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第190話


 「よっと、危ねぇ」


 間一髪で攻撃を避けた。

 音がすごい。


 「ふふふ………」


 ラクレーは、止まることなく次々に攻撃を放ってきた。

 こいつの戦い方は一言で言うと、自由だ。


 重い攻撃、早い攻撃、変則的な攻撃。

 それが得意でどれが苦手というのが無い。

 あえていうならどれも得意なのだ。


 「!?」


 ラクレーの攻撃が4方向()()で飛んできた。


 俺は2つは回避して、一つはふくらはぎとももで挟み込み、もう一つは剣で受けた。


 「【隼の舞】か………エグいの使ってくるな。俺以外に避けられたことあるか?」


 「何人か」


 「へぇ、そいつはスゲェ」


 衝突し、その刹那激しい剣戟を繰り広げる。

 無駄のない剣だ。

 それであって力強く疾い。


 「我流か?」


 「基本はおじいちゃんから教わった。後は我流」


 おいおいおい、マジかよ。我流でここまで出来るのか。

 いや、我流ゆえにこれほど自由な剣を生み出せたんだな。

 恐らく誰にも真似できない。


 あ、1人だけいるか?



 俺はよく知った親友の顔を思い浮かべた。

 気に入られるわけだ。




 「ふ——————ッ!!」


 「!」


 

 剣が震えている。

 だったら俺も——————!




 キィィィィンンンン………………!





 魔力により発生した振動を相手の腕に伝えることで、動きを止める。

 防ぐ方法は、避けるか相殺するかのどちらかだ。


 「【ソニックブレイド】………その威力が当たったら流石にやばかったな」


 「これもダメか………」

 


 俺とラクレーは同時に魔力を高め、強い振動同士がぶつかり、両者とも後方に弾き飛ばされた。






 「ふふふ………いいね」


 「やり甲斐のある戦いだ」



 俺は剣を低く構えた。



 「? なにそれ」


 「思いつきの新技だ」


 風属性の魔力を剣に纏わせる。

 回転を強め、小さな竜巻を発生させた。


 「更に………」


 そこにまた別の風を加え、回転を乱し、変則的な回転を纏った竜巻を生み出した。



 「【ウィンドソード】でも【サイクロンスラッシュ】でもない………」


 「それはただ単に風を飛ばす剣だ。しかもその2つは強弱の違いがあるだけで性質は殆ど同じ。だが、この剣は違う」


 竜巻は、徐々に形を変え、やがて龍のようになっていった。


 「この斬撃は()()()()()ぞ」


 魔力を爆発させた瞬間、ラクレーは咄嗟に防御体勢をとった。


 「【龍閃】」



 低く構えた剣をそのまま前に突き出した。

 すると、鋒から流れ出る風がラクレーを目掛けて飛んで行った。

 それはまるで、龍のように唸りを上げて進んでいた。



 「ッッッ!!!」



 ラクレーが真正面から龍閃を受けた。

 風の龍はラクレーを押し出して進んでいく。



 「っ、く………手が、ブレる」



 この技の特性は、ガード崩しだ。

 複雑な回転をするこの龍は、手に加える力を一定方向にし続けると、剣が飛んでしまうので、押される方とは逆の方へ力を込めなければならない。

 例えば、右から押されたら、今度は左斜めしたからなど、方向が変わってしまうのだ。



 「流石剣天、これを受け切るか」


 俺はラクレーが受けている間に、背後に回っていたのだ。

 隙だらけになった背中を狙って一太刀入れようとした。

 すると、


 「甘い」


 ラクレーは少し飛んで、風の力で上空へ一気に飛んだ。


 「風属性は利用できる」


 「ああ、知っている」


 「!?」


 俺は、龍の首筋に剣を当て、それを真上に飛ばした。


 「まさか………!」


 「ああ、読んでたさ。こう避けるってな。それに、操れねぇ技を放つほど、俺は間抜けじゃない」


 龍はそのままラクレーへ飛んでいく。

 大口を開けてラクレーを飲み込もうとした。

 しかし、



 「多分これじゃあ、やられねぇんだろうな」


 ラクレーは、剣を持ち替えた。

 抜刀剣に一瞬で注ぎ込める魔力を目一杯注ぎ込んだ。



 「【千斬(ちぎり)】」

 


 龍はバラバラになり、空に散っていった。

 

 万裂羅の簡略版のようなものだ。

 攻撃回数や威力は劣るが、一瞬で放てる抜刀術だ。


 「そうこなくっちゃなァ」


 俺はニッと笑った。


 「まだまだこれから」


 ラクレーは珍しくふふっと笑った。



 「ハァーーーッッ!!」



 「ヤァーッッッ!!!」



 鋭い金属音が鳴り響く。

 ラクレーが徐々にギアを上げ始めた。

 こいつもスロースターターのようだ。


 剣がぶつかる衝撃で、岩場の岩が欠けていく。

 荒野は更に荒んで行った。



 「今何パーセントだ?」


 「そろそろ100」


 「じゃあ、見せてみろ。お前の本気を」


 鍔迫り合いから一歩引いて、 ラクレーが漸く本気の魔力を放った。


 「一応言っとくけど、手を抜いていたわけじゃない」


 「わーってるよ。さっさとやれ」




 ラクレーは一度納刀し、抜刀の構えをとった。

 そして、今まで溜めてきた魔力の全てを放つ。





 「———————ッァアアア!!!!」






 フッッ………………ズォォォオオッ!!!!!




 地面が耐えきれなくなり、中心が凹み、外が隆起したクレーターが生まれた。

 魔力が起こす電撃がより強力になっている。

 その圧は、突風を巻き起こし、岩や砂つぶは簡単に吹き飛んで行った。



 「ゾクゾクするぜ………」


 極められた剣も凄まじいが、この膨大な魔力。

 魔法が使えるかは別として、この魔力は尋常じゃない。

 生まれ持った才能だ。


 驚異的な魔力と圧倒的な剣技を併せ持った剣士。

 それがラクレー。


 決着は近い。

 これがおそらくファイナルラウンドだ。


 さぁ、楽しもうじゃないか。

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