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第152話


 「まずは様子見だ………『我が肉体は限界を超え、鋼となる【デュオブースト】』」


 ニールはとりあえず現在の敵の実力を図ることにした。


 「『闇よ、光を打ち消し、目を覆う影となりて敵を翻弄せよ【ブリンカー】』」


 闇三級魔法【ブリンカー】


 目眩しの魔法だ。

 同様の効果の魔法で闇五級魔法のブラインドがある、それと違う点は対象を絞れるところだ。

 ブラインドは無差別に目眩し行うが、ブリンカーは相手を選べるので味方に悪影響が出ない。


 「目眩しか………」


 その間にリューラが静かにニールの背後に回り込む。


 「セァッ!!」


 リューラは上からニールの頭を狙ったが、半身になって躱し、その後の切り上げも飛んで躱された。


 「相変わらずの太刀筋だ」


 「ぬぅ………」


 正面の魔族は爪をまっすぐニールに向かって突き刺そうとした。

 すると、



 「フッッ………!」



 魔力を弾き、周辺の靄を一気に晴らした。

 背後の気配は感知していたので、大剣を横にずらして剣を防ぐ。


 「新人か? “ブリンカー”は高位の戦士には通用しない。覚えておくんだな」

 

 「隙ありッ!!」


 ニールは横から来ていた攻撃を腰の双剣で防ぎ、そのまま背後に退がった。


 「ニール………貴様ァ!」


 「リューラ、お前が私に勝とうなどと考えるのは100年早い」


 「っ………!」


 キレたリューラは怒りに任せてニールに向かって飛び出した。

 暴走するリューラをホルスクが止めようとしたが、


 「止せ! 指示を無視するな!」


 「くたばれええええええ!!!!」


 止まることなくニールに向かっていく。

 完全に暴走状態だ。

 しかし、ニールは油断することなく剣を構えた。

 一見頭に血が上っているように見えるが、今までで1番鋭い攻撃だ。

 だが、


 「ほう? なかなかいい太刀筋だ」


 「………!」


 リューラは体の芯から凍りつくような気がした。

 当てられた殺気はリューラを完全に支配してしまったようだ。

 ニールはリューラの剣を躱すと、そのまま致命傷ギリギリの攻撃をリューラに当てた。


 「が、っ………ア」


 「それでもまだ、届かんよ」


 リューラはそのまま倒れ込んだ。

 顔を見上げてニールを見るが、闘争心は殆ど消えかかっている。


 「………」


 「役立たずが………だがこれで」


 「!」


 いつの間にか退路が断たれていた。


 「これは………」


 ニールは一瞬で全員から囲まれた。


 「はっ、鬱陶しい連中だ」


 そう吐き捨てると、敵に向かって手招きをした。

 その瞬間、


 「ヒュオッ!」


 「シャアッ!」


 「ドルァァァ!!」


 前方、左右斜め後方から同時攻撃。

 鞭、剣、爪での攻撃だ。

 そして、上空からは、


 「ハァッ!!」


 ホルスクの槍が降ってくる。


 ニールは腰の双剣を抜き、剣を往なしてそれをぶつけ、爪の攻撃を防ぐ。

 もう片方の剣で鞭に絡みつかせ、それを上に上げて槍を回避した。


 「流石に一度の攻撃では躱せないか。だが、」


 「!」


 ガラ空きの背後から敵が迫る気配を感じた。

 リューラがチャクラムを投げようとしていた。


 「セイッッ!!」


 2枚のチャクラムがニールを挟むように飛んでくる。

 すると、


 「っだッ!」


 鞭を持っている魔族をそのまま背後に投げ飛ばし、チャクラムを防いだ。


 「チィッ!」


 ニールはそのまま正面の剣の魔族に攻撃を仕掛けた。

 そこにホルスクが加わり、攻撃の手が増えた。

 だがニールは巧みにそれを避ける。

 そして攻撃が尽きた瞬間を狙い、槍を上空に弾き飛ばすと、もう片方の魔族を蹴り飛ばし、ホルスクを転かした。

 尻をもちをついたホルスクの首元に剣を当てる。


 「うっ………!」


 これがニールの実力だ。

 相手がSランク冒険者クラスの魔族であれば、ステータスが低下していても圧倒できる。

 

 「この程度で私を倒せると思ったのか? 自惚れるのも大概にしろ。だからお前はいまいち出世出来なかったんだよ」


 ホルスクはギリっと奥歯を噛み締めた。


 「リューラ」


 名前を呼ばれたリューラはビクッと体を揺らした。


 「かつて同じ隊にいたよしみだ。殺さないでやる。さっさと国へ帰れ。ホルスク、貴様もだ」


 ニールは飛ばされた槍の元に行くと、それを破壊した。

 そして、そのまま帰ろうとした瞬間だった。



 「甘い………甘い甘い甘い甘い!」


 ホルスクは敵意を剥き出しにした目でニールを睨みつけた。


 「どうやら勝ったつもりらしいが、こちらもまだ手は残っている。よもやこれを使わされるとは思いもしなかったがな………!」


 「その口ぶりだとまだ何か隠しているようだな。私を相手にして手加減とは舐められたものだ」


 「その減らず口が消えるのが楽しみだ………!」


 ホルスクは何やら魔法具を取り出し、ボタンを押した。

 何かされるかと思ったが、どうやらただの発信機らしい。

 だが、わざわざこの局面で使うということは何かしてくるというのは間違いない。


 「我らが主人の素晴らしきお力を見るがいい!」


 「主人?」

 



 フッ………ヒュオッ!




 「!」


 得体の知れない何かがホルクスを包んだ。


 これは一体なんだ?

 魔力では無いな。

 それに発生源はこいつでは無い。

 主人とやらの能力か。


 「何をする気だ………っ!」


 ホルクスだけではない。

 他の魔族、転がっているリューラをも、その“何か”が覆った。



 「ははははははははははははははハハハハハハハhahahahahahaaaaaaaaaaaaa!!!!」


 眼球が忙しなく動き、全身をガタガタと震わせながら、狂ったように叫んでいた。


 「おい! どうした!?」


 明らかに正気を失っている。

 それと同時に魔力も膨れ上がっている。

 そして、



 「aaaaaaaa————————————      」



 糸の切れた人間のようにブツリと動かなくなった。

 全員同時にだ。

 途端に嫌な予感がした。

 ニールは咄嗟に剣を構えた。

 額には小さく汗をかいている。


 「………」


 数秒後、ゆっくりとホルクスが顔を上げた。

 先程までとは決定的に何かが違った。

 目の色が真っ黒に変色している。

 肌の色もおかしい。


 「………あはぁ」


 「!!!」


 ホルクスが一気に間合いを詰め、拳を振った。

 スピードが段違いだ。


 「これは………マズイな」

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