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第181話


 「おい、誰がチクった!」


 俺は辺りを見渡す。

 すると、奥にいた冒険者が挙動不審になっているのに気がついた。



 口止めが遅かったか——————!




 「ンの野郎………あいつが………ニールがいなかったら今頃のたれ死んでいたカスが、どう言うつもりだ! アァ!?」



 ズオォッ!!



 俺から放たれた圧は辺り一帯を支配した。

 真正面から当てられた冒険者は、今まで喰らったこともない圧を受け、思わず尻餅をついた。


 「ヒッ………」


 


 すると、隊長らしき男が俺の目の前に立ちふさがった。


 「………邪魔だ、失せろ。せめて殴らねぇと俺の気が収まらねぇ………!」


 「職務上、そう言うわけにもいかん。大人しく捕まれ。さもなくば、」


 男は俺に耳打ちをした。


 “勇者達の立場が危うくなるぞ”


 「——————!!」



 俺はグッと堪えて足を止めた。


 OKだ。

 ここまでは一切手出ししなかったが、もう許さん。

 ここで兵士を全員潰してやる。


 幸い、俺にとって重要である勇者達は、一人を除いて全員この街にいる。

 他の連中とこいつらを秤にかけるなら、圧倒的に蓮達の方へ傾く。


 他の連中には悪いが、もう知った事ではない。

 暴れてやる。

 


 「そうだ、それでいい。おい、錠をつけろ」


 俺は手錠をつけられた。

 魔力を抑制する効果のある手錠だ。


 これは問題ない。

 俺は、()()()()に力を使う術がまだある。


 それを使ってこの場を乗り切れば、後は全力で王都に向かって可能であれば勇者を移動させ、全員でこの国を出る。


 よし、取り敢えずはこの路線だ。



 「貴様らもだ」


 「っ………」



 リンフィアとニールも手錠をつけられそうになった。

 動くなら、今だ…………………と、思っていたのだが。

 



 「隊長、よろしいですか?」



 途中で、錠をかけるのを止めた。



 「何だ?」


 「捕縛するのは、ヒジリ・ケンだけで、魔族はギルドに委託しろとの命令が………」


 妙な命令に隊長は訝しんだ。

 一瞬思案すると、誰からの命令なのか尋ねた。


 「命令は、国王直々のものです」


 「何!?」



 国王だァ?

 今更連れ戻そうとしたわけか?

 呆れたやつだ。



 国王があの時俺を追い出したり徹底的に殺そうとしたりしなかったのは面白いからだろう。

 それが今更連れ戻そうとするとは、一体どういう風の吹き回しだ?


 「意図はわからんが、王命なら従う他あるまい。さァ、来い!」


 兵士が俺を引っ張って行こうとした次の瞬間、後方から抗議の声が聞こえてきた。



 「待ちなさい!」


 

 俺たちは一斉にその方角を向く。


 「王女………」


 「殿下………何を仰って………」


 「この方達は我々の命の恩人ですのよ? 少し強引すぎますわ。そこの貴方」


 フィリアは、さっき王からの伝令を伝えに来た兵士を指差した。


 「はっ、如何されましたか?」


 「通信魔法具、あるのでしょう? お父様からの伝令を今伝えられると言うことは持っているはず。ここに持ってきなさい」


 「はっ!」


 フィリアは通信魔法具を兵士から受け取ると、起動させた。


 「第四王女フィリアですわ。至急、国王に繋ぎなさい」


 そしてしばらく待っていると、


 『フィリアか………何用だ』


 「お父様、今回の捕縛命令、撤回なさってくださいまし。ヒジリ様達は我々の命を救って下さいましたわ! 何も捕縛せずとも良いでしょう!?」


 『それとこれとは話は別だ。これは、我が国の秩序の問題だ。余がここで妥協すれば国民に示しがつくまいよ。ヒジリ・ケンは元々は勇者。余の部下だ。奴も仲間と行動出来て嬉しいだろう。それに勇者が魔の者と繋がりがあるなど』


 国王はため息をついてこう言った。


 『穢らわしい』


 「ッッッ——————!」


 俺は手錠を粉々に破壊した。

 俺のステータスならこの程度造作もない。


 「貴ッさ——————」


 「さっき失せろと言った筈だッ!!」


 俺は斬りかかって来た兵士3人の剣を避け、全員顔面から地面に埋め込んだ。


 「疾い………!」


 他の兵士は圧倒的な力の差を前にして立ち尽くしていた。


 「寄越せ」


 「あ、ちょっ!」


 俺はフィリアから通信魔法具を奪い取った。


 「よう」


 『おや、聞き覚えのある声だな。久しいぞ、ヒジリ・ケン』


 白々しい事言いやがって………


 「何のつもりだ? アンタ、遊び半分で俺を追い出したろ」


 『ああ。その方が面白いと思ったからな。だが、気が変わった。それ程までの戦力。ぜひ欲しい所だ。どうだ? 再び余の臣下とならぬか?』


 しゃあしゃあと鬱陶しい奴だ。


 「なる訳ねぇだろ。頭沸いてんのかボケが」


 全員がギョッとした。

 国王にここまで不遜な態度をとる者を見たことがないのだろう。


 『はははは、言うではないか。平民の分際で。だが、許そう。しかし良いのか? 主が逃げれば………なぁ?』


 意地の悪い笑みが見えてくるようだった。


 「くっ、はっはっは………アンタやっぱりちゃんとした王様だわ………」


 『ほぅ?』



 「ああ、ちゃんとキタねぇ国のトップだ」



 言いやがった、みたいな顔をみんなにされた。

 蓮達やリンフィア達はやれやれと頭を抱えている。


 『ちゃんと汚い、か。フフフ、如何にも若者が言いそうな不満に満ちた言葉だ。主は王というものの在り方を何一つ理解していない』


 「若者だし、キタねぇのは事実だろうが。王の在り方だ? 知るかンなモン。こちとらそんなもんとは縁も所縁もねーとこから来てんだよ。捕まえたかったらド正面から面と向かって捕まえに来やがれ」


 『今からでも、か?』



 「ああ、今からでもくるんだったら、俺はアンタをぶっ潰す。殺してぇなら国でも神でも引っ張って来やがれ。捕まえるつもりなら尚更だ。俺はその上でド正面からアンタらを潰してやるよ」


 俺はそう言って声の主に中指を立ててやった。

 

 『フフフ、フハハハ! なるほど、不遜極まりないな。余が王と知ってのその態度。芯がはっきりしておる。おそらくそのような力がなくとも主は余に逆らったのだろうな。ますます気に入った。欲しいぞ。どんな手を使ってもな!』


 「ケッ!」


 と、啖呵を切ったのは、流石に俺にもここを切り抜けるカードを持っているからだ。

 俺も考えなしではない。

 こう言った方が王が喜ぶと思って敢えて挑発したのだ。

 そうした方が内側に潜り込みやすい。

 しかし、案があるにはあるが、結構難しい………というより面倒になりそうなものばかりだ。


 


 『では、余、ガガッ——————ジーッッ——————ザーッッッッ』


 「え、故障!?」


 フィリアが俺から通信魔法具をぶんどって叩き始めた。

 昭和の機械じゃねーんだからそんな事しても治らねーよ。


 俺は通信魔法具をじっと見た。

 作動はしている。

 しかし、妙な魔力に侵入されているな。

 弾くこともできるがここはあえて………


 「アンタ誰だ?」


 俺は、会話に侵入して来たであろう者にそう尋ねた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 脅されて大人しくするならハナからしなきゃいいし人質取られるのは間抜けなんだよな。
2021/10/10 13:26 退会済み
管理
[一言] 脅しかけてイキるなら人質とられてもイキってろよ雑魚
[一言] 脅しに屈してる以上弱者だし、自由気ままに我儘にが不良なら最早不良ですらねぇよ。
2020/01/16 23:06 退会済み
管理
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