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第187話


 「それじゃあ、今回の騒動を解決したということで、今夜は騒ぐぞォォォ!!!」


 「「「おおおおおおお!!!」」」




 ダグラスの掛け声と同時に宴会が始まった。

 場所はもちろん、サクラスの店。

 てんちょーのメシはうまいので楽しみだ。



 「あまり飲みすぎないでよ、兄貴」


 「ん? ケチィこと言うなよぉ! 今日くらい騒ごうぜ!」


 「やれやれ………マイちゃんもメイちゃんも大変でしょ? こんなアホが上司だと。あ、メイちゃんは違ったっけ?」


 「いえ、上司のようなものです。大変………まあ、大変と言えば大変です、かね。ツケもまだ帰して貰ってないですし………」


 メイは苦笑いを浮かべながらそう言った。


 「はぁ!? ちょっと! 何してんの兄貴! よりによってこの子達にツケるとか何考えてんの!? お金いっぱいあるだろ!」


 俺も乗っかって罵声を浴びせた。


 「そうだぞ、おっさん。アンタみたいなおっさんがこの街の治安を悪くするんだぞおっさん。わかってんのかおっさん。えぇ? おっさん」


 「おっさんおっさん言うな! まだ若ェ()には負けてねぇよ!」


 「その衆を()って言ってんのがもうおっさんくさいんだよ。見ろてんちょーを。ほとんど歳が変わんねーのにこの若々しさ。もはや詐欺だろ。詐欺師、詐欺師。一体何人の女を騙してきたことか」


 「根も葉もないデマはやめようか」


 俺も宴会ということでテンション高めになっている。

 今日は無礼講だ。

 ん? 普段も無礼講か。

 まぁ、気にするな。


 「ケンくん楽しそうですね」


 「まーな。お前も楽しんでるか、リフィ」


 「はい! こういう場は久し振りなので楽しいです」


 「………」


 明るい。

 恐らく無意識だろうが、それは、こういう場に久しく参加できていなかったという事。

 奴隷時代に故郷での事件。

 色々あったことを考えると、俺もやるせなくなる。


 なんとなく俺は、リンフィアの頭に手を置き、頭を撫でた。


 「わっ、ど、どうしたんですか?」


 「なんとなくだ」


 ん? 顔が赤い気がするな。

 流石に恥ずかしいか。


 俺はパッと手を退けるとなぜか残念そうな顔をされた。

 嫌がってなかったしこの反応は、別に撫でられても良かったらしい。


 「そういえば、マギアーナにはいつ行くんですか?」


 「んー、明日話し合う予定だけどなー………多分今週か来週。来週かな」 


 「そうですか………この街とももうすぐお別れですね………」


 「心配すんな。もう少ししたらここまで一気にこれる魔法具作ってやる」


 「そんな物が作れるんですか?」


 「ああ。素材をある程度集めりゃ作れる」

 

 目下の目標としては、魔力が原動力の車を作る予定だ。

 頭ン中に大体図はある。


 「じゃあ、楽しみにしておきます」


 「ああ、期待してろ」


 すると、


 「今度は車でも作る気か?」


 後ろから話しかけてきたのは蓮だった。


 「蓮か。ああ、そのつもりだ。ちなみに俺用のマシンを作る予定もある。ここにはポリ公もいねーし、道路交通法もねーし、好き放題だぜ」


 ああ、自分で言ってて楽しみになってきた。

 昔はこっそりしか乗れなかった上に、乗れるやつも選べなかったのだ。

 ここでは好き勝ってさせて貰うのだ。


 「ほどほどに、だぞ。琴葉ちゃんにバレたら大目玉だ。いつかリンフィアさんにも怒られるぞ」


 「お前は怒らねーよな?」


 「場合によります」


 にっこりと笑顔でそう言われた。

 逞しくなりやがって………


 「やれやれ………周りを困らせるところは相変わらずだな、ケン」


 「何ィ!? 俺もちったァマシになったぞ! 最近はどっちかというと俺の方が困ってる! この世界の奴らキャラが強すぎンだよ!」


 「はいはい、リンフィアさんも大変だろう?」


 「いや、私の方がお世話になってますよ。いつも苦労かけちゃってるなーって思います」


 「なん………だと………!?」


 「おぉいい!! 失礼すぎンぞテメェ!!」


 大袈裟な反応についムキになる俺。


 「ししししっ! 飲んれるぅ? ケンひゃ〜ん 蓮くーん」


 「どうしたの琴葉ちゃん!?」


 「うわっ! 琴葉、お前飲んだのか!? おいおいおい、酒なんて飲まねぇとか俺にずっと言ってたクセにどうしたんだよ!」


 「コトハちゃん、へべれけじゃないですか!」


 ゆらゆらと千鳥足で歩いてくる琴葉を支えるリンフィア。


 「りんふぃやちゃん! なんで3(りん)もいるろぉ? かげぶんひん? あ!! ケンちゃんも蓮くんもいっぱいいるろぉ」


 なんてこった。

 間違いなく言えるのは、意図的に飲んだわけじゃないこと。


 「琴葉ちゃんって、酔うと厄介だな………」


 「いや、思い出せ蓮。屠蘇飲んだ時も酔ってたじゃねーか。ほら」


 あれは確か二年前、正月にお屠蘇を飲んだ琴葉がかなり濃度の低いアルコールで、なんと酔っ払ったのだ。

 その時はただテンション高いだけだったが、今回はちゃんとした酒だっただけに、こうなってしまったようだ。


 「えーっと、この子は………」


 酔っ払った子供をみたてんちょーはこの状況を俺に尋ねた。


 「誰かに酒飲まされたんだよ。飲めねぇのに飲んでるってことはそういう事だ。鼻は効くから自分から飲むことは無いと思うぜ」


 「犯人は相当悪質だね。うちは飲めない子には出さないようにしてるからうちの従業員じゃあないね」


 「ハァ………なんでこんな事に………おい、どこに行く、おっさん」


 俺はそそくさと逃げようとしていたダグラスの肩を掴んだ。


 「ぎくり………」


 「兄貴まさか………」


 ダグラスは笑ってごまかしながらこう言った。


 「まぁ、出来心ってや——————へぶっ! ブホッ!」


 俺がかかと落としを決めたあと、てんちょーがモップで思いっきり顔面にフルスイングした。

 これは痛い。


 「「はしゃぐなおっさんが!」」



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