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第185話


 「推薦?」


 「そうだ。学院長の私直々の推薦なら入ることができる。そして——————」


 そこからが重要だった。



 「そこは国の権力、国王の力が届かない場所だ。つまり、お前に手出しできなくなる」


 

 「!!」


 来た。

 選択肢にはなかった思いもよらないカード。

 ここに来てこんな上手くいくとは………日頃の行いだな、うん。


 『そんな真似を許すと思うか?』


 「それはお前の決める事じゃない。あの学院は私の“クニ”だ」


 国。

 おそらく普通の国は違うニュアンスだろう。

 何にせよ、こいつに乗っかれば最善のルートが辿れる。


 「なぁ、こいつらもいいか? あいつは才能の塊だし、あっちは多分世界で唯一の特異体質、そっちの戦闘能力はもうちょいでラクレーに匹敵する」


 「ふむ………よかろう。お前は是非とも欲しい。それが条件だと言うのなら構わんよ。うちには半魔族も亜人もいるから心配無用だ」


 マギアーナは、国内で唯一半魔族が住むことが許されている。

 色々条件がつくがそれさえクリアすれば問題ないらしい。


 「マジでか!?」


 いよいよ都合がいい。

 じゃあ、残るは勇者たちだが………一か八か頼むか。


 「なぁ、王様に一つ脅しをかけることは出来るか?」


 俺は状況を説明した。


 「なるほど………ラクレー、ちょっと来い」


 「うん?」


 ラクレーはファリスの近くまできた。


 「何?」


 「お前は私の味方か?」


 「うん」


 「もし私が国に背く事になったら来るか? あ、サクラスも誘っていいぞ」


 ちなみにサクラスはてんちょーの名前である。


 「おいおい、弟は巻き込むなよ」


 と、ダグラスからの抗議。


 「うるさい」


 「はい」


 なんか完全に関係性はわかるなー。

 まぁマジになったら流石にダグラスも逆らうだろうが。


 「うん。てんちょーも一緒ならいい。ごはん」


 「ごはんて! ラクレー、そりゃねーよ!」


 「うるさい」


 「はい」


 こいつにもかーい。


 「と言うわけだ。勇者たちに手を出せば少なくとも三帝は2人消える」


 『貴様………』


 「ふふふ、地位ってのは大事だよな。お陰で私も自由にできるよ。いいじゃないか。少年が敵に回るわけじゃないんだ。国が滅びるよりはいいだろう。しかも一方的に。それは面白くない上に負ける。お前にとっちゃ最悪の条件だ」


 勝負ありだな。


 「どうする? アルスカーク」


 『………ふん、主にそう言われると余ではどうもならんな。今回は了承してやろう。では最後に一言だけ言っておこう、ヒジリ・ケン』


 「あ?」


 『主は必ず余の元に来る。必ずだ。主が特異点である限り』


 「………」


 含みのある言い方だった。

 考えていることは予想がつく。

 確かに俺はこの国の神の特異点だ。

 俺と言う存在はこの国にくくりつけられている。

 神が介入する出来事が発生した場合、協力を余儀なくされる可能性は高い。

 勇者たちもいるからだ。

 だが、それは今じゃないので考えないでおこう。

 それに、対策はある。


 『ではさらばだ』


 そう言って国王は通信を切った。


 「やっと消えたか、キツネ野郎」


 「アンタえらく国王に対して高圧的だな。三帝ってそう言う地位なのか?」


 「ああ、そうだ。我々はもはや国王軍では手に負えない存在だ。個人個人が強力すぎるからな。その上私は学院という戦力を、ギルに関してはその財力とツテで手に入れた戦力を。どちらも小国家くらいなら簡単に潰せる力はある。流石に国自体と戦えば危ないが、尋常じゃない被害は与えられるだろう」


 「そう言うことか。じゃあラクレーが一番タチ悪いな。単騎でここまでの強さ。ギルファルドと違って、ラクレー1人が死ぬまで終わらない上にそれ自体の達成が困難。厄介すぎる」


 普段は飯と剣のことしか考えてなさそうだけどな。


 「何はともあれ、来てくれるんだな?」


 「ああ。アイツらが魔法を覚えるちょうどいい機会だ。ギルドもあるのか?」


 「ああ、ある。資格があれば学生教師関係なく仕事をしても構わん。それに入学中はノルマが軽くなるからな」


 お、それはラッキーだ。

 週に何回っていうアレが面倒だったんだよな。


 「いいねぇ。とりあえず、アイツらにも説明してやっていいか?」


 「構わんよ」


 








———————————————————————————










 「てな感じで、拠点をマギアーナに移すが、構わねーか?」


 「急ですけど………いいですね、学校。一度通ってみたかったです」


 「いいぞー」


 「リンフィア様がよろしいと仰るなら私も構わん」


 とりあえず、全員の許可は取れた。

 結構あっさりだったな。


 「お家はどうするんですか?」


 「寮がある。そこに住むといい。バラバラになる可能性があるが、そこは勘弁してくれ」


 寮か。

 んー、ラビが心配だ。

 家事分担なら一番やばそうなのはリフィだけど

 

 「なら家建てなくてもいいな」


 「ん? いや、家はダメだろう」


 「え?」


 「法で決められている。建ててもすぐに壊されるぞ」


 「えーーっ! マジで!?」


 呆れ顔をされた。


 「お前、法律を知らないのか?」


 「一つも知らねー。異世界人だからな」


 「そういえば元勇者みたいな事を言っていたな………じゃあ、これに目を通せ」


 ファリスは分厚い本を渡してきた。


 「この国の法について書かれている。“ミラトニア法典”だ」


 なるほど、法例集か。

 一度暇つぶしで六法全部読んで覚えた俺にはぬるすぎるな。


 あ、そうだ。


 俺はとりあえずゴーレムを5体ほど作った。

 簡易ゴーレムなのでかなり弱いが。


 「これ破っていいか?」


 「何する気だ?」


 「覚える」


 俺は法典を6つに分割した。

 そしてゴーレム達に一つずつ渡していく。

 まあ、意識は俺なので渡すってのも妙な話だがな。


 「ゴーレムに読ませてどうする?」


 「今特殊なスキルでこのゴーレムには俺の意識が憑依されてる。並列思考で同時に覚えるつもりだ」


 俺はパラパラとページを捲っていく。


 なるほど、結構日本の法と似てるかもな。

 あ、これは全然違うわ。

 お、犯罪者には結構厳しいんだな。

 目には目をってか?

 いいねぇ。

 これが魔法についての法律か。

 あ、なるほど。

 だから家立てちゃダメなんだ。




 「捲るの早いな。パラ読みになってるぞ」


 ニールが不思議そうに見ていた。




 俺とゴーレムは、パタンと本を閉じた。


 「なるほど。とりあえずゴーレムは土に還して」

 

 「なっ………今ので覚えたのか?」


 「おう。聞いてみ?」







 俺はファリスからの法律問題を全て答え切った。


 フフフ、クイズ番組とかでの法律問題をミスったことのない俺に死角はないぜ。


 「並列思考は意識をその数分分割する………思考力も低下してる筈なのに………信じられないな」


 「そうか? やってみれば案外簡単だぞ」


 俺はしばらく奇妙なものを見る目で見られた。

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