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第154話


 「ハァ、ハァ、ハァ………………」


 ニールのHPが3分の1を切った。

 しかし状況は一切変わらない。

 以前1対5のままだ。


 「俺ガ、俺ガガガ………」


 もう完全に自我は失っている。

 それでもなお動きが衰えることはない。

 ニールはまだ迷っていた。


 殺した方が楽になるんじゃないのか?

 もしかしたら助けられるんじゃないのか?

 あいつなら——————


 「!」

 

 何を考えてるんだ私は。

 これは私だけで解決すべき問題だろう?

 頼ってはいけない。

 そんなことではリンフィア様を護れない。


 「私は………私の力で戦うんだ!」


 ニールは回復一級魔法【ヒールオール】を掛けた。

 パームカフのもう一つの効果である。

 回復が終わると、大剣に手を伸ばし、引き抜いた。


 「行くぞ………『覚醒半魔・ステージクオータ』!」


 黒い模様が浮かぶ。

 牙が少し尖り、小さい角が生える。

 肌の一部が鱗のように変化した。


 「ぐ、ウウウ………ッ!」


 これは、覚醒半魔の能力を4分の1だけ引き出した状態だ。

 段階は4分の1、2分の1、完全体の3つだ。

 2分の1まではギリギリ意識を保っていられるが、完全体は1秒しか保てない。

 2分の1状態も破壊衝動やが膨れ上がりコントロールできなくなる場合がある。


 「あまり長引かせられない………だから、勝負を一気につけるぞッ!」


 剣に黒い炎が纏う。

 ニールは一瞬のうちに魔族達の中心に移動した。


 「!!」


 ニールはまずリューラ、ホルクス以外の足の神経を焼き切った。

 崩れ落ちる魔族達を刀身で殴って弾き飛ばした。


 「悪いが二度と歩けはしない。諦め——————!?」


 魔族達は立っていた。

 それどころか向かってきている。

 ニールの中で操られているという予測は確信へと変わった。


 「そこまでするか………!!」

 

 こうなれば足をごと切るしかない。

 おそらく大元がなくなれば動かなくなるとニールは予想した。

 それは当たりだ。

 足さえ無くなれば足は操作できなくなる。

 切れた部分は操作対象外だ。

 しかし、そうすれば切れた部分から上で歩かせてくる。

 本人達の痛みは計り知れない。


 「イ、ァアア………! ア、ルジ………」


 「っ………!!」


 既に意識はない。

 しかし、魔族達は涙を流していた。

 それは痛みからか。

 おもちゃのように使われ続ける屈辱からか。


 「一体………一体どこまで仲間を愚弄すれば気が済むんだ!」


 その悲痛な叫びは届きことなく魔族達は動き続ける。

 いや、動かされ続ける。


 「クソオオオオオオ!!!」


 今度はホルクスとリューラの指の腱を斬った。

 だが動く。

 それどころか徐々に動きが鋭く速くなっていく。

 そろそろ器の方は限界に近いと言うのに、操ることを止める気配が一切ない。


 そして、


 「っ………しまっ——————!」


 剣が弾かれ、そこを5人が一気に攻撃してきた。

 致命傷は避けられまい。


 そう思った時、



 


 パァン! パァン!





 銃声が鳴り響き、魔族の武器が弾かれた。

 ニールはその隙に脱出する。

 振り返るとそこには、


 「ニール!」


 リンフィア達がいた。

 横に見知らぬ人間がいる。

 味方を見つけたのだろうと予測すると同時に慌てて元の状態に戻った。


 「リ、リンフィア様! ラビ!」


 リンフィア達はニールの元に急いで駆け寄った。

 MPが残り少ないので、消費が激しいヒールオールはもう使えなかった。

 代わりにリンフィアが回復をする。


 「だいじょうぶか? ニールねえ」


 ラビが心配そうにニールを見た。

 ニールは頭に手を置いて大丈夫と言うが、正直体力は限界だった。


 「そんなこと言って………ボロボロじゃないですか! 相手は………魔族!?」


 「はい。ですが何か様子がおかしいです。おそらく操られています………それとその、彼は?」


 ニールはリンフィアといた人間が気になっていた。

 

 「この人はルドルフさんです。仲間が見つかるまで一緒に行動しようと思って」


 ニールはルドルフをじっと見た。

 そして、ここまで主君を連れてきてくれたことへの感謝を述べた。


 「一緒に戦ってくれたのか………礼を言う。我が主人をここまで無事に連れてきていただき感謝する」


 「いや、私も彼女達のお陰でここまで生き延びることが叶った。ここからは私も手を貸そう」


 これで状況は4対5。

 だが、リンフィア達のレベルではおそらくあまり戦力にならない。


 「いや、ありがたいがここは私一人で戦う。正直貴方もついては来れないだろう」


 ニールはそう言って立ち上がった。

 HPは戻ったが、クインテットブーストはもう使えない。

 この戦いは恐らく負ける。

 だからどうにかリンフィア達だけでも逃がそうと考えた。

 するとリンフィアが、


 「………皆さん、1分間時間を稼いでください」


 そう言って銃を構えた。


 「リンフィア様、一体何を………まさか!」


 「はい、とっておきを使います」

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