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第183話


 「おーやっべぇ………え、マズかったか? これ」


 冒険者たちが残像が出来るくらい頭を縦に振りまくった。


 「ケンくん………デリカシーなさすぎです………」


 「ケンちゃんそれは無いと思う」


 「お前らまで!?」


 いや、確かに口から滑ったとは言え、流石に失礼だったか。

 アラフォーだが。


 「あーあー、落ち着こうか。とりあえず高まってる魔力を抑えよう。いや、悪いとは思ってるぜ? いくらアラフォーでも気に………やべっ」


 観察してみたところ、見た目や声じゃ判断がつかないので、魔力や立ち居振る舞い、話し方やその他諸々からアラフォーだと思ったので、そう言ったのだが、図星だったらしい。



 「あー………全員、こっから離れた方がいいと思うぞ」




 ブゥ——————ン………




 放たれた膨大な魔力は波状に広がっていき、辺りの草木、砂や石が微かに震えだした。


 「なんだ………この魔力は………ッッ!!」


 「し、死ぬ………!」


 Sランク冒険者達も怯える魔力。

 確かにこれは、


 「ビリビリ来るぜ………」


 ファリスの周りに火花のようなものが弾けている。

 飽和した魔力が起こすこの現象………相当な魔力だ。

 魔道王は俺に手をまっすぐ向けた。


 「死ね」


 「直球だな………オイ!」


 無詠唱三級魔法を三属性同時に連発。


 なるほど、これでは避けても爆発するな。


 俺を挟むように迫る魔法。

 俺は相殺可能な魔法を飛ばしつつ、そこで出来た爆煙が俺の姿を隠している間に上へ飛んだ。


 「んじゃ俺も」


 俺は氷二級魔法【絶対零度】を発動。

 ファリスがいた場所に氷の柱が出来た。

 俺はとりあえず、その上に立って様子を見る。


 

 ブオッ!!



 風魔法で爆煙を飛ばしたファリスは、炎二級魔法・【フレイムメテオ】を飛ばした。

 無数の隕石のような炎が俺に向かって飛んできた。


 「やっぱ二級も無詠唱か」


 風魔法はマズイな。

 炎が大きくなってまともに喰らっちまう。

 水魔法は………多分この規模を消すようなのを使うと、雷魔法で感電させられちまうな。

 俺はともかく、まだ逃げ切れてない連中がいる。

 あれは、寺島だな。

 他の冒険者はどうでもいいが、あいつはマズイ。

 ………よし、だったらこれだ。


 「より大きい炎で消す」


 俺は、炎一級魔法【紅蓮ノ海】を発動。

 辺り一面を炎で埋め尽くす。

 海のような巨大な炎は全てを埋め尽くした。


 「ぷはっ! 酸素薄っす………ん?」


 下にファリスの姿がなかった。


 そしてなんと背後には、雷一級魔法【雷王ノ激昂】を手に纏わせているファリスがいた。


 これは超電圧の雷を一点に圧縮することで、凄まじい破壊力を生む魔法だ。

 一見小さく見えるこの魔法も、放たれたが最後、凄まじい電気が一帯を支配し、直接触れた場合は完全に消し飛ぶ。

 広範囲の魔法でもあるし、至近距離で使える一点集中の魔法でもある。


 「一級魔法か。流石だな。だが、一級魔法の使用後は隙が——————」


 俺はくるっと振り返り、予め用意していた同じ魔法をファリスの拳にぶつけた。


 「いらっしゃーい」


 

 雷同士はぶつかり合い、凄まじい音と共に外部に電気が放たれた。

 この周辺10km圏内に電子機器があれば間違いなく爆発してぶっ壊れる。

 それほどの電圧だ。

 本来なら、だ。

 俺もファリスも範囲を絞っているので、そこまで被害は出ない。



 「一級魔法の直後は、普通は隙ができる。魔法使いなら常識だ。だが、アンタも出来るんだろ? 直後に魔力を吸って使用可能段階まで魔力を体にチャージすることが。まあ、人間の体じゃまず耐えられねーし、特異体質でもなけりゃ使えねーけどな」


 「では何故使える?」


 「俺は魔力を体に慣らしたんだ。回路いっぱいに流してみたりカラッカラにしてみたり、他にも色々。死にかけるまでして、魔力に対して効力のある体に改造した。今の俺にそう言った弱点は一切ない」


 それを聞いたファリスの顔が歪んだ。


 「!? 馬鹿な、想像を絶する痛みだぞ! 狂ってもおかしく無い!」


 「生憎我慢強い性分なんで、なッッ!!」


 俺は魔力を一気に流し、ファリスを弾き飛ばすと同時に、雷二級魔法レールガンを撃った。


 「レールガンか………高速だが、避けれなくは無い」


 「だろうな。だが、こいつはどうだ?」

 

 「ふっ、無数に撃つつもりか? 言っておくが、レールガンはマグネティクスで向きを変えられる。このレベルの戦いではそんなものは——————」




 ヒュンッッ!!




 何かが、ファリスの頰を掠った。


 「!?」


 油断していたとは言え、反応出来なかったことに驚いていた。


 「複合:雷二級魔法【レールガン・ダブル】だ」


 「ダブル? 何だそれは」


 「複合魔法、って知ってるか?」


 「………今研究中の魔法だ。私も殆ど使えないような魔法を、なぜお前が使っている」


 研究中と言う理由は、この世界には複合魔法を覚えるグリモワールも、魔法創生陣も存在しないからだ。

 となれば、創生陣を自分で研究して作るしか無いと言うわけだ。


 「言っとくが、今俺が使っているのは、それの更に高位の魔法の重複だ」


 「魔法の重複………! 馬鹿な………それでは命令式が成り立たない。不可能な筈だ。複合魔法の研究をいくら積んでもそれだけは不可能だという結果が出ていた。にも関わらずだ。それは、人に許される領域ではないぞ!」


 「許す許さねぇは俺には関係ない。考えてできちまったもんは許されなくとも使う。使えるんだからな。この国の魔法使いの頂点に立つアンタならわかるだろ?」


 俺は全属性複合魔法を手のひらで作って見せた。

 ファリスはゾクゾクしたように俺を見ている。

 完全に研究者の目つきだ。


 俺は拳を握って魔法を消した。


 「とりあえず戻ろうぜ。王サマと会話の途中だろ?」


 

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