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第180話


 「やっと終わったか………ふーっ、これでこの件もとりあえずは一件落着か」


 本体が回復したので、こっちに移動してゴーレムをしまった。

 今俺は本体で話している。


 「お前ほどの人間が負傷するなどおかしいと思っていたが、まさか神が相手とはな。本物か?」


 「ああ、精神の神………お前らんとこの言い方だと“魔神”だったか?」


 「魔神様にあったのか!?」


 「そういう事になるな」


 俄かには信じられないといった顔だ。


 「まぁ、今はいい。 とりあえず怪我人の手当てをしたり、冒険者達を街に帰したり事後処理をしないとな」


 「えー、メンドい」


 「おいおい坊主、そんな事言うなよ」


 「そうですわ。そんな力があるなら少しくらい手伝われてもいいじゃないですか」


 めんどくさそうに俺がいうと、ダグラスとフィリアがそんな事を言った。


 「じゃあ、俺の用事が済んでからだ。リフィ、ニール、ラビ。ちょっとついてこい」


 俺はみんなを連れて岩場へ向かった。











———————————————————————————













 「どうしたんですか? こんな所に何かあるんですか?」


 「こいつを大っぴらに晒すわけにもいかねーだろ」


 俺はポケットに入れておいたセレスを放ると、人型に変身した。


 「お、お前、セレスか?」


 真っ先に反応したのはニールだった。


 「………久しいわね、ニール。貴方が逃げてからは一度も顔を合わせて無いから確かに久しぶりね。ま、部下から貴方がフェルナンキアにいることは聞いていたけれど」


 「お前ら知り合いだったのか」


 「と言っても特別仲がいいわけでは無い。私の同期だ。年齢は向こうが上だが」


 「相変わらず一言多いわね………それで、そちらは魔王様、かしら?」


 セレスはリンフィアを見てそう言った。


 「元、魔王です」


 「低ステータスの無能で有名だった貴方がよく冒険者になれまし——————」


 セレスの喉元にニールが剣を当てる。


 「これ以上侮辱すれば、殺す」


 「っ………わかったわよ」


 ニールは剣を引いた。


 「セレスさん。エヴィリアルは今どうなってるんですか?」


 すると、セレスはポツリポツリと語り始めた。


 「………あの事件後、貴方が消えて、途方に暮れていた魔族は新たな王を探し求めた。王と言う存在自体が心の支えだから誰でも良かったのよ。でも、混乱の最中にあるエヴィリアルあるで魔王になろうとする者は誰もいなかった。決定的なものが無かったからね」


 「………王家の血、ですか?」


 「そう。魔族は血筋を重んじる種族。貴方は消え、貴方の弟も消えたから、正統な王の血は途絶えたとされていた。でも、違った」


 「!?」


 リンフィアとニールはその言葉に強く反応した。

 そして、俺もその言葉の意味がわかった。



 エビルモナークはあの時俺にこう耳打ちした。



 “ほんじゃとっておきの情報だ。俺らはァ”



 「まさか………」




 「王子は………ランフィール様は今、エヴィリアルの王になっている」



 “王子の身柄を預かっている”





 「!!!!」


 リンフィアはその場にへたり込んだ。


 「生き、てる?」


 「ええ。でも、普段は顔を見せないから、何処にいるのか皆目見当もつかないから、会いに行っても会えないと思うわよ」


 それに、人質を取られているようなものだ。

 下手に動くことは出来ない。


 「でも、でも! 生きてる、んですよね!?」


 「ええ、それだけは確かよ」


 リンフィアは泣いて喜んだ。


 「生きてる………ランフィールが生きてる!」


 「リンフィア様………」


 ニールはリンフィアをぎゅっと抱きしめた。


 「………で、蛇女。お前はどうするつもりだ? このまま帰っても死ぬだけだぞ」


 「でしょうね。かと言って貴方達につく気はない。私は主人を裏切りたくないの」


 「そうか………じゃあ、大した情報も得られそうもないな。リフィ、こいつどうする?」


 俺は木刀に手を添えた。


 「………逃してあげてください。弟のことを教えてくれた人に酷いことは出来ません」


 「言うと思ったぜ。オラ、とっとと失せろ。次くだらねーことしてたら今度はマジで殺すからな」


 「………わかったわ」


 セレスは人間体になりそのまま去ろうとした。

 すると、


 「あっ、 ちょっと待って下さい」

 

 「何?」


 リンフィアは深く頭を下げた。


 「ありがとうございました。弟の………ランフィールのことを教えてくれて」


 「………ただの気まぐれよ」


 そしてセレスは、去っていった。

 たった一言、こう残して。



 “気をつけなさい”










———————————————————————————











 「終わったぞー。待たせちまったな………何だ?」


 仰々しい兵隊がこちらへ向かってくる。

 おそらく騎士団の兵だろう。

 それに、あまり友好的な雰囲気ではない。


 「ヒジリ・ケンだな」


 何となくわかる。

 こいつはかなりトップの騎士だ。

 装備が全て豪華だし、何より隙が少ない。


 「そうだが、何の用………!」


 思い当たる節が、ある。

 俺のすぐ後ろだ。


 ………まさか!


 「貴様を魔族隠匿の罪で捕縛する。尚、そこの魔族は連行の後、処刑する」


 

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