな鐘の音を響き渡らせた。
周囲から見ていた人たちからも拍手をもらい、一際大きなぬいぐるみをいただいた。
わー、すごーい重ーいもふもふだー!!
「………っ」
コマメほどの大きな犬のぬいぐるみをぎゅーっと抱き締めて、そのもふもふクオリティを堪能してしまった。
「てい」
「ね、すごいねこの犬さんのぬいぐる──あぁっ!?」
「こんなのいらない」
コマメが拗ねた!
じっとりとしたコマメの視線が痛い。前も犬頭に同じことして怒られたっけ。
ごめんね、コマメが一番だから後ろ足でぬいぐるみに砂かけするのは止めてぇ! ぬいぐるみさんに罪はないよぉ!
結局、お昼を告げる鐘の音が鳴るまで、コマメを抱っこして機嫌を直すのに時間を費やした。
ずっとブラッシングさせられて腕がプルプルするぜ。
「リコリッタの舞の時間だから今はこれで許してあげる……けど! あとでまたしてもらう」
「コ、コマさん、私のこの腕を見てよぉ……」
「なに?」
「なんでもありません! 愛情いっぱいにお手入れさせていただきます!」
「……ふんっ」
あぁぁ、拗ね拗ねコマメだ! 怒ってるのにしっぽが絡みついてきて、やっぱりコマメが一番可愛いよぉ~。
「おー……おぉぉ? 何してやがるですかお前たち」
「あ、やほーリコさん」
「…………」
二人羽織のような格好のまま、リコリッタの舞奉納が行われる広場までやって来た私たちに、出番前で控えていたリコリッタが声をかけてきた。
少し言葉遣いが荒くなったのは仲良くなった証だと思いたい。
「なーんか機嫌悪そうじゃねーですか、こまめ」
「別に」
「どうせまたていが浮気しやがったんですね」
「ひどくない!? 私、浮気なんかしないよ!」
「どうですかねー?」
「リコリッタ、これやる」
「え、ありがとう……なんか砂っぽいぬいぐるみですね?」
「浮気相手。制裁済み」
「違うってば~!」
「あー……ていが悪いですね」
うう、コマメのご機嫌がまだナナメだよ。
ちょっと強めに抱き締める手に力を込める。
「もっと」
「あとでね? ね?」
「相変わらずでやがりますね……」
「ていは浮気性。昔から変わらない」
「さいてーでやがりましたか」
「違う、違うよ!? そりゃ他所の猫さんとか撫でたことあるけど!」
「はいはい」
「まってー!?」
年下の子に呆れられました。
ここ数日過ごした中で、コマメの対人スキルが格段に上がった気がする。ぶっきらぼうな物言いは変わらないけど、私以外への当たりが丸くなったというか。
リコリッタのお陰かもしれない。
「リ、リコさん、奉納はいつから?」
「ごまかした」
「やれやれですね」
ううう、許してよぉ……。
じっとりとしたコマメの視線に耐えきれず、リコリッタへと話題を振ると、呆れながらも話に乗ってくれた。
「あと半刻くらいですよ。今は神事をしてやがる最中です」
舞台の上では神職の正装をした人たちの豊穣を祈る儀式をしている。日本でもよく見られた光景だ。
リコリッタも出番が来るのを待つだけらしい。
「今までの練習通りなら問題ないと思う。がんばってね!」
「やってやるですよ! 見ときやがれです!」
「意気込みがおかしい」
大勢に観られるって結構なプレッシャーだからね。
テンション上げて勢いマシマシで自分を誤魔化さないと心折れちゃうから。
ついにリコリッタの出番となり、音楽が流れ出す。
スポットライトの中のリコリッタは、群衆の視線を物ともせず、音楽に合わせて舞い踊り始めた。
神職の人たちが舞台を囲むと、一斉に詠唱を始めれば不思議な幕が舞台を覆う。
瞬間──ドンッ、と何かの圧力が高まる気配がした。
「コマさん、あの人たち何してるの……?」
「てい、気をつけて」
『今、ここに神への舞を奉る──』
くるりと回るリコリッタを中心に、不穏な風が吹き上がる。
『祈り子の神に捧げる命の雫、貴女の慈悲が厭わぬのならば、我が献身、詩を伝えるため、降り立つ新たな芽吹きにこの身捧げよう』
広げた両の手の平から、鮮血が弾けてリコリッタの四肢を伝い、舞台へと広がっていく。
「リコさん!?」
「…………」
『寄る辺なく、彷徨える御霊の、虚の彼方へ永遠に永久に。我が贄となりて五穀豊穣を、願わくは永劫の約束を』
前に見せてもらった時には聞き逃した祝詞の続き。
舞巫女を生け贄に、豊穣を願う儀式。
「止めなくて大丈夫かな……?」
「異世界にはこっちのルールがある。下手に手出しが出来ない」
「そんな……」
あんなに血が出てるのに、なぜ周りの人たちは見ているだけなのだろう。
「てい、上だ」
群衆を掻き分け、舞台へと駆け寄る。
コマメの指し示した舞台の上空では、強大な力が渦を巻いていた。
こういう時って乱入していいのか迷います。
それが友だちなら尚更。
次回投稿4月3日頃にφ(..)
のんびり更新していきますので
気長にお待ちください。




