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第198話


 「で、その仕掛けとやらはあれか?」


 俺は目の前にそびえ立ついかにもな扉を見てそう言った。


 「ああ、あれだ」


 「隠したりしないもんなのかねぇ」


 俺は額を掻きながらそう言った。


 「俺らも前見た時はそう思ったぜ? だが、いざ調べてみたらどうよ。仕掛けが解けないせいでうんともすんとも言わねぇときた」


 その上ダンジョンだから壊す事もできねーと。

 

 「この中じゃアタシが一番こう言うのが得意だけどさっぱりだったね。んで、アタシと同じくらいの頭したエンドールが見てもやっぱりわからなかった」


 「そんなに難しいのか」


 「何たって算術だからな。今時こんなもん誰も使わねーって」


 そうか。

 算術か………ん?


 「算術?」


 「おう、算術だ」


 待てよ………確かこっちの算術………数学はかなりレベルが低かった気がするぞ。


 「なぁ」


 「「ん?」」


 俺はアイテムボックスから紙を取り出して問題を書いてみた。


 「こんなもんか………ほい」


 俺は4人に問題を渡した。


 「これは?」


 「解いてみろ」













———————————————————————————













 「アンタら………マジか!!」


 「何だこれは。呪文か?」


 「途中までしかできなかった」


 「「同じく」」


 3人は中1,2レベル。

 ダグラスはもう論外だ。


 「これ俺の地元じゃ、13,4歳で解ける問題だぞ!? ここまで酷いのか!」


 魔法だよりのファンタジー世界では算数はあまり使わないらしい。

 精々金銭関係で足し算引き算する程度だ。


 「お前これ解けんのか?」


 「問題出してんだ。当たり前だろうが」


 「おぉ! 期待できるな!」


 なんか、意外と大したこと無いんじゃねぇのか?



 「じゃあ、早速行こうぜ」



 









 簡単、だと思っていたが、


 「これは………」


 用意されたのはざっと10000文字程の数字。

 100×100でその扉いっぱいに文字が浮かんだ。

 ここに開いた空欄に、ある法則に従って文字を入れろと言う問題だった。


 「算術と言うより謎々だな」


 「謎々?」


 「言ってしまえばクイズ。それも、かなり複雑だ。こりゃアンタらが解けなくても無理はねーな」


 意外と異世界にもこう言う問題があるのか。

 

 なるほど、確かに難解だ。

 いくつもの引っ掛けが仕掛けられてかつ、ぱっと見それは正解に見える。

 その上本当の正解は引っ掛けを全部探し終えて始めて一部が見える。


 「解けるでぇすか?」


 「誰に言ってんだ」


 俺は扉に手を当てる。

 魔力を操作して、文字を当てはめていく。


 「まぁ、クイズにしてはイイ線いってる」


 その文字は、



 “ようこそ龍姫の逆城へ。そして、さようなら”



 「!!」


 ダグラス達は、その文字を見た途端に警戒を強めた。

 強い魔力を感じる。


 ———何処だ?


 ダグラス達は辺りを見回し、それに気がついた。


 頭上だ。



 「おい………反則だろッ、それは!!」


 上に現れたのは、巨大な炎。

 1層全てを覆うサイズで、かなり密度も高い。


 「マズイ………ッ! エンドールッ! 防御魔法張っとけ! ドロットもだ」


 エンドールとドロットは


 「ローレス! 詠唱を——————」


 ダグラスがローレス達に指示を出す前に、俺が動いていた。


 「ボウズッ!?」


 

 俺は余裕の表情で手を上に向け、魔法を発動させる。


 「イイ線いってるが——————」



 水二級魔法【ハイドロエラプション】×100




 「なっ………!!」


 100もの激流が、炎に向かって一直線に進んでいく。

 それらは全ての炎を一瞬にして完全に消さった。



 「——————文字はセンスが無かったな」



 俺はパチンと指を鳴らして、水が降ってくる前に消した。


 「この程度なら全然楽勝。仕掛けも罠も、な」


 「二級魔法を詠唱もなしに同時にあれ程の数を………アンタやっぱ規格外だわ」


 「相変わらずのイカれっぷりだな、ボウズ」


 「すんごいでぇすね」


 「まさかこれほどまでとは………」



 「よし、と。それじゃ、扉を開けてもらおうか?」


 俺がそう言うと、扉が重たい音をたてながら、ゆっくりと開いていく。


 「おぉ………ついに、誰も行ったことのなかった第2層へ行ける………!」

 

 「はしゃいでンな、おっさん」


 「あたぼーよ。お前はワクワクしねぇのかい?」


 「しねー訳がねーだろ。こう言うのは男のロマンだ」


 「わかってるじゃねぇか。それでこそ冒険者だ」



 そうして、俺たちは第1層をあっさりとクリアして、上層に登った。











 俺はその時、誰かからの視線を受けていることに気がついて、少し警戒を強めていた。




 そして更に、この先に待ち受けていたものに、俺たちは——————

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