第163話
「あれ? ダグラスさん?」
リンフィア達は俺が指定したモンスターの出現予定地へ向かった。
そこにいたのは、俺と閉じ込められていたSランク以上の冒険者の半分ほどだった。
こいつらは、脱出後にセレスから情報を引き出してたまたままだ近くにいたので頼んでおいたのだ。
「お、嬢ちゃん達も来てたのか。さては坊主の仕業だな? ん? 勇者の坊主達もじゃねぇか。こっちもひょっとして?」
「はい、ケンに言われました。それにしてもあいつギルドマスターと知り合いだったんですね」
「ガッハッハ! まぁな!」
タイマンはって負けたことは言わないダグラス。
「後数分で巨大モンスターが出現する。この魔力の感じだとさっき見たドラゴンよりとんでもなさそうだ。お前さん達大丈夫か?」
「何がですか?」
ダグラスは、あー、と頭を書きながら言いにくそうに思っていることを言った。
「正直、ニールの嬢ちゃん以外のお前さんらの実力じゃあ、太刀打ちできねぇと思うぞ。坊主が俺たちをサポートさせるために連れてきたならまだしも、前線で戦うことは勧めれねぇな」
当然の心配だ。
だが、それには及ばない。
「それなら大丈夫です」
「ほう? そりゃまた何で」
「ケンくんにクインテットブーストを掛けてもらったからです」
「クインテットブーストを全員にか!? 相変わらずとんでもねぇガキだぜまったく………」
半分呆れた様にそう言った。
「って! いくらなんでも王女様が戦うのはマズイだろ!」
「魔法のみですから、 接近しませんから大丈夫ですわ。攻撃はしますけど」
「殿下、攻撃するのはギリギリ許容致しますが、無茶だけは見逃せませんからね。俺が駄目だと思ったら教官と逃げること。宜しいですね。教官、万が一の時はよろしくお願いします」
「ああ、承った」
リンフィアは弾の装填をし始めた。
すると、興味を持った勇者達に声をかけられる。
「それ銃だよな」
「え!? あっ、はい!」
「そう硬くならなくてもいいから。俺たちは異世界人だし、魔族や亜人に忌避感はないよ」
「そうですか………」
ホッとするリンフィア。
「リンフィア、さん。さっきはごめんなさい」
綾瀬が唐突に謝った。
「わわ! 頭あげてください! 私は気にしてないので大丈夫ですよ! 立場上仕方ないと理解しています」
「それでも、非礼は謝るべきだわ。今から一緒に戦うのだし」
「うぅ………あっ! じゃあ、握手しましょう。ケンくんがケンカしたらとりあえず握手しとけって言ってるのを見たことがあります!」
ケンカではないので使い方はあってないのだが、まあ、これもいいだろう。
「あいつ何を吹き込んでるのかしら………まあいいわ。はい」
綾瀬とリンフィアは握手を交わした。
「これで仲直り完了です」
「ケンカと言うよりは私が悪いんだけどね」
「なぁその銃………」
「アンタうるさいわよ」
「サーセン………」
綾瀬に一喝されしょんぼりする高橋。
この後リンフィアが慌てて銃を見せ始めた。
「かわいいなぁ………」
「む、なんだ? なんかようか?」
「憎たらしい感じがかわいいな! ケンケンうらやまだわー。ウチも欲しい」
「ん」
美咲と七海と涼子はラビと一緒にいた。
「おまえらししょうのともだちか?」
「師匠!? いいなぁー! ウチも呼ばれたい!」
「や! ししょうはししょうだけ!」
「はぁわわわわわ………可愛い!」
「わっ!」
美咲はラビに思いっきりハグした。
ジタバタと動き回るラビ。
微笑ましいが、慣れてないラビは恥ずかしそうだった。
みんな徐々に打ち解けた。
ケンはこれを望んでいたのだ。
いよいよモンスターの発生が近づき出した。
全員持ち場に移動してモンスター出現を待つ。
指揮をとるのはダグラスだ。
「お前ら! 今からくる敵は見たこともない様な危険なモンスターだ。だが、俺たちが戦わねぇと街の連中が危険にさらされる。いいか! 死ぬ気で戦え! だが死ぬな! 死んだら俺が、ぶっ殺す! 絶対に生き残るぞッ!!!」
「おおおおおおおおお!!!!」
冒険者達は歓声を上げた。
士気は十分に高まっている。
すると、突然地鳴りが起きた。
「………! 強化魔法を掛けておけ!!」
冒険者達は各々の強化魔法の詠唱を開始した。
「ふぅー………力を借りるぞ、ケン」
「魔法、使いますね。ケンくん」
2人がそう言うと同時に、勇者達とリンフィア達は俺の掛けた強化魔法を解放した。
レイドパーティの一画が白く輝く。
「これは………!」
「【クインテットブースト】!?」
「スッゲェ!」
これにはSランクの冒険者達も驚いていた。
そして、それに惹きつけられるかの様に地鳴りは大きくなり、モンスターが現れようとした。
「来るッ………!」
巨大な空間の歪みが出現。
そこから何か黒い塊が現れた。
塊は徐々にこちらへ動いている。
あれは脚だ。
そしてついに頭を出した。
「………これが、巨大モンスター………!」
「なんてデカさだ」
「………勝てるのか?」
もう何本かの脚が現れる。
これだけでも相当の大きさだ。
そしてそれが8本。
「あわわわ………」
「う、わ………」
「今から、これと戦うんですか………」
巨大モンスター、それは鋼鉄の蜘蛛だった。




